南沙諸島の領有権争う中国とフィリピン、歩み寄りか=仲裁裁定控え双方に思惑―両トップがエール

八牧浩行    2016年6月1日(水) 10時10分

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中国とフィリピンが領有権をめぐって争っている南シナ海・南沙諸島について、中国・習近平国家主席とフィリピンのドゥテルテ次期大統領が協議する可能性が高まっている。資料写真。

2016年5月31日、中国とフィリピンが領有権をめぐって争っている南シナ海・南沙諸島について、中国・習近平国家主席とフィリピンのドゥテルテ次期大統領が協議する可能性が高まっている。ドゥテルテ次期大統領は5月15日の記者会見で、「中国と友好関係を築きたい」と述べ、領有権問題をめぐり悪化した中国との関係を修復したい意向を表明した。中国外交部によると、習主席も30日、ドゥテルテ氏に対し、次期大統領就任の正式決定を祝うメッセージを送るとともに、両国の長い友好関係に言及。「双方が2国間関係を健全で発展的な路線に戻すために懸命に取り組むことを望む」と伝えた。

ドゥテルテ氏の前任のアキノ大統領は、南沙諸島の領有権問題について仲裁裁判所に仲裁手続きを進めており、フィリピンと中国の関係が悪化した。フィリピンは「南シナ海における中国が利用している様々な海洋地形物は排他的経済水域と大陸棚を有する島ではなく、国連海洋法条約第121条3項に規定される「岩」であり、低潮高地や恒常的に海面下にあるものだ」と主張。中国の「最近の大規模な埋め立て工事はこれらの海洋地形物の元の性質と性格を合法的に変更しうるものではない」と提訴している。

ドゥテルテ氏は「交渉の船が静かな海にあり、圧力的な風が吹かないなら、私は中国と2国間で協議することを決めるだろう」と述べ、中国と対話する考えを示した。同氏は最大の貿易投資相手国である中国との良好な関係を重視する考えを大統領選で表明している。

中国は、南シナ海の多くのエリアを囲む「九段線」は中国の歴史的な権利であると主張。国連海洋法条約は298条で当該国の宣言による適用の除外を定めていると指摘、中国は2006年8月25日にこの宣言をしているので仲裁裁定に応じる義務はないとしている。

仲裁裁判所は政治的に配慮する傾向にあり、一方に極端に加担するような判決は出ないとみられるものの、フィリピン寄りの判決となる可能性が大きい。中国はこれを無視すれば、国際社会で外交・司法面での圧力にさらされるため、対話による解決の道を探ることになったとみられる。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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