日本僑報社 2018年9月2日(日) 16時30分
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中国の魅力は都市部の目覚ましい発展ばかりではない。中国人民大学の王静インさんは、地元の「味」を日本人に味わってほしいと願っている。
中国の魅力は都市部の目覚ましい発展ばかりではない。中国人民大学の王静インさんは、地元の「味」を日本人に味わってほしいと願っている。以下は王さんの作文。
朝、軽快な光が町に溢れてきた。通勤通学の人々が動き始めると同時に、町の市場で働く人々も忙しい一日を始めた。ぱたぱたという足音、賑やかな呼び売りの声、魚のぽちゃんと跳ねる音……毎日、市場で奏でられる町の曲だ。その活気みなぎる一曲は、地元の人々の生活風情そのものが感じられ、町の独特な魅力を伝えている。
冬休みの帰省中に、友人の葉さんからの誘いで一緒に地元厦門の「八市」に行った。八市とは「第八市場」の略称で、厦門(アモイ)最大の市場だ。埠頭に近いので、ここで売っている海産物が一番新鮮だと言われている。有名になるにつれ、軽食を売る専門店も集まってきて、規模がますます大きくなってきた。着いたのは朝7時半ごろだった。二人とも朝ごはんをまだ食べていなかったので、まずは朝食探しだ。路が狭く、地面も濡れていて、海産物や野菜や肉が入れてあるかごが地面を覆っているので、私たちは小股でしか歩けなかった。
歩いているうちに、漂う甘い香りに誘われ、「満煎餻」の専門店を見つけた。出来上がったばかりの満煎餻は、焼いた皮が熱くてパリパリし、中がケーキみたいにふわふわし、真ん中にピーナッツとごまの具があり、一口で自然の甘みと豊富な食感が楽しめる。普通、満煎糕は豆乳と相性がいいが、その日は無性にピーナッツスープがほしくなった。ほかほかとしたスープを飲んで、ピーナッツの香りが口いっぱいに広がり、この暖かさも久しぶりだった。このような昔ながらの味はアモイの方言閩南語で「古早味」と言われている。
店を出ると、八市はすでに買い物客で賑わっていた。海産物の新鮮な香りが空気に漂っていて、閩南語と訛った共通語がにぎやかなざわめきの中に入り混じっている。売っている海産物の中には私が知らないものがたくさんあり、お店の人に聞くと、「あ、あれか。食べたことがある」と悟った。厦門の郷土料理「土笋凍」の原材料である海の虫も見つけた。いつも料理の中で見ているが、水槽に泳いでいるのは初めて見た。私が水族館気分を満喫していると、葉さんはカメラを取り出した。「何を撮影するの」と聞くと、「ここは厦門的だ。生活の雰囲気がある」と答えた。
「厦門的」とは何か。私はずっと考えている。急速な経済成長の中で発展してきた中国の町はだんだん自分の「味」を失い、ほかの都市と同化しているのではないかと時々思う。そんな中で、町の特別な味を保存しているのは地元の人々がいつも通う市場だ。市場に溢れる町の「味」は、旅行者にとっても不思議な魅力がある。
昨年、日本に短期留学していた時に、一度築地市場に行った。そこで初めて海鮮丼を食べ、様々な魚を見学し、非常に印象深かった。築地市場には毎日国内外から買い物客が押し寄せているが、それは、彼らがただ名所旧跡を回って写真を撮ったりするだけの旅行に満足できず、日本の「味」、東京の「味」を味わってみたいと思っていることの表れだと思う。だから私は各町の市場を中国の新しい魅力として日本の皆様にお薦めしたい。地元の人も観光客も足繁く通う「八市」では、豊富な品揃えを見ながら軽食を買い、食べ歩きもできる。ここでは、観光地を回る旅のようなよそよそしい感じはしない。気軽に店先の人に話しかけたり現地の食材を楽しんだり、街の味が味わえる。もちろん規模は築地市場ほどのものではないかもしれないが、その土地で生きている人々の食文化や生活を展示しているという点では一緒だ。
「民は食を以て天と為す」ということわざがある。食を大事にし、そこに愛情を込めるのは中国の伝統だと言える。それはまた故郷への愛情でもある。地元の市場、そこで買える食物、それは故郷を離れた人々にとって夢に見るほど恋しいものだ。翌朝、人々は八市に再び集まってきた。満煎餻の香りが立ち、お店の人が声を張り上げて食材を紹介し、海風が吹く。これが私の故郷、厦門の味だ。(編集/北田)
※本文は、第十三回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「日本人に伝えたい中国の新しい魅力」(段躍中編、日本僑報社、2017年)より、王静インさん(中国人民大学)の作品「町の味」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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