中国、実体経済の危機を脱するために日本の企業がモデルケースに―中国メディア

人民網日本語版    2017年3月10日(金) 13時30分

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日本経済の強大さは、製造業大国という地位と密接な関係がある。しかし中国国内では、「日本の製造業は新経済時代においてすでに後退してしまった」との声がよく聞こえてくる。

日本経済の強大さは、製造業大国という地位と密接な関係がある。しかし中国国内では、「日本の製造業は新経済時代においてすでに後退してしまった」との声がよく聞こえてくる。確かに日本の一部の伝統的な製造業は衰退しているものの、製造業大国という地位は本当に過去のものになってしまったのだろうか?参考消息網が報じた。

サプライチェーンのスタイルが競争力低下の原因に

日本製造業のこれまでの成功には、以下のいくつかの原因がある。まず、外国の良いものを取り入れ自国の発展に役立てる姿勢を挙げることができる。日本は他の国の技術を会得するのが得意だ。次に、安定した制度がある。日本では長年革命がなく、維新と改良あるのみで、それにより制度の一貫性が保たれ、法律がきちんと実行されてきた。それは経済の分野でも反映されており、知的財産権が尊重されているため、勇気を持ってイノベーションを行う企業が発展している。3つ目に、米国のサポートがある。戦後、米国は市場や資金、技術などの面で、日本を大きくバックアップしてきた。また、日本は政治の面でも完全に米国に追随しているため、米国の背後で国際市場を獲得することもできた。最後に、中国よりも早くから市場経済に揉まれ、技術の開発やイノベーションを重視してきた。

しかし、ここ数十年は上記の要素に、日本にとってはマイナスとなる変化が生じたため、日本の企業は以前ほど順調ではなくなった。インフラの建設や鉄鋼業界、機械製造、造船、医薬・化学工業、電子製品・家電などの分野で、日本は競争力を失い始めた。その主な原因は、製造費が高く全体的な能力が高くないためで、今では国外のインフラ建設を日本の企業が落札し、請け負うことがほとんどなくなった。また、日本ブランドのパソコンやスマホもあまり見かけることはない。現在、日本が競争力を維持しているのは、自動車や材料などの分野だ。しかし、電気自動車が発展しはじめ、中国の猛追を受けているのを背景に、同2分野の優位性も日本は失ってしまう可能性がある。

東京経済大学の周牧之教授は、「日本の製造業に問題が起きている主な原因は、グローバル化するビジネススタイルへの対応が遅れ、急速なグローバル化の進展において二の足を踏んでいるため」と指摘する。

日本の企業は比較的封鎖されたサプライチェーン構築をずっと目指してきた。商品の開発から、原材料や部品の供給、組み立て、販売まで、長期にわたって同じ得意先と提携することで、効率の良いサプライチェーンを築くというのが、日本の製造業のメリットであったものの、それが日本の企業のグローバル化にとっては足かせとなってしまった。

▼向上に向上を重ねて「第六次産業」が形成

日本の製造業に存在する問題について、中国の杏林大学の劉迪教授は、「日本は第二次世界大戦後、国外の生産スタイルを採用し、1980年代にピークに達した。そして、90年代に入り、人件費や市場などの面で優位性がなくなり、そのスタイルは衰退した。しかし、日本は製造業の分野でその主導権を完全には失っていない。日本の企業の海外における産出量は日本本土の規模と同じだ」と指摘する。

また、「日本本土で主導的な立場の産業は、地域化や小型化、ブランド化、専門化、サービス化などの発展へと移行している。例えば、多くの地方の中小企業は、依然として品質の高い小型器具を生産しており、高齢化社会向けに的を絞った商品をたくさん打ち出している企業も多い。また、医療と製造業を結び合わせ、精密診療機器をたくさん生産している。日本の製造業は工業社会からポスト工業社会への移行を成功させた」のだ。

日本労働安全衛生総合研究所の呂健主幹研究員は、「日本は長年、製造業立国政策を実行しており、成功するか否かは、国際市場におけるシェアを奪取、または維持できるかにかかっている。大企業、例えば、自動車企業は数十年前から対策を講じている。例えば、北米や欧州、アジアに工場を設置し、現地の人を雇用し、コストを削減してきた。加えて日本の企業は、商品に対して向上に向上を重ね、現地の特徴に合わせた商品を打ち出すことで、国際市場におけるシェアを維持してきた。しかし、家電製品の分野では、日系企業は盲目的にハイテク、多機能を追求し、コストが上がったため、コストパフォーマンスという面では、顧客、特に海外の顧客に受け入れてもらえるとは限らなくなった」と指摘する。

日本の一部の中小企業は、高齢化が原因で従業員が減り、後継者がいなくなっている。しかし、周教授は、「その製造業全体に対する影響は少ない」との見方を示す。その仕事はどの世代の人でも好きなものであり、今の日本の若者も、デザイン性、個性のある分野を好むようになっているからだ。例えば、昨年、理工科を卒業した女性の人気就職先は、飲料、食品製造業界の企業が主だった。日本の企業はこの分野において、技術を急速に伸ばしている。例えば、ウィスキーや白ワイン、チョコレートなど、欧米がこれまで優位性を誇って来た分野で、日本企業が世界で好評を博するようになっている。

周教授は、「日本の飲料、食品製造業界はバリューチェーンを農業と飲食業界の両方へ伸ばすことを重視しているため、農業や農産品加工業、飲食業、販売業のつながりが強化され、第一次産業×第二次産業×第三次産業の『第六次産業』が形成されつつある」と強調する。

近年、中国人観光客が日本に押し寄せ、日本製品を爆買いしているのは、その製造業が移行を成功させた証である。

▼長い目で見ることが科学技術のイノベーションの後ろ盾に

周教授は、「日本の製造業には、どの時代にも代表的な業界がある。得意とするのは安定した研究開発への資金投入と継続的な技術のイノベーション。これが日本社会の安定につながり、個人、チーム、企業が研究開発に没頭することができるようになっている。日本の企業は、長期投資や長期にわたって提携するパートナーを重視し、対応能力に欠け、グローバル化されたビジネススタイルという面では後れを取っているものの、安定したイノベーション環境を作り出し、企業の商品やその分野における移行を推進し、新たな産業で成功する老舗が多く登場している」と分析する。

周教授は、「日本に比べて、中国社会は変化が速く、ルールの変化も速いため、長期予測が難しく、そのことが、企業が短期的な利益やビジネススタイルのイノベーションを重視する一方、コンテンツのイノベーションの原動力が不足する原因となっている。その他、中国の企業は、利益率の低い、成熟していない産業に大規模な投資を実施しており、環境が犠牲になってしまうという問題が深刻化している」と指摘する。

そして、「バーチャル経済の中国社会に対する打撃も重視されるべき。例えば、インターネット経済を過度に強調すると、実体経済に大きな打撃となる。そのような状況は日本では起きていない。なぜなら、インターネット経済も、現有の経済秩序をベースに秩序立って発展すべきだからだ。安定した社会発展は、歩幅はせまいかもしれないが、確実で長続きする」と強調する。

呂氏も、「短期間で高い利益を得られる金融と不動産の中国の製造業に対する打撃は強く、必ず注意が必要」と警鐘を鳴らす。

専門家は、中国の実体経済が直面している問題を乗り越えるには、法治と実体経済がカギと指摘する。前者に関して、政府は知的財産権の保護と市場競争の秩序保護を必ず行わなければならない。後者に関しても、製造業であっても、サービス業であっても、商品やサービスの細かい所にまで気を配り、誠実に顧客に対応しなければならない。(提供/人民網日本語版・編集/KN)

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