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<丹羽元駐中国大使インタビュー(3/3 )>中国のG7加盟と、日本の国連常任理事国入り実現が必要=日本が主導すれば両国関係は改善する

八牧浩行    2017年2月17日(金) 5時20分

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元駐中国大使の丹羽宇一郎・日中友好協会会長は、国際社会を安定化けするために、国連安保理常任理事国に日本とドイツを入れる一方、G7(主要7カ国)に中国、ロシアを参加させるべきだと提案した。

伊藤忠商事元社長・会長で元駐中国大使の丹羽宇一郎・日中友好協会会長はRecord Chinaのインタビューに応じた。第2次大戦後の国際社会を安定的なものにするために、国連安保理常任理事国に日本とドイツを入れる一方、G7(主要7カ国)に中国、ロシア、インドを参加させるべきだと提案。中国のG7入りに日本が主導的な役割を果たせば、日中関係の改善につながるとの認識を示した。また日中両国民の8割以上が相手国に「悪感情」を抱いているとの世論調査結果に疑問を投げかけ、若い世代はもっと交流し「真実から目をそらさず自分で見てきてほしい」と呼び掛けた。

『<丹羽元駐中国大使インタビュー(2/3 )>トランプ政権と中国は“水面下で接触・取引している”のではないか―「中国仮想敵国論」は過剰反応』から続く。(聞き手・八牧浩行

――日中の世論調査では日本人の中国嫌い、中国人の日本嫌いがそれぞれ8割〜9割にも上っているとの結果が出ており、この数年悪化しています。

調査対象は各2000人ぐらいで回答率も6割ぐらいでしょう。どうして国の大部分の声としてひとまとめに結論づけ出来るのでしょうか。安倍首相の支持率も同じですが、世論調査の信ぴょう性を学者に問いたいと思います。

――実感と調査結果は違うということですね。

何が本当なのか。中国人は嫌いと皆が言っているのに私だけが違うと思うというわけにはいかない。しかし、本当に嫌いなのか。中国に行ったことがある日本人は2割。日本に行ったことがある中国人はわずか3%。中国人口14億人の3%は4000万人ぐらい。互いに相手国に行ったことがないのに「嫌い」と言うのは、メディアや風評に影響されているからではないか。

9割が嫌いと言うだけでは仕方がない。メディアが反省しないとね。2000人に聞いても実際の回答者はもっと少ない。14億人の本当の考えは分からない。北京だけでは分からず、重慶などの内陸地方やウイグル地域など様々な地域の考えを聞く必要があるし、年齢の分布ごとにどのような意見なのかなど広く調査しなければならないと思う。

――大使時代に中国をつぶさにご覧になられました。来年は国交正常化45周年の節目の年。期待することは?

政治家同士が儀礼的にやるよりも民間外交を積極的に展開する方が効果的です。日中友好協会を中心に関連団体や企業などが企画しています。

――Record Chinaニュースでは「日本が好き」「日本人は中国を理解したい」という庶民の声も多く、地道な友好が芽生えつつあるという気もします。

日本だって老舗食品企業も含め、古かったり捨てるものを使って追及されたケースもあったのに、中国企業の不祥事だとセンセーショナルに報道するのは、アンフェアだと思う。中国についても、中国人のいろんな声を聴くことは重要です。

――若い人たちに贈る言葉は?

外国に行って真実は何かを見て来てほしい。真実を見たくないということではダメです。中国ならまず行って見聞してください。英国なども、日本よりずっと安定している。英国に行って英国の新聞を読むのと日本の新聞を読むのと違う。海外では日本のことはほとんど書かれていない。日本にいると世界は日本中心で回っているように思いがちですが、もっと目を開いていただきたい。自分で見て判断してください。

中国に行く若い人が激減しています。若者は「怖い」から行かないというが、今世界中どこに行ったって危ない。真実から目をそらさず自分で見ていただきたい。

――財政再建はじめ困難なことは先送りされます。何ごとも「先楽後憂」になっているように思います。

日本の厳しい財政状況に目をふさいでいる。いい話だけに飛びつき、キリギリスのような話ばかりしている。こんなことしていたらみんなダメになってしまう。

――中国は重厚長大分野中心からソフト分野や移行する構造改革を標榜しています。

中国はしばらく一党独裁で行かなければならない。日本みたいな民主主義では成り立たない。あれだけの大きな国をどうやってまとめるのですか。経済状況が良くなって、中間層が60%ぐらい占めるようになると、自然と政府は国民の意見を聞かなければならなくなる。20%ぐらいの意見では国をまとめられない。だが、現在の状況では私が習近平でも独裁をする。米国も中間層が激減したからああいう分断的な結果になる。

――どの国でも富裕層と貧困層が2極化し、国家が分断されるのは恐ろしいことですね。

日本は安定した国だったが、だんだん貧困層が増えて、格差が拡大すれば難しい事態となります。

――第2次大戦後の国際秩序が大きく変化していますね。

それにも拘わらず、今でも国連を動かしているのは戦勝国ばかり。安保常任理事国に日独が抜けています。米英仏が戦勝国の中心になって今の体制ができました。

一方、G7には常任理事国の中露が入っていない。先進国に近い両国と人口大国インドを入れる必要があります。

日本が音頭をとってその体制を構築すれば日中が仲良くできる。世界の政治家にはもっと国連にカネを出してもらいたい。世界が安定して仲良く話し合いができるようになるために必要です。

<丹羽宇一郎氏プロフィール>

日中友好協会会長、グローバルビジネス学会会長、早稲田大特命教授。

1939年愛知県生まれ。62年3月名古屋大学法学部卒業、同年4月伊藤忠商事入社、主に食料部門に携わる。98年4月同社社長、2004年会長に就任。この間、経済財政諮問会議民間議員、地方分権改革推進委員会委員長を務める。10年6月〜12年12月駐中国大使。著書は「中国の大問題」「危機を突破する力」「人を育てよ」「人類と地球の大問題」「中国で考えた2050年の日本と中国―北京烈日決定版」「習近平はいったい何を考えているのか」など多数。

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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