八牧浩行 2015年2月4日(水) 6時4分
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3日、明石康・元国連事務次長(写真左)は記者会見し、安倍政権が出す予定の「安倍談話」について、「村山談話」や「河野談話」を基盤とすべきだと強調。「米国なども注視しているので、これらの国々を納得させられるような文言を慎重に選ぶべきだ」と言明した。
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2015年2月3日、明石康・元国連事務次長(国際文化会館理事長)は日本記者クラブで「戦後70年」と題して記者会見し、「“祈るだけの平和”から“創る平和”に移行しつつあるが、経済や技術・人道協力によるODA(政府開発援助)中心の平和構築が重要だ」と指摘した。また、安倍政権が戦後70年を機に「安倍談話」を出すことを志向していることについて、あくまでも「村山談話」や「河野談話」を基盤とすべきであると強調。その上で、「中国、韓国だけでなく米国なども注視しているので、これらの国々を納得させられるような文言を慎重に選ぶべきで、旧連合国すべてを敵に回す愚を犯さないようにすべきだ」と言明した。発言要旨は次の通り。
【その他の写真】
戦後70年、それは悲惨極まる第二次大戦に敗北して70年になるということであり、肝に銘じたい。戦後、破壊と灰の中から、新しい復興日本を築いた。1950年代の朝鮮戦争と60年代から70年代前半のベトナム戦争特需で日本は豊かになった。1964年の東京五輪は新興国にとっての成人式であり、世銀融資による東海道新幹線とともに日本は経済成長した。ダレス国務長官の再軍備要求に抵抗した吉田茂首相や、高度成長路線を推進した池田勇人首相らによる軽武装通商国家づくりに成功した。
今年は国連創設70周年。加盟国は51カ国から193カ国へと約4倍に拡大した。日本は56年12月に加盟、平和国家として歩み出した。来年加盟60周年になるが、安保理常任理事国への道は厳しい。日本は小泉首相時代の2005年にインド、ドイツ、ブラジルとともに同理事国入りを目指したが、挫折した。中国の反対が背景とされるが、米国も実際は消極的だった。
中東やアフリカで国家の崩壊や弱体化が顕著になっている。イラク、シリア、ガザ地区、ソマリア、マリ、シェラレオネ、リベリア、リベリア、コンゴ、リビアなどである。90年代以降、世界では激しい民族紛争と宗教対立が続発。日本では国際平和協力法が採択され、1992年にカンボジアPKO(国連平和維持活動)に参加した。
平和のないところで平和維持を求められ国連PKOは苦悩している。日本は南スーダンに自衛隊を派遣。医療、通信、運輸など後方支援を期待されており、あくまでもこの分野に限定した貢献をすべきだ。日本はこれまで憲法9条に基づく内向き平和主義だったが、ここからいかに脱却するかが問われている。いわゆる積極的平和主義を巡る論争だ。節度ある抑止力は当然だが、国が右寄りになる懸念もある。
◆ODA中心の平和構築が重要
“祈るだけの平和”から“創る平和”に移行しつつあるが、経済や技術・人道協力によるODA(政府開発援助)中心の平和構築が重要だ。憲法は柔軟解釈でやるのが世界の通例になっている。「集団的自衛権」はわかりにくい。自衛権の乱用は困るが、国連憲章51条の「自然権」でもある。ただあくまでも現地の判断を重視すべきである。
安倍政権は未来志向の「安倍談話」を出すことを予定しているが、あくまでも「村山談話」(1995年)や河野談話(1993年)を基盤とすべきである。中国、韓国だけでなく米国なども注視しているので、これらの国々を納得させられるような文言を慎重に選ぶべきだ。
日本が19世紀末から近隣アジア諸国への拡張政策を取ってきたのは事実である。他国に与えた辛苦は言語に絶する。靖国神社へのA級戦犯の合祀を変えられない限り、(参拝などを)抑制することが必要だ。(米英仏中など)旧連合国すべてを敵に回す愚を犯さないようにすべきだ。21世紀は共生と共栄、そして和解と相互信頼の世紀になるよう努力する必要がある。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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