スマホ爆発の主因は社風にあった!?「反省」したサムスンは生まれ変われるか

Record China    2016年10月22日(土) 13時30分

拡大

発火・爆発が相次いだ韓国サムスン電子の新型スマートフォン「Galaxy Note7」。社の内部では、今回の一件を「起こるべくして起きた問題」とする声が上がっているという。写真はサムスンの広告。

発火・爆発が相次いだ韓国サムスン電子の新型スマートフォン「Galaxy Note7」。同社は問題を受け2016年10月11日、ついに製品の生産・販売打ち切りを決定した。韓国での発売からわずか50日余りの出来事だった。リコール作業は韓国はじめ各国で進んでいるが、中国や米国のユーザーらがサムスンを相手取り損害賠償訴訟を起こすなど、騒ぎは今後しばらく収まりそうにない。

生産中止を発表した翌12日、同社は7〜9月期連結決算の速報値(同月7日発表)を下方修正、売上高を当初発表から2兆円(約1900億円)減の47兆ウォン(約4兆3600億円)、営業利益を同2兆6000億円(約2400億円)減の5兆2000億ウォン(約4800億円)とした。また14日には、Galaxy Note7の販売中止に伴う損失が3兆ウォン(約2700億円)台中盤、またリコール費用が1兆〜1兆5000億ウォン(約920億〜1380億円)に達するとの試算を発表した。営業利益の減少分と合わせ、1機種の爆発問題で少なくとも7兆円(約6440億円)が飛ぶことになる。また当然、これとは別に信頼失墜による相応の損失も予想される。

韓国トップの大企業を根幹から揺るがすことになった事態だが、サムスン電子内部では「起こるべくして起こった」とする声が次々と上がっているという。同社は14日、上記の損失見込みと合わせ「製品の安全性強化のため、今後内部の品質点検プロセスを全面改変する」との方針を発表した。韓国各紙はこれを「硬直した組織文化を改善しようという同社の意思の現れ」とし、ここにつながる社員たちの問題意識と「反省の弁」を伝えている。

多く指摘されているのが、競合アップルを意識するあまり「スピード」と「革新」を何より優先してきた問題だ。韓国科学技術院(KAIST)のパク・ヒョンウク副総長は朝鮮日報(13日付)で、「スマホの後発メーカーとして出発したサムスンは、これまできちんと進んでいるかを点検する機会さえ持てなかった」と指摘しているが、これを裏付ける内部証言は多い。社の幹部の一人は「『量より質』という李健熙(イ・ゴンヒ)会長の製品哲学を忘れ(上層部が)『とにかく早く作れ』とプレッシャーをかけたため、品質テストをきちんとできなかった」とし、無線事業部の社員は「毎年2回、世界の見本市で無線事業部長が紹介してきた製品のうち、機能検証が終わっていた製品はほとんどなかった」と告白した。

14日付の韓国日報が指摘したのは、「上下間・部署間の意思疎通の断絶」だ。ソウル大経営学科のイ・ギョンムク教授は「今回のGalaxy Note7問題は、下が『No』と言えなかったことが重要な原因」とし、以前から指摘される「トップダウン式の組織文化」を批判した。また記事は、「過去、トップ企業を模倣し成長してきた過程では垂直的な文化が競争力になったことは事実」としながらも、今や先頭を走るサムスンが自ら新たな道を切り開くためには、「双方向の疎通と自律性が重視される柔軟な組織文化」が必要だと指摘した。

不必要な競争をあおる文化が生んだ、部署間の断絶への不満も多い。韓国日報は、「あるチームが新機能を開発したら他のチームは何が何でもより良い機能を出さなければならない」(無線事業部社員)、「開発、マーケティング、企画、検証、デザインなどがばらばらな状態で、何をしようとしているのか分からない」(社内掲示板)といった悲痛な声を伝えている。また聯合ニュース(14日付)は、部署間の競争が激しいため、何か問題が発覚しても隠したり見過ごしたりするケースが頻繁にあったとした。社員も組織も、アップルとの競争から生まれる焦りとは別に、行き過ぎた内部競争によって力をむしばまれていたのだ。

サムスン電子は長年、間違いなく韓国人の憧れの会社だった。韓国のリクルート情報サイトが行う調査では、過去7年間「大学生が入社したい大企業」で不動の1位を守ってきた。しかしソウル大電気情報工学部イ・シンドゥ教授は、こうした人気を背景とした「過度なエリート意識が長期間にわたって蓄積され、今回の爆発問題が起こった」と分析している。

実は同社は、発火・爆発の直接原因をいまだ把握できていない。が、内部の声からも外部の指摘からも、社風や組織文化に要因の一端があり、その刷新が急務であることは明らかだろう。奇しくも同社は、上に挙げた「入社したい大企業」調査で今年4月、現代(ヒュンダイ)自動車に1位を明け渡し僅差の2位に甘んじている。今回の反省を機にもう一度、名実ともにトップ企業に返り咲けるのか。14日に示した「全面改変」への強い意志の下に、今後どのような変革が具体的に進められるかが注目される。(編集/吉金

この記事のコメントを見る

中国や韓国の専門知識を生かしませんか?
レコードチャイナではコラムニストを募集しています。
どしどしご応募ください!応募はこちら

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携