情報を誰もが発信できる時代、ビジネスチャンスは拡大する!=『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか―メディアの未来戦略』著者

八牧浩行    2016年7月30日(土) 4時50分

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米国メディア論の第一人者、ジェフ・ジャービス・ニューヨーク市立大学教授の新著『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか―メディアの未来戦略』を監修した茂木崇東京工芸大学専任講師が、日本記者クラブで講演。本書にはメディアの未来が大胆に予測されていると指摘した。

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2016年7月26日、米国メディア論の第一人者、ジェフ・ジャービス・ニューヨーク市立大学教授の新著『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか―メディアの未来戦略』を監修した茂木崇東京工芸大学専任講師が、日本記者クラブで講演。同書のポイントを次のように解説した。

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インターネットの普及とフェイスブックツイッターなどソーシャルメディアの急速な発展により、新聞、テレビなど既存のマスメディアが劣勢に立たされている。マスメディアはどうすれば生き残れるのか? 本書はメディアの未来を展望し、デジタル時代への対応を具体的に探ったものだ。

印刷術を発明したグーテンベルク以来続いてきた文化は時代遅れとなり、大量生産、大量消費時代のメディアの在り方はもう通用しない。ただコンテンツをつくり一斉に提供すればいいという時代は終わった。メディア企業、ニュース企業は、大小、新旧、営利、非営利を問わず、「人間関係」を基礎にした戦略によって収益を得られると信じている。具体的に次のことを提案したい。

(1)「マス」は崩壊

ジャーナリストは読者の一人ひとりを理解して人間関係を築き、一人ひとりにあったサービスを提供すべきである。ジャーナリズムの目標を、コンテンツを作って売ることから、サービスを提供するという発想に変えなければならない。

ジャーナリズムはマスメディアであることをやめ、また単なるコンテンツ制作者であることもやめるべきである。そして個人、コミュニティとの緊密な関係、協力関係を基礎としたサービス業になるべきだ。何かを言う前にまず、人々の声に耳を傾ける。人々のニーズを満たし、目標を達成する手助けをする。過去の常識、定説はことごとく疑うべきだ。

(2)プラットフォーム(基盤)としてのニュース

ジャーナリズムをより有用で、大規模なプラットフォームに変えるべきである。人々が自ら積極的に情報を共有したいと思う場を提供するのがサービスである。

(3)エコシステムとネットワーク

報道機関、個人のブロガー、IT企業、読者情報などが協力するニュースの「エコシステム」を構築すべきである。今後は情報サービスが主体となることにより、公共サービスの提供が可能となる。

ニュースはそれぞれに対象の分野や地域を絞り込んだ多数の企業で構成されるエコシステムから提供されるようになる。このシステム内の企業は規模もビジネスモデルも設立理由もさまざまである。かなり混沌とした状況となり、どのようなニュースを受け取るかは人によって大きく異なる。誰もが一斉にニュースを受け取るわけではないが、ニュース・情報への需要はますます増え続ける。

(4)デジタル時代の ビジネスモデル

 

ビジネスモデルは簡単には見つからない。グーテンベルクが印刷術を発明してから、世界初の新聞が創刊されるまでに150年かかった。一方、世界初のウェブブラウザがリリースされてから、まだ20年しか経っていない。デジタルメディアは試行錯誤の最中であり、確立までには時間を要する。

デジタル時代の特徴は、コンテンツの希少性が失われ価格が値崩れしたことだ。

アナログ:コンテンツの供給<読者の需要

デジタル:コンテンツの供給>読者の需要

情報を誰でも発信できるので、需給バランスが崩れた。

既存の報道機関が従来の規模を維持して存続するのは難しい。このため調査報道などジャーナリズムの使命に照らして、取材記者など重要な機能を優先的に残して効率化すべきだ。

記事の形式は変わっても、記事の本質は変わらずに生き続ける。ニュースの内容だけでなく、提供する形式それ自体にも価値がある。優れた記事が他にある場合には、そちらにリンクを張って、ジャーナリズムにあてられる限られた資源を有効活用すべきだ。

報道機関は全ての記事を一人でゼロから作る必要はない。記事を部分ごとにつくり、読者のニーズに合わせて組み合わせて提示するようにすべきだ。

ただ記事を作って読んでもらえばそれで終わりということではない。記事は、サービスを提供するための手段となる。読者の全員に必要ではない部分は、別ページにしてリンクを張る。過去の記事はデータとして活用できるようにする。1つのニュースについての記事を順を追って読めるようにし、ニュースの「流れ」を見せることも有用だ。

マス広告が姿を消す可能性もあるが、記事の中に広告要素を盛り込むネイティブ広告には反対だ。記事なのか広告なのか分かりにくいものを提示するのは、読者を混乱させる。

現在のジャーナリズムはユニークユーザー数やPV数といったマスメディアの発想で動いている。今後はコミュニティの目標達成にどれだけ貢献できたかなどで成功を測るべきだ。

起業ジャーナリズムを盛んにし、従来とは異なるジャーナリズムが機能するようにしたい。

人々が情報を共有する手段は過去に例がないほど増えている。ニュースの供給源が増えるのは必然で、ビジネスチャンスは必ず増える。(八牧浩行

<ジェフ・ジャービス著、夏目大翻訳『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか―メディアの未来戦略』(東洋経済新報社、2200円税別)>

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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