<コラム>中国人とのコミュニケーション、日本の「以心伝心」はあきらめよう

西村 徹也    2017年2月9日(木) 16時50分

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中国に駐在してすでに半年が経つ、単身赴任だけど、日本食品スーパーの場所も分かり、自分で炊事もできるようになってきた。しかし、まだ慣れないことがある。それは職場にいる中国人スタッフとのコミュニケーションだ。写真は北京市。

中国に駐在してすでに半年が経つ。単身赴任だけど、日本食品スーパーの場所も分かり、自分で炊事もできるようになってきた。バスに乗る勇気はまだないが、タクシーも1人で乗れるようになった。最近は他の会社の駐在員とも知り合いになって、ときどき食事も一緒にする。今度一度飲みに行こうと誘われている。

しかし、まだ慣れないことがある。それは職場にいる中国人スタッフとのコミュニケーションだ。

職場の中国人スタッフは、有名大学卒のエリートばかり。頭も良いし、性格も素直で優秀な社員であることには間違いない。しかし、彼らと十分なコミュニケーションが取れていない気がする。

日本だったら、仕事が終わると一緒に居酒屋で一杯!みたいなことをやって、部下の本音を聞くことができた。それと酒の勢いに任せて、言いにくいこともたくさん言ってきた。時にはキャバクラに連れて行って、羽目をはずして遊び、チームの結束を強めることができた。だから、いちいち口に出して言わなくても、仕事の進め方、考え方、気持ちを部下たちはよく理解してくれて、業務はとてもスムーズで業績もアップできた。

でも、こちらの中国人スタッフは時間になると、みんなサッサと帰ってしまい、飲みに誘っても、「今日は都合が悪いです」と何度か断られた。それからあまり誘わないほうがいいのかなと思っている。

そういえば、先週一緒に飲みにいった先輩が言っていた。「俺は中国に来て3年になる。でも、中国人スタッフとのコミュニケーションは難しいよ」。

なぜだろう?

職場にはアフリカ、ラテンアメリカ出身のスタッフもいるけれど、彼らとコミュニケーションを取ることが難しいことは、感覚でわかる。だから、仕事を進める上で、詳しく具体的に言わなければ理解してくれない。

中国人と日本人は同じような顔をしているし、同じような漢字を使い、同じ箸を使ってご飯を食べている。何よりも同じアジア人なんだから、思いは通じるはずだ、と思っている。

でも、もしかして、そうじゃないかもしれない。

日本人と中国人、似ているところもあるが、そうでないところの方が多いのかもしれない。却って「似ている」ということが落とし穴になって、理解しようという努力をおろそかにしてのかもしれない。

「全く違う価値観、道徳、習慣をもつ民族であることを意識する」というところから始めるのが良いかもしれない。日本のものさしや常識で中国人をはかることはできないだろう。

「中国人スタッフとのコミュニケーションは難しいのは当然であり、彼らに日本のように『以心伝心』を求めることは不可能だ」。そういうふうに考えると気持ちが楽になる。なぜ彼らは分かってくれないのか、なぜそんな行動をとるのか、なぜ私が思っているように動いてくれないのか、というストレスから少し解放されたような気がする。

まずは「以心伝心」をあきらめよう。

中国語はそんなに上手ではないけれど、思っていること、考えていることを口に出してはっきり言うことにしよう。どうしたら彼らに伝わるのか考えながら、伝わる話し方をする努力をしよう。これが中国人スタッフをマネージメントする駐在員の任務の第一歩だろう。

日本料理店や居酒屋で「中国人は分からないや」とくだをまいている駐在員を見かけるが、自分はそうはなりたくないと思う。

確かに中国人とコミュニケーションを取ることは難しい。だからこそ、日本にいる時より、もっと意識して伝える努力をしていきたい。そうしていくならば、いつか必ず分かり合える日が来ると信じる。

■筆者プロフィール:西村徹也

1961年大阪府生まれ。京都外国語大学中国語科卒、大阪市立大学中国語学文学専修前期博士課程修了。NPO法人日中交流支援協会で理事長を務め、東北師範大学人文学院で日本語教師として教鞭を執っていた。吉林省「優秀外国専家」を受賞した経歴を持つ。

■筆者プロフィール:西村 徹也

1961年大阪府生まれ。京都外国語大学中国語科卒、大阪市立大学中国語学文学専修前期博士課程修了。NPO法人日中交流支援協会で理事長を務め、東北師範大学人文学院で日本語教師として教鞭を執っていた。吉林省「優秀外国専家」を受賞した経歴を持つ。

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