日本僑報社 2017年1月2日(月) 9時20分
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ドラえもんは中国の若者の目にどのように映っているのか。集美大学外国語学院の陳楠さんは作文につづっている。写真はドラえもん。
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2016年、中国では過去最多となる11本の日本映画が公開され、そのうち9本がアニメーションだった。近年、中国で上映される日本映画が減少しているなかで転機となったと言われるのが、2015年に公開され大ヒットとなった「STAND BY ME ドラえもん」だ。ドラえもんは中国の若者の目にどのように映っているのか。集美大学外国語学院の陳楠さんは作文に次のようにつづっている。
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中国語の主題歌を聴くと、多くの人が自分の少年時代を思い浮かべるそうです。ご飯を食べながらテレビの前で、「ドラえもん」が始まるのをずっと待っていたという経験がある人はとても多いです。80年代に生まれた中国の子どもたちにとって、いつも失敗するのび太くんと、丸い手足のドラえもんは、「子ども時代の象徴」でした。そして中国の子どもたちが一番憧れるのは、のび太くんでした。
子どもたちの世界は、大人のように煩わしいことはありませんが、それでも、試験が悪かった時は、母に内緒にしたり、父の目を盗んでそっと遊びに行ったり、また、友達をいじめたり、逆にいじめられたりと面倒なことはたくさんあります。子どもたちの小さい頭の中で、これらのことは一番大きな悩みです。のび太くんも同じです。のび太くんの悩みは、まるで自分自身のことのように思えたのでした。
私たちは、のび太くんと同じような経験をたくさん持っています。怠け者で、授業をさぼったり、いたずらをしたり、そして努力しないで成功を夢見るなど、本当に共通点が多くあります。のび太くんは私たちの分身です。
たくさんあるドラえもんの中で、私にとって印象深いのは「蝸牛居」(デンデンハウス)という話です。「蝸牛居」の中に入ると、他の人に邪魔されず自分ひとりだけの世界が守れます。雨も、お母さんも、大雄(ジャイアン)くんも、強夫(スネ夫)くんも、ぜんぜん怖くありません。私が「蝸牛居」を良く覚えているのは、この話がとても素直だからです。子どもの時は、誰でも母親に叱られたことがあるし、試験が悪かったこともあるでしょう。私もそうです。そんな時、のび太くんの「蝸牛居」のように「自分自身を守れる殻」がとても欲しいと思いました。
今の中国は日本と同じように、経済の発展とともに社会競争も激しくなり、物質生活の豊かさに対して、80年代生まれの若者たちは精神面が弱く、学業や就職のプレッシャーなど、今まで経験したことのない悩みや苦しみがあります。そして、その苦悩から解放される方法がわかりません。
複雑なこの社会で「ドラえもん」は無邪気な主人公を通じて、現代の若者に「純粋な空間」を作り出してくれます。この「ドラえもんスペース」は「蝸牛居」のように、自分を守る殻になって現実に疲れた心を癒してくれます。最後は殻から出なくてはならなくても、たとえ一時的にせよ、「ドラえもんスペース」は自分を慰める空間なのです。
のび太くんが困るとドラえもんはいつも四次元ポケットからいろいろな道具を取り出して助けます。ですから、中国の子どもたちの一番の憧れがのび太くんというのも理解できるでしょう。そんな話を見ていると、私は自分の悩みも消えるほど嬉しくなります。勉強もスポーツもよくできないのび太くんが一度も絶望しないで暮らせるのは、ドラえもんがそばにいるからです。ドラえもんは、知らず知らずのうちに、子どもだった私たちに「楽観的で積極的な生き方」を教えてくれたのでした。
それは、学歴社会の競争の中で失敗した若者にとっても、ひとつの大きな励ましです。ある分野でいつも群が抜けなくても、何か一つ長所がある、ということです。子どものように純真で正直な心を持って、元気を出して力いっぱいに生きるのは素晴らしい、という励ましです。入学したばかりの小学生たちはもちろん、受験勉強に苦しんでいる高校生でも、さらに就職活動に走り回る20代の青年でさえも、みんな心のどこかで「ドラえもん」に励まされながら、夢を持ち、あるいは、失った夢をもう一度拾いあげているのではないでしょうか。(編集/北田)
※本文は、第二回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「壁を取り除きたい」(段躍中編、日本僑報社、2006年)より、陳楠さん(集美大学外国語学院)の作品「ドラえもんへの手紙」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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日本僑報社
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