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<コラム>朴槿恵大統領の下野を求めた歌、歌っていたのは実はあの人物!

北岡 裕    2016年12月22日(木) 20時30分

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韓国人女性に「なぜ、韓国人はデモをするのでしょう」と聞いた。彼女はしばらく天を仰ぎ「至らない点が多くて」と答えた。小さな秘密を打ち明けるような、少し恥ずかし気な表情が印象に残っている。

「なぜ、日本人はデモをしないのでしょう」。数年前、食事を共にした韓国人女性に聞かれた。うまく説明できず「政治に無関心なのかな」と答えた記憶がある。逆にぼくと同じ年齢だった彼女に、学生時代に何度かデモに参加したことがあるという彼女に「なぜ、韓国人はデモをするのでしょう」と聞いた。彼女はしばらく天を仰ぎ「至らない点が多くて」と答えた。小さな秘密を打ち明けるような、少し恥ずかし気な表情が印象に残っている。

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領への弾劾が可決された。週末ごとに行われていた大規模なデモのニュースを見ながら、ぼくは彼女のことを思い出していた。数十万人の群衆の中に、彼女も蝋燭(ろうそく)を持ち立っていたのだろうか。

日本のニュース番組も朴大統領の件について連日多くの時間を割き伝えていた。その中で「ハヤハヤ」「ハオハオ」という特徴的な歌詞の歌が紹介されていたのを覚えている人はいるだろうか。この歌は「これが国か?」という歌。ハヤは韓国語で下野、ハオは下獄を意味する。つまり朴大統領に退陣、逮捕を求める歌だ。

加えて驚いたのが「クネ(朴槿恵大統領)、スンシル(崔順実氏)、ミョンバク(李明博元大統領)泥棒、奸臣の巣窟、犯罪者天国、庶民は地獄、もうこれ以上我慢できない」という歌詞。「奸臣」と「巣窟」の意味はぼくも知っているが、普段まず出てこない単語だ。皮肉ではなく韓国、朝鮮語の非難と悪口の語彙(ごい)の豊富さに唸らされる。権力への批判と物申し、敵への攻撃、もとい口撃は国対国だけでなく、街で見かける痴話げんかでも、飛び交う語彙と表現は実に豊富で無慈悲でパンチが効いている。北朝鮮の労働新聞が、アメリカや韓国を強く非難する時に使う表現もまた絢爛豪華である。

さて、この「これが国か?」。どこかで聴いた歌声だと思ったら「大韓民国憲法第一条」を歌っていた尹ミンソク氏の歌だった。韓国の憲法第一条「大韓民国は民主共和国である。大韓民国のすべての権力は国民から出る」をひたすら繰り返す曲は2008年の米国産牛肉輸入反対を訴えた蝋燭デモの際に聴いた。北朝鮮の金日成主席を称える歌を作った過去もある尹氏の立場の評価は難しい。そして首都の真ん中で大規模なデモが起こる姿は「至らなく」も見える。だが歌が政治と繋がり時に動かす。その豊富な語彙は掛け値なしにみずみずしく、趣味者は唸らされるのだ。

【著者のひとりごと】

先日国立西洋美術館で開かれている、クラーナハ展に行ってきました。クラーナハもいいですが、世界遺産に登録されたル・コルビジェ設計の建物も見ものです。

■筆者プロフィール:北岡裕

76年生まれ。東京在住。過去5回の訪朝経験を持つ。主な著作に「新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮」。コラムを多数執筆しており、朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」では異例の日本人の連載で話題を呼ぶ。講演や大学での特別講師、トークライブの経験も。

■筆者プロフィール:北岡 裕

1976年生まれ、現在東京在住。韓国留学後、2004、10、13、15、16年と訪朝。一般財団法人霞山会HPと広報誌「Think Asia」、週刊誌週刊金曜日、SPA!などにコラムを多数執筆。朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」でコラム「Strangers in Pyongyang」を連載。異例の日本人の連載は在日朝鮮人社会でも笑いと話題を呼ぶ。一般社団法人「内外情勢調査会」での講演や大学での特別講師、トークライブの経験も。過去5回の訪朝経験と北朝鮮音楽への関心を軸に、現地の人との会話や笑えるエピソードを中心に今までとは違う北朝鮮像を伝えることに日々奮闘している。著書に「新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮」(角川書店・共著)。

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