泥沼化した東ティモール紛争を終結させた日本女性が明かす秘訣とは?「日本人は平和の立役者になり得る」―元国連平和維持活動官房長官が会見

八牧浩行    2016年8月4日(木) 4時0分

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東ティモール国連平和維持活動官房長官、国連開発計画平和構築アドバイザーなど、30年にわたって国連機関に務めた黒田順子・マーシ―大学客員教授が記者会見。紛争を食い止めた秘訣について、「経験に基づき勘を働かせること」などの点を明かした。

東ティモール国連平和維持活動官房長官、国連開発計画平和構築アドバイザーなど、30年にわたって国連機関に務めた黒田順子・マーシ―大学客員教授(米ニューヨーク市)が日本記者クラブで会見した。黒田氏はニューヨーク州認定の「メディエーター(仲介人)」の資格も持つ。東ティモールの国連平和維持活動・平和構築活動では官房長官として、紛争終結に貢献した。黒田氏は会見の中で、「経験に基づき勘を働かせること」など国際紛争解決の秘策を明かした。

黒田氏の発言要旨は次の通り。

国連勤務の30年のうち最もやりがいがあったのは2004年〜06年に東ティモール国連平和維持活動官房長官(チーフ・オブ・スタッフ)を務めた時。独立したばかりの新しい国だったが、厳しい対立が起きた。軍の内部で独立運動参加者と独立後に加わった者の間で待遇や昇進をめぐり不満が表面化した。暴動が起こり、15万人が避難民となる危機に発展、泥沼化していた。国連事務総長特別代表代行とともに大統領に会い、大統領が国民にメッセージを出す方法を協議。事態の悪化を未然に防ぐことができた。紛争を食い止めることができたことを誇りに思う。

東ティモールでは知識と経験を活用し、きちんと仕事ができた。早期警戒、紛争防止、紛争解決、政府指導者を通じる斡旋と仲介、現地事務所員の活用などすべてを経験した。

国連平和維持活動官房長官はメディエータ―(仲介人)でもあり、紛争の発展段階で問題があると役割が回ってくる。工夫して積極的に取り組めば非常にやりがいがある任務である。

メディエーターの活動には、非公式ボランタリー、安全な環境、信頼、中立、公正なプロセス、コミュニケーションなどの条件がそろうことが必要だ。あくまでも当事者の決定を調整する役割で、裁判官、弁護士や決定者などと異なり、自分の意見を言ってはならない。

紛争当事者の話し合いを助けることが任務であり、双方の理解が促進されるよう問題解決や成立のサポートを行い合意にたどり着くようアシスト。紛争当事者の話し合いを助け、理解を促し、当事者による合意・解決にたどり着くよう協力する。

言われたことをただやるのではダメで、自分で考え実行する必要がある。経験と勘を生かし、勘を信じて機転を利かせることが重要で、第六感でもいい。経験によって養われ、勘は後からどんどん出てくる。当事者から聞いたことをもう一度聞き直す中で、相手の気持ちを認識、問題点を見つける、共通の解決方法を編み出すことが大切だ。

問題点はそれぞれ違うが使うスキルは似ている。一度修得すればいろいろなところで使える。それば紛争解決の面白さである。対立している勢力でも喧嘩をすればお互いに違う点が分かる。争わずに避けるのが一番良くない。

何か起こりそうな時、敏感に早く対応する。緊張が高まった時を見極めて介入する。自分の意見を言わず、当事者の理解を促進することが大事である。

夫婦など個人の間でも仕事場でも民族間でも、同じスキルを使える。メディエーターは当事者間のコミュニケーションをとり、問題点や気持ちを認識し、聞いたことを自分で言い直す。価値観の違いが互いにわかるようになる。そういった勘というか第六感は経験で養われる。

国連は巨大な官僚機構。職員の行動はマニュアルや規則で定められるが、現場にいくと、それではうまく機能しない。

メディエーターは日本人に向いている。日本人は西洋のやり方を習得したと同時に、古い精神性の深さを持ち合わせている。これは日本人の強みである。耳を傾けるのが得意で和を求める姿勢は、現代国際社会で求められている。日本人は平和の立役者になり得る。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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