集団的自衛権、政府が勝手に解釈して行使できるようになる=与党の安保法制案を批判―共同通信社論説委員長

八牧浩行    2015年4月18日(土) 9時40分

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17日、堤秀司共同通信社論説委員長は日本記者クラブで「安保法制の行方と問題点」と題して講演(新聞通信調査会主催)。安保法制を巡る全体像は「非常に複雑かつあいまいで、政府が後で勝手に解釈して行使できるようになる」と疑問を呈した。

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2015年4月17日、政府は安全保障法制に関する与党協議会に安保関連法案の全体像を提示、自民、公明両党が大筋合意した。この問題に詳しい堤秀司共同通信社論説委員長は、日本記者クラブで「安保法制の行方と問題点」と題して講演(新聞通信調査会主催)した。安保法制を巡る全体像は「非常に複雑かつあいまいだ」と指摘した上で、「集団的自衛権の行使を目立たないものにするためかと勘繰りたくもなる。政府が後で勝手に解釈して行使できるようになる」と疑問を呈した。また「日米ガイドライン改定に最終合意(4月27日の予定)後に、関連法案を提出して国会論議に臨むというのは、順序が逆ではないか。これほどまでに国の在りようを変える大転換に際し、結論ありき、スケジュールありきの進め方には疑問が残る」と問題提起した。発言要旨は次の通り。

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安保法制を巡る全体像について、政府はグレーゾーン事態から武力攻撃事態まで「切れ目のない」対応が可能となるとしている。ただ、自衛隊による様々な海外での活動をはじめ、あまりにも多くの対応措置が並び、論点が入り組んでいるため、非常に複雑であいまいなものになっている。集団的自衛権の行使を目立たないものにするためかと勘繰りたくもなる。後で政府が勝手に解釈して行使できるようになるのではないか。

政府の法制整備の問題点は、「何のために」「実際にできるのか」といったものが少なくない点だ。何でもできるようにしておいて、何をするかは政府が決めるという流れになっている。与党協議で具体的な15事例の検討を棚上げしてしまったため、どのような場面、状況で集団的自衛権を行使できるかという点すら、あいまいなままになっている。

安倍首相は「湾岸戦争やイラク戦争での戦争に参加することはない」と強調する。だから「限定的な」集団的自衛権の行使ということになっているが、機雷掃海を「限定的な行使」と受け取ってくれる国などない。

自衛隊の海外活動が急拡大する。重要影響事態法で周辺事態法にあった地理的な制約が取り払われ、国際平和支援法では支援の基本計画策定や国会承認などを経て短期間で派遣が可能になるほか、PKO(国連平和維持活動)的な活動が加わる。さらに「後方地域」や「非戦闘地域」が撤廃され、活動地域が「面」から「点」になり、隊員はこれまでよりも最前線に近づくことになる。

自衛隊の安全確保に不安が残る。南スーダンPKOの例を見ても、一連の安全確保策がきちんと実施されるか疑問が残る。

与党協議で、関連法案の条文を固めるところまでやり終えて、それから国会論議という進め方では十分なチェックが効かない。公明党が「歯止め役」を自認しているが、一定の条件闘争をしながらもまとめに動くしかない。

日米ガイドライン改定に最終合意して、それから関連法案を提出して国会論議に臨むというのは、順序が逆ではないか。これほどまでに国の在りようを変える大転換に際し、結論ありき、スケジュールありきの進め方には疑問が残る。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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