アベノミクス正念場、公的資金による株価つり上げは限界か=新年度入り、大荒れ必至の東京証券市場

八牧浩行    2015年4月1日(水) 7時45分

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14年度に東証株価が上昇したが “官制相場”の様相が濃かった。日銀の追加異次元緩和と上場投資信託(ETF)買い入れ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式購入比率拡大に伴う大量買い出動が相場上昇につながった。写真は東京証券取引所。

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2014年3月31日、14年度最終営業日の東京株式市場で、日経平均株価は1万9206円で大引けた。14年度中に株価は4379円16銭(29.5%)上昇、2009年度以来5年ぶりの高水準だった。

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14年度の東証株価の上昇は “官制相場”の様相が濃かったのが特徴。日銀の追加異次元緩和と上場投資信託(ETF)買い入れ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式購入比率拡大に伴う大量買い出動が相場上昇につながったためだ。市場関係者は「市場という池にクジラが暴れており、本来の市場メカニズムが効かなくなっている」と指摘。「いつまでも異常な人為操作は続かず、やがて破たんに直面する」と警告する。

従来、日本の株価には、前日のニューヨーク株価に比例して上昇・下落し、円安なら買い、円高なら売りといったトレンド理論があったが、このところこの理論が通じない。市場関係者は「円相場との相関はなくなっており、米国株とも連動しない」と語る。

米株価が下がっても東証株価が一本調子で上がることも度々。一方で、3月31日は米株価の急騰にもかかわらず、逆に東証株価は大量に売られ、異常ともいえる値動きだった。

GPIFは世界最大の政府系ファンドで総額約137兆円。国民の年金資金を原資とし、従来は国債中心に運用していたが、昨年10月末、国債の運用比率を下げ、国内株式の割合を全体の12%から25%まで拡大した。これにより新たに18兆円が東京株式市場に流入する計算。国家公務員共済などの共済基金も同様に株運用の比率を高めた。政府系のゆうちょ銀行やゆうちょ生命も株価を購入している。

日銀によるETF買い入れは株式購入と同義語であり、余力資金約三兆円といわれる。東証株価買い支え要因となっている。年金や日銀資金という公的資金により株価は14年度に約3割も上昇したことになる。アベノミクスは円安と株価が生命線で、首相官邸には株価ボードが掲示されている。政権幹部は株価動向に一喜一憂するが、人為的な株上げは禍根を残す。膨大かつ急激な資金流入が市場にゆがみをもたらすおそれも無視できない。

これら公的資金の買い余力は総計で十数兆円に達するといわれるが、新年度は6月あたりで底を突くとの試算もある。元本が保証されない株式というリスクマネーは株価が急落した場合、国民の負担となってしまう。

公的資金による相場の押し上げが、その後の相場の長期低迷につながるのは1990年代初めの「PKO(株価維持策)」の失敗で証明済み。市場のプロも「官製相場はいずれ底が割れて株価は下がる」と懸念する。“クジラ”の買いが終わった時に備える市場関係者も多く、外国人投資家も売り逃げの構えといわれる。

米国で原油安やドル高の影響で景気減速懸念が浮上。ロシアやブラジルでは資源価格安が株式や通貨の下落につながり、中国でも景気の減速感が漂っている。中東やギリシャ情勢もリスク要因となる。安倍政権の経済政策、アベノミクスは正念場を迎えていると言えよう。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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