中国次世代リーダー登用へ=国有企業の民間企業との合弁推進、環境エネルギー部門を抜本改革―3月初旬に全国人民代表大会開幕

八牧浩行    2015年2月18日(水) 5時59分

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中国情報筋によると、3月初旬に中国全国人民代表会議(全人代)が開かれ、一層の腐敗撲滅、国営企業改革、民間経済部門の自由化など5項目の重点施策が打ち出される。写真は2月15日夜、西安を訪問した習近平国家主席。

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中国情報筋によると、3月初旬に中国全国人民代表会議(全人代)が開かれ、一層の腐敗撲滅、国営企業改革、民間経済部門の自由化など5項目の重点施策が打ち出される。

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習近平国家主席は圧倒的な権力集中を背景に、2020年までに規制緩和、権限委譲、国有企業改革、経済改革、司法改革、戸籍改革、地方財政改革を断行する構え。習主席は「改革達成」へ背水の陣を敷いており、これらの大胆な改革が実現するかが中国の命運を握るカギとなる。3月の全人代で注目される重点施策5項目は以下の通り。

一、<経済政策の継続強化>

これまでの政策の成功を強調し、今後さらに強化することを狙って、(1)民間セクターの自由化、(2)就業者を年間1000万人増やすこと、(3)消費サービス、高付加価値型産業、エネルギー効率重視型工業への経済構造転換による高成長維持―などが採択文書に盛り込まれる見通しだ。2015年の経済見通し目標は「7%程度」に設定される。

二、<汚職撲滅への取り組み>

特に国有企業の監視を強化する。政府高官に対し、汚職をなくすための新たなルールの順守を求めるとともに、派閥の形成を禁じる。指導部の政策への反対の動きをけん制し、封じる狙いがあると見られる。引き続き軍部にメスが入れられる一方、銀行など金融部門に重点が置かれることになろう。

三、<環境、エネルギー問題で抜本改革方針>

中国の環境問題は深刻化している。11月の米中首脳会談で地球温暖化抑止へ排出炭酸ガスの大幅削減で合意したこともあり、エネルギー政策を絡めた含めた対応は喫緊の課題となっている。石炭火力発電所を廃止し天然ガス火力や原子力への積極的転換が図られることになろう。

四、<国有企業抜本改革の推進>

国有企業に市場原理を導入するための取り組みが推進される。国有企業を民間企業との合弁会社に移行させることや、経営陣への民間人積極的登用、納税強化―などが討議されよう。国有企業の従事者は全体の就労者の1割強にとどまっており、雇用を拡大するためにはサービス部門や民間企業を拡充せざるを得ない。

五、<次世代リーダーの登用>

17年の政治局常務委員改選では習主席と李克強首相以外は定年を迎えるために交代する。習氏が見据えるのは、党最高指導部の政治局常務委員7人のうち、習氏と李氏以外の5人が入れ替わる17年の次期党大会。22年から始まる「ポスト習」時代の最高指導部の陣容もこのとき見えてくる。今回の全人代では地方の人材の中央の要職への登用などを通じて、17年の常務委員人事への布石が打たれるものと見られる。習主席は自らの政策に忠実な次世代の人材を抜擢し、次の段階でさらに昇進させる意向ではないか。江沢民胡錦濤両氏は次期党総書記を選べなかった。習氏が自ら指名できれば、毛沢東トウ小平両氏以来となる。

習近平主席は、14年12月22日、「党内では絶対に封建時代の結託を再現してはならない。仲間を呼び寄せて徒党を組み、特定の仲間だけしか入れない入場券を出すような、あの封建時代を再現してはならない。全ての党員が平等に取り扱われ、平等に権利を持っていなければならない」と警告。派閥の解消と既得権益者=独占国有企業グループの腐敗にメスを入れることを宣言した。

習近平政権の特徴は(1)権力の集中と党内派閥(太子党、共産主義青年団)の解消(2)空前絶後の腐敗撲滅(3)大胆な改革(4)厳しい言論統制(5)改革派だけでなく保守派とも協調―など。人民解放軍は元来、江沢民氏の影響下にあったが、習主席は制服組トップだった徐才厚氏(江沢民派)を昨年、「反腐敗」の象徴として党籍はく奪処分にした。ところが江沢民の影響を受けた者すべての粛清は非現実的だと判断して、不問に付した。象徴的な人物を見せしめ的に叩くことによって他の者たちに忠誠を誓わせ、この結果、習主席は人民解放軍を掌握した。この点、江沢民の影響排除に失敗した胡錦濤前主席と異なる。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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