日本僑報社 2016年6月8日(水) 7時30分
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日本に嫌悪感を抱いている中国人は少なくないが、些細なきっかけからそうした心情に変化が現れることもあるようだ。華僑大学の李佳南さんは、反日の祖父が考えを変えるまでの出来事をつづっている。資料写真。
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過去の歴史が原因で、日本に嫌悪感を抱いている中国人は少なくないが、些細なきっかけからそうした心情に変化が現れることもあるようだ。華僑大学の李佳南さんは、日本語を学ぶことに否定的だった反日の祖父が考えを変えるまでの出来事を次のように作文につづっている。
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「本当にいいのか。日本語なんて勉強しても将来性はないだろう。それに、おじいさんは叔父さんの仕事にも賛成してないし、お前まで日本語を勉強すると、さらにおじいさんを失望させるぞ」「それは…」「まあ、もう大人だからお前の人生はお前次第だ。もう寝よう」。これは私が華僑大学に来る前の夜にした、父との最後の会話だ。
私の叔父は今、東風日産という日中合弁企業で働いている。祖父は子供の時、その目で日本の兵士が村を掃討するのを見たことがあるので、日本人に対して嫌悪感が強い。「せっかくお前を大学生にしたのに、日本人と一緒に働くなんて絶対許さない!」。叔父が祖父の反対をおして日本の企業に就職すると決めた時、祖父がどんなに怒っていたか、今も記憶に新しい。
冬休み、私が祖父のところへ遊びに行った時、祖父の友人が訪ねてきて、こんなことを聞いた。「わしの覚えに間違いがなければ、孫娘さんはもう大学生。本当にいい子ですね。で、孫娘さんは大学で何を専攻していますか?」。祖父はすぐ顔色を変えて、「つまらないことだから言わなくてもいい」と言った。その場は気まずい雰囲気になった。祖父にとって、孫娘が日本語を勉強していることはきっと恥をかくことなのだろう。その日、私は2年生の時に必ず転科すると決心した。でも、次の夏休みに起こった出来事は、私にその決意を断念させた。
あの日、私が家でテレビを見ている時に、急に携帯電話が鳴った。電話に出たら、なんと日本語が聞こえてきた。「もしもし、あの、日本語が通じますか」「は、はい。少しだけできますけど。どちら様ですか」「ああ、よかった。私、李有善さんと同じ会社の山崎と申します。さっき李さんが仕事の途中で急に倒れたんです。私は病院まで送りました。今はもう大丈夫そうですが、しばらく声が出せないようです。李さんはずっと私にこの番号を見せていたので、かけてみたんです」「あのう、すみません。日本語がまだ下手なので、ちょっと分からないんです。もう一度お願いできますか」…。
私は下手くそな日本語で山崎さんと長時間話して、ようやく叔父が入院したことの経緯がわかり、それを叔母に伝えた。あの日は休日だったが、叔父と山崎さんは会社で残業をしていた。叔父は仕事中、突然高血圧で卒倒したそうだ。山崎さんは付き合いが全くなかった叔父を助けてくれただけでなく、何度もお見舞いに来てくれたそうだ。それらはすべて叔父が退院した後、私に教えてくれたことだ。
1週間後、祖父は急に電話をかけてきた。「叔父さんのこと、聞いたよ。佳南ちゃん、よくやったね。以前はわしの偏見で辛い思いをさせてすまなかった。日本語の勉強頑張ってね。将来、日中友好関係に力を尽くせたら、おじいちゃんは佳南ちゃんを誇りに思うよ」。祖父の話を聞いているうちに、私は思わず涙が出てきた。「うん。必ず一生懸命日本語を勉強するよ。絶対おじいちゃんの希望に背かないようにするよ」。
あれから1年間、私は心を入れ替えて真面目に勉強している。日中両国の間には歴史的な問題が確かにあると思う。でも、それはもう過去のことだ。今の両国の国民にとって重要なのは現在のことなのではないだろうか。祖父のようにずっと日本を憎んでいた人も偏見を捨てられたのだから、皆さんもきっとその敵意をやめられるはずだ。そして、互いに尊敬し、助け合える日が来るだろう。一緒に友好的な時代を作ろうではないか。(編集/北田)
※本文は、第九回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「中国人の心を動かした『日本力』」(段躍中編、日本僑報社、2013年)より、李佳南さん(華僑大学)の作品「敵意をやめ、友好時代を作ろう」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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