八牧浩行 2016年1月9日(土) 11時32分
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2015年に日本を訪れた中国人観光客は500万人近くに達し、前年同期の約2倍の水準。訪日外国人観光客の中で中国が断然トップだった。訪日中国人観光客1人当たりの平均消費額は約29万円で、日本経済に大きく貢献している。写真は東京・銀座。
この年末年始、日本列島は中国、韓国、台湾、香港からの観光客であふれた。日本はこれら近隣諸国にとって最も人気のある旅行先である。2015年、中国人の「爆買い」が「流行語大賞」に選ばれた。同年に日本を訪れた中国人観光客は500万人近くに達し、前年同期の約2倍の水準。訪日外国人観光客の中で中国が断然トップだった。日本政府観光局によると、訪日中国人観光客1人当たりの平均消費額は約29万円で、日本経済に大きく貢献している。
◆訪日客「2020年に2000万人」目標、今年にも達成
2015年の訪日外国人旅行者は1900万人近くに上った。日本政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される20年に2000万人達成を目標としているが、今年、大幅前倒しで達成の見込み。外国人旅行者の7割は中国、韓国、台湾、香港の東アジアから。この地域は日本に近接して訪日しやすいことに加えて、一般庶民の所得が向上しているためだ。円安、査証免除や要件緩和、査証免除拡充なども追い風になっている。
観光客の多くは東京、富士山、京都、大阪を結ぶゴールデンルートを好むが、その恩恵をフルに受けているのが、同ルートの中心に位置する富士山静岡空港だ。就航する国際線は13路線(うち中国は11路線)週47便と1年ほど前の3路線週13便からなんと約4倍に増えた。航空機が到着するたびに空港ロビーは中国人客らであふれかえる。 中国へは上海、天津、南京、杭州、武漢、西安、長沙など、沿海部から内陸部までほとんどの地域を網羅している。
日中間の航空協定で、発着回数が飽和点に近い羽田空港や成田空港を除き、中国の航空会社は自由に航空路線を開くことができる。静岡空港は最後に開設された地方空港で、東京から新幹線で最短1時間の近さゆえ不要との烙印を押され、当初閑古鳥が鳴いていたが、息を吹き返した。
中国大陸に近い福岡は爆買いの最前線と言われる。2015年の上海などからのクルーズ船の入港は264隻となり、14年の2倍以上を記録した。16年の博多港への接岸予約は既に400隻に達している。1隻あたり2000〜3000人が乗船するから凄まじい人数になる。
大手百貨店の15年度中間決算では、訪日中国人らの「爆買い」により高級品がよく売れ、多くが前年同期より売り上げが増えた。ドラッグストアも同様で、国内消費の低迷にあえぐ業界にとって外国人客は「救世主」と言える。
中国人の間で「日本の商品は高品質」と信じられており、特に健康食品や化粧品は人気で、デパートやドラッグストアで大量に購入されている。日本の医療サービスを提供する医療ツーリズムの人気も高い。がんの予防医療のためのツアーも人気を集めている。
◆中国富裕層、マンション購入に動く
中国をはじめとするアジア各国の富裕層が関心を寄せているのが日本の不動産。オフィスビル、ホテルだけでなくマンション・住宅への投資も目立つ。特に東京の不動産は2020年東京オリンピックに向けた値上がりへの期待もあって、人気がある。この動きに合わせ、日本の不動産販売会社も中国富裕層を対象とした取り組みを強化している。物件によっては、外国人が占める割合が高いところもある。豊洲の新築タワーマンションでは、区分所有者のうち2割が中国人だったとも言われてる。
中国で世帯の年間可処分所得が1万5000〜3万5000ドル=約180万円〜約420万円)となる富裕中流層の人口が1億5000万人を超えるとされる。さらにこの層は今後さらに増加し、20年には5億人に達すると見込まれている。
日本と中国・韓国の関係は、やや和らいだとはいえ、なお微妙な状態が続いている。双方に偏狭なナショナリズムが横溢し、相手の国について悪いイメージが浸透し、互いに憎悪し合っているのが実情だ。今こそ旅行や留学を通じた交流が重要であり、実際に相手国を訪問し、実際の姿に接し国民同士が対話すれば相互理解が進む。
外国人の訪日旅行が急増しているのに比べ、日本人の海外旅行は減少。日本を訪れる外国人が2015年に45年ぶりに日本人出国者数を上回った。北京で取材した北京市旅遊発展委員会の任江浩処長は「文化と歴史を融合させ観光の目玉にしたい。北京では春は花見、夏は郊外での避地、秋は収穫と体力増進、冬は春節祭りなど四季折々に楽しめる。日中の観光客が相互にもっと行き来するようになれば、日中はさらにウインウインの関係を築くことができる」と語っていた。
◆「話せば心が通じ合う」
昨年「爆買い後、彼らはどこに向かうのか」(プレジデント社刊)を上梓した中島恵氏によると、中国人の訪日ブームと爆買いは「まだまだ続く」という。「中国人の行動は神出鬼没、経済成長が鈍化したとはいえ拡大を続け、変化が激しい大国。エネルギーは莫大で、豊かになった今、世界に飛び出す原動力となっている」と強調。来日した中国人は年間500万人と言っても、全体の13億7000万人のごくわずかで、「中国の最先端の人たちがようやく日本に来始めたばかり」というわけだ。
ある訪日中国人観光客は帰国後、中国版ツイッター(微博=ウェボー)に次のように書き込んだ。「日本がわれわれを上回っている部分はあまりに多すぎる。日本の空港に降り立ったときから、違いははっきりしていた。静寂、秩序、清潔…。一つひとつのカルチャーショックが、私がそれまで抱いていた日本に対する印象を否定していった」。このような率直な感想は瞬く間にネットユーザーの間に伝搬する。
北京で日本語を専攻する中国人女子学生は初訪日の印象について、「自分が違和感を持つところがあっても、話せばお互いに心が通じ合う。『中国人と日本人は違う』という認識がだんだん消えて、『同じだ』ということに気がつくようになった。習慣や漢字など勉強すればするほど中国と日本には共通するものが非常に多い」と心情を吐露している。
多くの国の人々が行き来し、触れ合うことによって相互理解が進めば、東アジア地域の平和友好と経済発展につながる。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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