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中国主導のアジア投資銀行、「陸と海の新シルクロード」「北極圏開発」とリンク―「アジアの盟主」狙う驚愕戦略とは?

八牧浩行    2015年4月8日(水) 9時6分

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世界中で中国が展開しているしたたかな経済外交を侮ることはできない。15年中に創設されるアジアインフラ投資銀行がその先兵になる。日米が「既存の国際金融秩序への挑戦」と警戒する中、中国が世界の盟主としての座を狙う戦略が進行している。資料写真。

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世界中で中国が展開しているしたたかな経済外交を侮ることはできない。15年中に創設されるアジアインフラ投資銀行(AIIB)がその先兵になる。新興6カ国によるBRICS銀行設立と併せ、日本や米国が「既存の国際金融秩序への挑戦」と警戒する中、中国が世界の盟主としての座を狙う戦略が進行している。

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◆AIIB参加国急増の前兆はあった

中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の参加申請メンバーが52カ国・地域に達した。東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国、主要7カ国(G7)の英国、ドイツ、フランス、イタリア、米同盟国の韓国、オーストラリア、主要新興国のロシア、インド、ブラジルなどのほか、オランダノルウェー、エジプト、トルコ、イスラエル、台湾までもが雪崩を打つように参加を申請した。

その前兆はあった。中国に対抗しようとする考えが根強い日本にとっては不愉快な話なのであまり報じられなかったが、昨年11月の20カ国・地域(G20)首脳会議終了後、16年のG20議長国に中国が決まったことが発表されると、中国国内のメディアは「中国は日本に圧勝した」と大きく報道した。日本も議長国に名乗りを上げていたが、結果はG20メンバーの大半が中国を支持してしまったのである。

安倍政権の「中国包囲網づくりが奏功し東南アジア諸国や豪州などがサポートしてくれる」と期待した政権幹部の落胆は大きかった。貿易投資面で中国に依存するアジアや欧州の大半の国は、自国の利益を最優先し、最大規模の貿易相手国かつ消費市場である中国と向きあう。アジア太平洋地域の政治経済力学は経済規模が拡大する中国に大きく傾きつつあるのは否めない。

こうした中、中国がアジアのインフラ整備に乗り出す。14年11月、北京でのAPECで、中国政府は「一帯一路」構想をぶち上げた。「一帯一路」は、インフラ整備で海と陸の両方のシルクロードと経済圏を構築するという構想だ。中国は、西に延びる「海と陸の新シルクロード」を提唱し、関係各国と道路、鉄道、港湾の整備を進めている。20を超える国と地域をこの計画に巻き込もうとしており、既に個別に交渉を進めている。

ADBの試算によると、急成長するアジアでは、経済成長を支えるために、2010年から2020年までに必要なインフラ整備費は約8兆ドル(約1000兆円)に上るとされている。このニーズを狙って中国が主導したのがAIIBだ。さらにブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国(BRICS)は「BRICS開発銀行」の設立でも合意している。これらに加えて、中国は400億ドル(約4兆8000億円)を拠出して、シルクロード沿いの各国のインフラ整備などを支援する基金創設を表明した。

◆シルクロード沿いに鉄道建設を計画

現在、世界貿易の8割は海上輸送が使われているが、鉄道輸送は海上輸送や空輸に比べ速度や環境面で優位性が高い。ところが鉄道のレール幅が異なるため、中国から欧州へ貨物を運ぶ際に何度も積み降ろしを行わなければならず、多くの日数を要する。中国と欧州を結ぶ貨物鉄道路線としては現在、浙江省義烏市―スペイン・マドリード路線、重慶―ドイツ・デュイスブルク路線、北京―ハンブルク路線などがあるが16日〜21日もかかる。

このため中国政府はシルクロード沿いに新たな鉄道の建設を計画。既に関係する各国と新たな鉄道建設に関する交渉を進めており、高速鉄道を採用する可能性があるという。この鉄道建設プロジェクトは中国政府が担当、鉄道建設と引き換えに資源を得るバーター方式を採用する。中国では新たな鉄道会社を新設して経営管理を行うことも計画している。

中国は現在、東南アジアや中央アジア、中・東欧諸国、アフリカ、中南米など世界各地で高速鉄道建設プロジェクトを推進。インドでの受注にも積極的に取り組んでいる。こうした中、中国の2大鉄道車両メーカー、中国南車集団と中国北車集団が15年中に合併する。新会社は地下鉄車両で世界シェアの約50%を占める最大手となり、日米欧大手との受注競争に挑む。

◆ユーラシア経済圏、北極圏にも注力

中国は、東アジアから中東、ロシア、ヨーロッパにまたがる「ユーラシア経済圏」構想や南シナ海からマラッカ海峡、インド洋、地中海を経由する「海のシルクロード」構想も打ち出している。北極圏も重要視し、デンマークなど沿岸5カ国に急接近。地球温暖化に伴い、北極海を中心とした海上輸送ルートの地球規模での開発が進められている。北極海周辺の石油埋蔵量は世界の8分の1、天然ガスは4分の1に達するとの試算もあり、資源開発競争も激化しそうだ。

これら一連の動きは、AIIBとも強くリンク、ユーラシア・シルクロード構想に関係する国の大半が雪崩を打つ形でAIIBへの参加に名乗りを挙げており、注視が必要だ。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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