<コラム>中国とバチカン、年内に新展開か、中国側の動機は「蔡英文政権への締め付け」と「得点稼ぎ」

如月隼人    2016年10月28日(金) 14時0分

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中国とバチカンの対立点は複数あった。「最も根本的」な対立点は、ローマ法王による司教の任命を、中国が自国内について認めてこなかったことだった。写真はバチカン。

英BBCは21日付で、ロイター電を引用しつつ、中国とバチカンの最大の対立点である司教の任命について双方がすでに合意し、2016年内にも中国国内で、バチカンも認める新たなカトリックの司教が誕生する見通しと報じた。

中国とバチカンの対立点は複数あった。例えば、中国が進めてきた「一人っ子政策」における、人工流産の問題などだ。しかし、「最も根本的」な対立点は、ローマ法王による司教の任命を、中国が自国内について認めてこなかったことだった。

世界各地の司教の任命は、ローマ教会にとって、宗教的権威の根幹にかかわる問題だ。一方の中国にとっても、宗教を含めて社会全般において「外国勢力の干渉は許さない」ということは、大原則だ。そのためこれまで約半世紀にわたり、両者の折り合いはつかなかった。

結果として、バチカン市国は欧州で唯一、中国と外交関係を持たず、中華民国(台湾)を承認する国であり続けた。

BBCによると、中国とバチカンの双方は協議の結果、8月中に中国国内の司教4人について、バチカン側が認めることで合意した。2人については年内にも、「バチカンが認めた中国の司教」が誕生する見通しという。

中国にとって蔡英文民進党政権は、台湾の「中国離れ」を促進する、極めて警戒すべき存在だ。台湾人の実際の対中観、“中台統一の機運”の進展以上に、蔡英文政権を可能な限り窮地に陥れないと、自国民に対する「示し」がつかなくなってしまうからだ。

つまり中国は、さまざまな手段を駆使して、台湾世論の「反蔡英文」の雰囲気情勢に血眼になると考えられる。

そのために、最も有効なのは、経済面での落ち込みを実現することだ。しかし、中国はそれ以外にも、台湾にとって“打撃”となる、ありとあらゆる分野で、成果を上げようとすると考えてよい。

もうひとつ、考えておかねばならないのは、中国における各部門の「功名争い」だ。中国当局は対台湾問題を含めて、外交担当部門の「分散」が目立つ。軍事・経済・政治面などに分かれて、成果を競っている。

外交部(中国外交部)はむしろ、「パワー」の裏付けを持たない部門として、相対的に軽んじられる評価に甘んじてきたとの状況がある。

宗教問題を巡り中国とバチカンの「合意と成果」が出たとしても、バチカンが「中国との国交樹立。台湾との断交」に一気に進む可能性は低い。ただ、中国が外交面で、台湾が現在も外交関係を維持ししている22カ国に「切り込む」可能性は否定できないと考える。蔡英文政権に対して「外交面で勝利した」との「戦功」は、中国外交部にとって大きな「得点稼ぎ」になるからだ。(10月28日寄稿)

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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