<インタビュー・台湾政権交代(4/6)>共産党政権が蔡政権に強い警戒感=訪台中国人観光客の減少、大陸からの牽制?―蔡増家・国立政治大教授

Record China    2016年5月19日(木) 3時30分

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蔡増家・国立政治大学亜太研究所教授兼所長は、中国共産党政権が蔡英文政権の誕生に強い警戒感を示していると指摘。既に顕在化した事例として、台湾への中国人観光客の減少、中国が台湾と断交した西アフリカ・ガンビアと国交を回復したこと―などを挙げた。

台湾では5月20日、馬英九国民党政権から蔡英文民進党政権に交代する。これを前に、政官財言論界の有力者6人にインタビューした。蔡増家・国立政治大学国際関係研究中心亜太研究所教授兼所長は、中国共産党政権が蔡英文政権の誕生に強い警戒感を示していると指摘。すでに顕在化した具体的事例として、台湾への中国人観光客の減少、中国が台湾と断交した西アフリカ・ガンビアと国交を回復したこと、「92年合意」の受け入れを改めて要求したこと―などを挙げた。(聞き手・ジャーナリスト相馬勝)

<蔡増家(Tsai Zheng-Jia)>

政治大学博士、現在、政治大学国際関係研究センター研究員・所長。主要な研究分野は、比較政治、政治経済学、比較政治経済学、研究地域は、日本、韓国。Issues&Studies、『問題与研究』『美欧季刊』『中国大陸研究』『人文及社会科学集刊』『問題と研究』などに30 編余りの論文を発表。主要著作に『日本転型:90 年之後政治経済体制的転変』がある。

――蔡英文・民主進歩党主席が台湾総統に就任したあとの中台関係の変化をどう予想しますか。

蔡増家所長 中国共産党政権は蔡英文政権の誕生に強い警戒感を示しています。1月に蔡氏が台湾総統選挙で当選したあと、すでに中国の台湾に対する態度に変化が出始めています。それは3段階に分けられます

まず、第1段階は蔡氏の当選から3月20日までで、その具体的な兆候は台湾への中国人観光客の減少ですね。昨年1年間で、台湾を訪れた中国人は460万人に上っていますが。これは全体の48%に達しています。それが徐々に来なくなっているのです。これは大陸の観光業者の自粛という面がありますが、実は習近平政権が指示を出している節もあるのです。

 

外交的には中国政府は3月17日に西アフリカのガンビアと国交を回復ししています。ガンビアは2013年11月に台湾と断交していました。それを中国が外交関係を結んだのです。台湾の外務省は同日、「遺憾だ」との声明を発表しました。

 

中国は中国国民党の馬英九政権が対中融和路線をとっているため、台湾が他国と外交関係を維持することを事実上容認しており、馬政権下では外交関係国の減少が止まっていました。現在、台湾と外交関係があるのは22カ国です。

 

民進党の報道官は「両岸(中台)間で国際上の競争をしないよう望む」と述べていますが、中国が今後、台湾と外交関係を結んでいる諸国の切り崩しを活発化する可能性もありますね。

 

――第2段階の3月20日は何が起こったのですか?

蔡所長 これは中国の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)終了後の動きです。中国の習近平国家主席は全人代の会合で、「いかなる台湾独立の分裂行為も阻止し国家主権と領土を守る」と強調したうえで、中国の対台湾政策は「台湾の政局が変化しても変わらない」と明言し、「92年合意が両岸(中台)関係の平和発展のカギだ」と述べて、92年合意の受け入れを改めて要求しています。

 

92年合意とは、中国と台湾の交流窓口機関が1992年、「一つの中国」の原則を口頭で確認したとされる合意ですが、明確な文書は存在しません。台湾の中国国民党は「中国」が「中華民国」と「中華人民共和国」のいずれを指すのかは各自が述べ合うと解釈しています。つまり、時期は明言していませんが、いずれ中台が統一することを前提に中台関係をとらえています。

蔡氏は4月の記者会見で、92年合意について、中国と台湾の代表が92年にシンガポールで会談した事実は認めていますが、双方が話したとされる内容については言及していません。つまり、認めるとも、認めないとも言っていないのです。

中国側は5月20日の蔡英文氏の総統就任演説を聞いたうえで、今後の対応をとってくるでしょう。その意味では、蔡氏の就任演説いかんによって、中国が台湾への反発を強めるのか、それともこれまで同様、融和姿勢を貫くのかがかかっており、極めて重要なのです。

――蔡英文氏はどう出ると思いますか?

 

蔡所長 蔡英文氏としては、中台関係はこれまで同様、現状維持で、安定した関係を保ちたいところでしょう。そのうえで、中国への経済的な依存度を低めるために、東南アジア諸国との関係を強化する「新南向政策」を推し進めることになるでしょう。

さらに日本と台湾との関係も強化して、経済的結びつきを強めることになるでしょうね。もちろん、米国主導の環太平洋連携協定(TPP)への加入手続きを進めていくことになります。さらに、米国と軍事的な関係を強化するなど、蔡氏は国際環境を味方につけた外交戦略を思い描いているのではないでしょうか。

<5/6>に続く

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