横浜・仙台に「クーデター未遂首謀者」系組織、資金源に=日本政府に摘発要請―トルコ駐日大使が緊急会見

八牧浩行    2016年7月20日(水) 19時46分

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メリチ駐日トルコ大使が15日に発生したクーデター未遂事件を受けて緊急会見。クーデター未遂の「首謀者」とされるイスラム教指導者ギュレン師の傘下組織が日本でも、仙台や横浜などでインターナショナルスクールや商店などを運営し、資金源となっていると指摘した。

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2016年7月20日、メリチ駐日トルコ大使が15日に発生したクーデター未遂事件を受けて日本記者クラブで緊急会見した。トルコ政府がクーデター未遂の「首謀者」と名指しするイスラム教指導者ギュレン師が今回の事件に関わった証拠は多くあると例示した。その上で、ギュレン師の傘下組織は日本でも、仙台や横浜などでインターナショナルスクールや商店などを運営し、資金源となっていると指摘、「活動が容認されれば、日本はトルコの国家体制を転覆させようとする組織を保護していることになる」として、こうした組織の資格停止と活動中止を日本政府に求めていることを明らかにした。また「国民はクーデターを企てた者たちに怒っており、死刑制度復活が議論されている」と明かした。

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メりチ・トルコ大使の発言要旨は次の通り。

今月15日に軍指令系統に逆らう形で軍事的な動きがあり、まもなく国軍の一部による軍事クーデターであることが判明した。トルコは自国の国会や省庁を爆破し国民を攻撃。空軍装甲部隊の一部が加わった。大統領はじめ政府、警察・検察が一致連携して民主国家を破壊するクーデターを終わらせた。国民も戦車の前に立ちはだかり、この企てを収束させた。

結束を示した全政党が臨時国会で声明を発表し、クーデター首謀者を強く非難した。首謀者たちは国営・民間放送局などを占拠しようとしたが失敗に終わった。市民と警官の犠牲者は合わせて208人に上った。陰謀者29人が殺害された。未遂に加わった8人がギリシャに逃亡、同国と返還するよう交渉している。

クーデター未遂に絡んだ拘束者は7543人に達した。うち約6000人が軍人。内務省は政府関係者2047人を免職処分とし、8777人を停職処分とした。トルコの社会生活が正常に戻った。

米国滞在中のイスラム教穏健派指導者、ギュレン師と支持者がクーデターを企てたのは明らかであり、不法行為を犯した。国際社会の多くがトルコ政府を支持し、安倍晋三首相がコメントを発表したことに感謝したい。

トルコは大変な支援を乗り越えようとしている。一方で、政府機関にいるクーデターに加わったものは法に基づいて早期に処罰されることになる。トルコ経済も堅調さを示し、安定を取り戻した。

ギュレン師たちがクーデター未遂事件に関わったことを示す明白な証拠が多数ある。陰謀者のメッセージが見つかった。戦車の一つの中にいた、軍服を着た警察官が身柄を拘束され、分厚いファイルが4つあった。

この組織は軍だけでなくすべての機関に潜入している。自らのネットワークを構築しており、国の機関内で上下関係が崩壊していた。無線でやり取りし、少佐が大佐に命令を出しているケースもあった。軍も命令系統が崩された。

イスラム革命以前のイランの状態に似ている。パリにいたホメイニと同様、ギュレン師もアメリカにいて活動を指示している。ネットワークの一味は日本国内でも活動しており、日本での彼らの活動が容認されれば、国の体制を変えようとする組織の擁護につながる。

関連団体が日本でも活動し、同師が率いる「ギュレン運動」の資金源にもなっている。

 

ギュレン師の傘下組織は日本で1990年代後半から、仙台や横浜などでインターナショナルスクールや商店などを運営している。彼らは合法的な組織を装っており、活動が容認されれば、友好国の日本はトルコの国家体制を転覆させようとする組織を保護していることになる。こうした組織の資格停止と活動中止を日本政府に求めている。

トルコでは表現の自由が保障されているが、制限されることもある。欧州の人権裁判の判決の中でも認められている。トルコは30年間にわたりテロに苦しんできた。批判するのはいいが、大統領や国旗を侮辱してはならない。

日本では西洋の報道に基づいてトルコを扱うケースが多い。トルコの基本的な状況を報道しているわけでもなくトルコにプレッシャーをかける結果になっている。

欧州連合(EU)加盟は目標だが、もっと優先すべきことがある。EUと合意した「加盟交渉の加速」「EUがシリアからの避難民に使う60億ドル援助」「ビザ免除」―の3条件はすべて満たされていない。トルコはEU加盟の条件を満たすため死刑制度を廃止した。しかし、クーデター首謀者は一般国民に戦車を出動させて狙撃したので、国民は怒っている。世論は死刑復活を議論している。(八牧浩行) 

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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