<中国は今!>習近平による反腐敗闘争、いよいよ江沢民の本丸中枢に迫る

Record China    2015年3月21日(土) 13時30分

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中国では「両会」が終われば、そろそろ春も間近で、人々は例年、華やいだ気分になるのだが、政治的に緊張しているようだ。写真は江沢民の揮毫がある上海博物館(筆者撮影)だが、いよいよ江沢民の牙城である上海にも腐敗追及の手が及んできた。

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中国では全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議(政協)という二つの会議である「両会」が終われば、そろそろ春も間近で、人々は例年、華やいだ気分になるのだが、北京の知人は電話で「今年はくつろいで、華やいだような気分にはなれない。むしろ、政治的に緊張しているくらいだ」と話していた。その最大の理由が「江沢民(ジアン・ザーミン)元主席の腹心中の腹心が捕まった」からだという。

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中国の最高人民検察院(最高検)が先の全人代で報告したところによると、昨年1年間に立件した横領や収賄など100万元(約1900万円)以上の汚職事案は前年比42%増の3664件と大幅に増加。汚職などで立件された公務員は前年比7.4%増の5万5101人。このうち元最高指導部メンバーの周永康(ジョウ・ヨンカン)や徐才厚(シュー・ツァイホウ)ら閣僚級以上の高官は28人で、前年の3倍超となっており、汚職構造の深刻さを示している。

習近平(シー・ジンピン)主席による反腐敗運動もいよいよ佳境を迎え、江沢民閥の本陣に迫っている」とこの知人は語る。

捕まったのは江氏の秘書を30年以上も務める賈廷安(グー・ティンアン)中国人民解放軍総政治部副主任。賈氏と言えば、「江沢民の分身」「江沢民の影」などと形容されるように、30年以上も江氏に寄り添ってきた腹心中の腹心。階級は上将で、軍トップ34人のなかに入る最高幹部の1人だ。

賈氏は1952年、河南省生まれの62歳。地元の高校を卒業後、当時の第四機械工業省傘下の工場に工員として入ったが、持ち前の勤勉さと文筆の才を認められ事務職に異動。文化大革命(66〜76年)の影響で閉鎖されていた大学が再開した際、「優秀な労働者」として職場推薦で成都電信工程学院(現在の電子科学技術大学)に入学。卒業後は同省秘書部に配属。同省はのちに電子工業省に改組されるが、82年に同省の筆頭次官として赴任してきた江氏との出会いがその後の人生を決めた。

江氏は賈氏の有能さを見込んで、自身の秘書に抜てき。85年に上海市長に転出した江氏は、賈氏を手放さず市長秘書に任命するほど高く評価した。89年6月の天安門事件で、江氏が党総書記に抜てきされると、賈氏も中央政界入りし、北京で党中央総書記弁公室主任(党総書記事務所長)に。江氏が中央軍事委主席に就任するや、賈氏は軍歴がないにもかかわらず中央軍事委弁公室主任や軍総政治部副主任を歴任し、2012年11月に習近平指導部が発足すると、党中央委員会入りするなど、江氏の威光を背景にトントン拍子に出世した。

まさに「江沢民の分身」と称されるほどの賈氏が、党員の不正を追及する党中央規律検査委に身柄を拘束されたのだから、北京・中南海には衝撃が走った。

逮捕の舞台装置が振るっている。2月23日、北京市内の八宝山革命公墓。張万年(ジャン・ワンニエン)元軍事委副主席の告別式を終えた賈氏が会場を後にしようとした際、出口で待ち構えていた規律検査委の係官数人が賈氏を取り囲むようにして近づき、「賈廷安同志。我々に同行していただきたい」と声をかけると、そのまま車に乗せて走り去ったという。この一瞬の逮捕劇は参列者の習氏や他の党政治局常務委員らが見守る中で実行された。

賈氏には以前から軍内の汚職に絡む黒いうわさが飛び交っていたが、その裏には江氏が関わっているとされ、「当局の狙いが江沢民ファミリーにあるのは間違いない」と知人は興奮気味に語る。

それにしても、「将を射んと欲すれば、まず馬を射よ」を地でいくような逮捕劇。この図式は日本でもおなじみだが、まさに「秘書は辛いよ」というところだろうか。

このような中、両会を終えた直後、「規律検査委の巡視隊が上海に入り関係各所の捜査を開始した」と中国メディアは伝えており、いよいよ腐敗追及の手が江沢民閥の本丸中枢に及んでいるようだ。

◆筆者プロフィール:相馬勝

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。

著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)など多数。

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