ものづくりの街・墨田区、小さな博物館、工房ショップ、マイスターなど92カ所を指定=“課外教育”に活用、家族連れで賑わう―東京

八牧浩行    2015年4月29日(水) 20時2分

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東京墨田区は多くの町工場が区域全体に広がり、その集積度は日本一と言われる。「すみだ3M(スリーエム)運動」は製品の魅力を伝えるとともに、ものづくりの素晴らしさや大切さをアピールすることを目指している。写真は東京スカイツリー。

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東京の下町は江戸の昔から、「ものづくりの街」としての長い伝統が息づいている。特に墨田区は多くの町工場が区域全体に広がり、その集積度は日本一と言われる。産業のPRとイメージアップによる地域活性化を目標に、「すみだ3M(スリーエム)運動」がスタートしたのが1985年。製品の魅力を伝えるとともに、ものづくりの素晴らしさや大切さをアピールすることを目指した。以下の3つに分類され、相互に連動。課外教育に最適とあって、子ども連れで歩いて回る家族連れで賑わっている。

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<小さな博物館>墨田区の産業や文化に関する製品・道具・文献等のコレクションを、工場・作業場・民家等の一部を利用して展示。ちいさな硝子の本の博物館、江戸小紋博物館、セイコーミュージアム、べっ甲資料館、ブレーキ博物館など27カ所。

<工房ショップ>製造現場である工場や工房とその製品を販売する店舗が一体となっている店で、消費者のニーズに即したものづくりを目指す。江戸小紋 大松染工場、すみだ江戸切子館、羽子板の鴻月、片岡屏風店など28カ所。

<マイスター>すみだを代表する付加価値の高い製品を創る技術を持ち、技術の普及と後進の育成に努めている職人36人を認定している。

◆スカイツリーの波及効果狙う

墨田区は35年前に全国で初めて中小企業振興基本条例を制定し、全国の地方自治体の中小企業振興政策の先駆けとなった実績を持つ。同区担当者は「すみだ3M運動はこの条例を受けたもので、『ものづくりの街すみだ』を支える基本となっている。江戸時代から“本物”づくりを大切にしてきた伝統を受け継ぎ発展させたい」と意気込む。

墨田区といえば東京スカイツリーのお膝元。12年5月に開業したこの観光スポットには毎年5000万人以上が訪れる。「もともとスカイツリーを誘致したのは単なる観光ではなく産業振興と地域の活性化のため。ここを訪れた皆さんに墨田区を巡っていただき、大きい波及効果につなげることを狙った」という。最近はスカイツリー観光の帰りに区内に点在する工房ショップや小さな博物館を周遊する東京都内外の訪問客が急増している。

2014年に「すみだ3M運動」が30周年を迎えたのを期に、墨田区の産業や産品の魅力を伝えるとともに、ものづくりの素晴らしさや大切さをアピール。普通では見られない、多くの職人たちの技を、一つの会場で堪能できる実演イベントや、ほしいものを自分でつくれる体験型イベントのほか、硝子、革小物など多彩なワークショップを開催した。小さな博物館や工房ショップを巡るモニターツアーも3コースで実施。「つながりツアー」では、参加者はまず創作和紙工房で自分の好きな木版を選び、和紙に絵をつける作業に挑戦。それを手描き提灯工房にもっていき、職人さんから江戸文字の書き方を教えてもらった後、自分の好きな文字を入れた。最後にそれを屏風工房で、自らの手でミニ屏風に仕立て、「世界で一つの自分の屏風」(参加者)と大好評だった。

「ものづくりの街・すみだ」の今後について、墨田区は「継承者育成や地域ブランドをもっとつくる必要があり、まだまだ途上。本物を掘り起こし磨き上げて、伝統を生かし未来に通じるものづくりを目指したい」としている。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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