中国企業の世界進出加速の武器は「イノベーション」か

吉田陽介    2022年12月21日(水) 8時0分

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中国はカタールW杯の舞台で活躍できなかったが、企業は米国の11億ドルを上回る13億9500万ドルを投資して、世界最大のスポンサーとなった。

サッカーではなく経済面で活躍する中国勢

2022年のカタールW杯では、日本代表チームがベスト16入りし、日本中が沸いた。アジア勢で、中国チームはW杯の舞台で活躍できなかったが、企業は米国の11億ドルを上回る13億9500万ドルを投資して、世界最大のスポンサーとなった。

スポンサーとなった企業の大半はすでに海外進出を果たしている。ハイセンス(Hisense)やVivoなどの企業は国際市場で多くのシェアを獲得している。これらの企業は国際的なブランドイメージのいっそうの強化を狙っており、W杯は格好の「宣伝の場」となった。

新華社の17日の報道は、インフラ面では、ドーハ新港、ハマド国際空港、ドーハの水道施設、太陽光発電所などの重要インフラ工事プロジェクトに中国企業が参加し、カタールW杯のメインスタジアムであるルサイルスタジアムの建設を中国企業が請け負ったことを伝えた。

中国企業が世界のビッグイベントで存在感を示すことができたのは、同国企業の力が大きく向上したことにほかならない。もちろん、中国政府の対外開放の堅持というソフト面の環境が整っていることも大きい。

12月に入り、中国は「動的ゼロコロナ」政策を最適化して、経済活性化を図ろうとしている。政策調整で国内の感染拡大が続いているが、経済の面からいうと、必ずしも悪いものではない。外国に出ていく中国企業にとっては、ビジネスチャンス獲得の機会となることは間違いない。

■「安い労働力」は昔の話、中国企業の力が大幅強化

中国ブランドが世界に羽ばたくことができた要因は何か。2日付の21世紀経済報道の社説は次の2つの要因を指摘する。

一つに、中国製造業のモデルチェンジと高度化が挙げられる。改革開放前の中国は国の生産力が低かったため、中国製品は国際競争力がなかった。そのため、長期にわたって加工貿易を行っており、海外ブランドの製品を製造していた。

だが、中国の経済力の発展にともない、状況は一変する。「中国製品の性能、品質、科学技術のレベルは日韓などに追いつきつつあり、いくつかの分野は追い越すようになり、現在『メード・イン・チャイナ』は『中国ブランド』として世界に進出している」と社説は指摘する。例えば、携帯電話、パソコン、家電などの消費財はまずASEAN、中南米、中東、ロシア、アフリカ、インドなどの地域で足場を固め、欧米先進国市場にも進出しつつある。これは「メード・イン・チャイナ」の信頼できる品質と良好なコストパフォーマンスによるものだ。

二つに、中国企業の科学技術イノベーションが先進的レベルにあるという点だ。これが中国ブランドの国際的な影響力を大きく高めている。通信分野ではファーウェイ(華為)などの中国企業が好調で、商業用ドローンの分野ではDJI(大疆創新科技)など中国のドローンブランドが科学技術面の優位性で世界市場でシェアを徐々に拡大している。

インターネット分野でも、中国は飛躍的成長を遂げた。TikTokの短編動画アプリは世界の人々の支持を集め、日本でも試聴されている。Eコマースが発達している中国の決済アプリは世界の先を行っている。また、中国版ツイッター「微信」は中国関係の仕事をしている人、中国と関わりのある人にとっては必要な連絡ツールだ。

ゲームも中国企業が力をつけている。網易が開発した「第五人格」や上海米哈游網絡科技(miHoYo)が開発した「原神」などのゲームは多くの国で人気を集めており、プレーしている日本人ユーザーも多い。

■政策にも乗った!?新エネ車で世界的影響力拡大の中国自動車

外国に進出する中国企業で、特に力をつけているのは自動車ブランドだ。2022年1~10月の中国の自動車輸出は前年同期比54.1%増の245万6000台となり、ドイツを抜いて世界第2位の自動車輸出国となった。

現在、中国の自動車は性能と品質が大きく向上し、かつての「メード・イン・チャイナ」のイメージを覆すものとなっている。新技術の応用により世界の同レベルの製品をはるかに上回っており、ハイエンド化の道を歩んでいる。

中国ブランドの自動車はASEAN、中東地域への輸出だけでなく、先進国市場にも進出している。

中国政府は「生態文明の建設」を大きな目標に掲げており、環境に配慮した社会づくり、製品の開発を重視している。新エネルギー車はその最たるものだ。同分野で、中国は世界でサプライチェーンを確立し、科学技術も先進的レベルにあるため、世界最大の電気自動車市場となっている。欧州市場に進出し、より高い品質とより手頃な価格で欧州の顧客に支持されている。

前述のように、現在、中国は「動的ゼロコロナ」政策を最適化し、中国内外の企業のビジネス活動にプラスとなる環境を整えている。その中で、中国企業の世界市場での事業展開がさらに加速するのではないかと考えられる。

■アフターコロナを見越して中国企業が注文獲得に躍起

9日付の環球時報によると、中国の一部地方政府が「チャーター機」を手配して、中国企業の海外での「注文獲得」を手助けしている。それは今後、中国企業の活動が活発化することを意味している。

同記事は、「チャーター機」による「注文獲得」の動きは3つのシグナルを発しているとする専門家のコメントを載せている。

1つ目のシグナルは、中国は常態化した感染予防・抑制を基礎に、すでに正常な国際経済交流を徐々に再開し始めていることだ。

2つ目のシグナルは、中国企業の国際協力を行いたいという強い意思と行動は、中国経済の大きな活力と強靭性を体現していることだ。

3つ目のシグナルは、国際的な経済往来が徐々に活発化するにつれ、中国経済は急速な回復を迎えることだ。

環球時報の記事が引用している専門家のコメントのように、中国は本格的な国際的な経済交流をスタートさせ、「中国経済は大丈夫」ということを世界に示したい中国の政府と企業の思惑があると筆者は考える。

だが、課題もある。

まず、国内の感染状況を見極める必要がある。コロナ対策の最適化により、感染者が一時的に増え、家庭や職場で感染が広がっている。ネット上では「うちの職場の職員はみんな陽性で、陰性の人はわずかだ」という声もあるが、筆者の住む北京ではかなりの人が感染しているようだ。感染拡大がこれ以上進むと、企業の経済活動にも影響が出てくる恐れがある。今後は状況を見極めながら、国内・海外での経済活動を行う必要があろう。

次に、世界的なエネルギー価格上昇への対応だ。ロシア・ウクライナ紛争の影響で、国際的なエネルギー価格が上昇し、日本を含む多くの国で「値上げラッシュ」になっている。中国の消費者物価指数は3%を超えていないが、食料品や日用品の価格は以前より上がっていると感じる。世界的な物価高の問題はいつ解決するか、現在のところ見通せないが、21世紀経済報道の社説は、「中国製品のコストパフォーマンスの優位性がより強まり、欧米の高級品市場が縮小する可能性がある」との見方を示している。中国企業はコスト面での優位性、その他の強みをどのくらい示せるかがカギとなる。

ただ、中国企業の強みはこれまでの「コスト面での優位性」から「科学技術面の優位性」に変わりつつある。自動車、家電、電子などのスマート化レベルがますます向上しており、中国の消費者のニーズのいっそうの高度化が企業のイノベーション力の向上を促している。「生産・生活のスマート化」は中国企業にとって、大きなチャンスとなっている。

今後、中国企業はどの方向へ向かうか。これまでの「外に出ていく」から「中に入っていく」戦略に転換するだろう。つまり、進出先で現地化戦略を実施して、製品を輸出するだけでなく、プロダクトマネジメントを行い、進出先の市場と消費者の好みに合わせた製品・サービスを生み出すだろう。

コロナや世界的な物価高もあり、中国経済は減速気味だが、回復の環境は徐々に整いつつあるといえる。

■筆者プロフィール:吉田陽介

1976年7月1日生まれ。福井県出身。2001年に福井県立大学大学院卒業後、北京に渡り、中国人民大学で中国語を一年学習。2002年から2006年まで同学国際関係学院博士課程で学ぶ。卒業後、日本語教師として北京の大学や語学学校で教鞭をとり、2012年から2019年まで中国共産党の翻訳機関である中央編訳局で党の指導者の著作などの翻訳に従事する。2019年9月より、フリーライターとして活動。主に中国の政治や社会、中国人の習慣などについての評論を発表。代表作に「中国の『代行サービス』仰天事情、ゴミ分別・肥満・彼女追っかけまで代行?」、「中国でも『おひとりさま消費』が過熱、若者が“愛”を信じなくなった理由」などがある。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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