八牧浩行 2016年1月14日(木) 10時15分
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13日、富士通総研経済研究所の早川英男・エグゼクティブ・フェロー(元日本銀行理事調査統計局長=写真左)は、「2016年経済見通し・転機を迎えたアベノミクス」と題して、日本記者クラブで講演。「異次元緩和は行き詰っている」と語った。
2016年1月13日、富士通総研経済研究所の早川英男・エグゼクティブ・フェロー(元日本銀行理事調査統計局長)は、「2016年経済見通し・転機を迎えたアベノミクス」と題して、日本記者クラブで講演した。日本銀行の異次元金融緩和について、「2%インフレ」目標を2016年度後半に先送りしたものの実現の可能性は低い、と指摘、「異次元緩和は行き詰っている」と強調した。また財政が本当に苦しくなるのは、「団塊世代がさらに高齢化し医療・介護費用が急増する2020年代半ばから」との見方を示した。発言要旨は次の通り。
日銀の異次元緩和は行き詰っている。「2%インフレ」目標を2016年度後半頃に先送ったが、実現の可能性は低い。生鮮食品・エネルギーを除くコアCPI(消費者物価指数)も、円安効果の剥奪(はくだつ)により、近い将来に頭打ちとなるとみられる。日銀審議委員の大半も17年度でも「2%インフレ」の実現は困難とみている。
異次元緩和はもともと短期決戦の陣立てだった。長期戦が必至となった今、持久可能な政策の枠組みが必要だ。「戦力の逐次投入はしない」としてバズーカ砲を2発放った結果、“弾薬切れ”を市場から見透かされている。
しばらく先とみられるが、「2%インフレ」が実現し、日銀が大量の国債買い入れを終了すれば、長期金利は大幅に上昇してしまう。そうなると、長期債を大量に保有する地銀や信用金庫が多額の損失を被り、金融システムに影響する。長期債を抱え込んだ日銀の損失も莫大となる。国債の大量発行に依存する国も国債金利が上昇し、財政破たんの危機に直面する。
日本政府は「20年度までにプライマリー・バランス(歳入総額から国債発行収入を差し引いた金額と、歳出総額から国債費を差し引いた金額の収支)黒字化」との目標を掲げている。しかし名目成長率3%(実質2%)という極めて楽観的な成長頼みの計画で、このままでは目標達成は不可能。社会保障費を中心とした思い切った歳出削減と成長戦略推進が急務だ。日本の財政が本当に苦しくなるのは、団塊世代がさらに高齢化し医療・介護費用が急増する20年代半ばからである。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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