勝又 壽良 2016年7月19日(火) 18時0分
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常設仲裁裁判所は南シナ海問題で劇的な裁定を下した。裁定後、中国は抗議の姿勢で実力行使に及ぶと見られていたが、猛烈な抗議声明だけに終わっている。中国に実力行使を抑制させた背景は3つ考えられる。資料写真。
7月12日、常設仲裁裁判所は南シナ海問題で劇的な裁定を下した。(1)中国の主張する九段線の「歴史的権利」について否定。(2)7つの岩礁について、「島」ではなく「岩」か「低潮高地」と認定した。これにより、周辺海域での資源開発への主権的権利も中国は主張できなくなった。
事前の予想では、(2)についてだけフィリピンの提訴を認めると見られていた。結果は(1)まで含むもので、中国外交はメンツ丸つぶれになった。裁定が出る直前まで、中国海軍は南シナ海で実弾演習をしていた。裁定後は当然、抗議の姿勢で実力行使に及ぶと見られていたが、猛烈な抗議声明だけに終わっている。中国に実力行使を抑制させた背景は3つ考えられる。
一つは、九段線について「歴史的権利なし」との裁定が出たこと。これでは、中国が実力の抗議をしたくても、その根拠を失っている。二つは、年内に「G20」が中国議長で開催される手前、手荒なことをすれば猛非難をあびる。
三つは、次の報道である。「フィリピンのロレンザーノ国防相は、仲裁判断に先立ち、カーター米国防長官と会談したことを明らかにした。その際カーター国防長官は、中国が米国に対して自制を確約し、米国も同様の確約をしたと語った。カーター長官は、フィリピンにも同様の確約を求め、フィリピンも同意した、とロレンザーノ国防相は述べた」(『ロイター』7月13日付)。以上のような、三つの事情が絡み合って、今のところは南シナ海「波静か」である。
■筆者プロフィール:勝又 壽良
横浜市立大学商学部卒 経済学博士(中央大学)元『週刊東洋経済』編集長、元東洋経済新報社編集局長、元東海大学教授、元東海大学教養学部長。2010年5月から、アメブロで中国と韓国を主体に「勝又壽良の経済時評」を毎日更新。経済・外交などのメディア情報に基づきこれまでの経験を生かし執筆している。経済記者30年、大学教員16年で得た知見を生かして日々の内外情報と格闘している。どうぞ、ご支援を!
1936年生まれ。横浜市立大学商学部卒 経済学博士(中央大学)元『週刊東洋経済』編集長、元東洋経済新報社編集局長、元東海大学教授、元東海大学教養学部長。2010年5月から、アメブロで中国と韓国を主体に「勝又壽良の経済時評」を毎日更新。経済・外交などのメディア情報に基づきこれまでの経験を生かし執筆している。経済記者30年、大学教員16年で得た知見を生かして日々の内外情報と格闘している。どうぞ、ご支援を! 著書はこちら(amazon)ブログはこちら
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