Record China 2008年4月21日(月) 9時29分
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五輪テスト大会「黄金週間」の週末…国家水泳センター(愛称:水立方)でシンクロナイズド・スイミングの五輪最終予選が行われた。
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■■■■■2008年04月18日■■■■■
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シンクロ五輪最終予選、中国ペアの勢い感じる
五輪テスト大会「黄金週間」の週末…午前中の競歩、フェンシングに続いて、昼3時からは国家水泳センター(愛称:水立方)でシンクロナイズド・スイミングの五輪最終予選が行われた。
18日はデュエットの2日目、フリールーチンが行われた。
1位のスペインを追いかける日本の原田・鈴木組ももちろん興味深いが、私が見たいのは何と言っても、中国の蒋文文・蒋テイテイ組。前回のテクニカルルーチンで、タイムオーバーの減点1のため、日本についで3位となったが、井村雅代ヘッドコーチの教えを受けて、彼女らがどれだけ成長したか…そして中国が目標に掲げる『メダル獲得』にどれだけ近づいたか…また彼女らを見守る中国の観客の反応はどうなのか…興味は尽きることがない。
その蒋文文・蒋テイテイ組は7番目に登場した。それとともに、水立方全体がうなりを上げたような大歓声がプール全体に響いた。観客の後押しを受けて、二人は伸び伸びと演技をした。
得点はその演技は、今の彼女らそのままの勢いのあるものだった。その後に登場したスペインほどの繊細さはないし、動きにまだ荒さがある。けれども、これまで練習を重ねてきたものを中国の観客の前で精一杯披露しようという思いにあふれる演技だった。周りの雰囲気に惑わされたというわけではない。確かに、日本やスペインのほうが「うまい」と思うが、蒋文文・蒋テイテイ組は持ち前の高さを生かして、ダイナミックに勢いのある演技を披露した。
そして、結果も彼女達にしっかりついてきた。前回のテクニカルルーチンと合わせて、計96.083。日本の原田・鈴木組を上回り(計96.001点)で見事、2位に輝いた。世界最強のロシアが不在とはいえ、2位は立派な成績。ロシアがいたとしても、メダルに手が届く位置だ。日本にとってみれば、「恐れていたことが起きた」という感じだろう。
二人は試合後、数多く集まった報道陣を前に「練習してきたことを発揮できた」と満足そうな表情で語った。彼女らを指導する井村雅代ヘッドコーチも「まだうまくはないが、少しずつ成果が見えてきている。この大会をステップにさらに練習に励んでくれれば」と振り返った。彼女達はまだ世界で勝った経験を持たない。だが、その『マイナス』は会場を満員に埋める観客の大声援が補う…そんな五輪本大会での風景が目に浮かんでくるような気がする。
絶好の『メダル環境』に置かれた中国ペア
彼女たちは非常に幸運な選手たちだと思う。中国は長年、シンクロに関しては、6,7位前後を行ったり来たりという成績だった。日本ならともかく、『メダルは当然。金メダルでなければ意味なし』という、ある意味層の厚い中国スポーツ界において、『不毛』な種目の一つであった。だが、世界一の指導者の一人、井村雅代という人を迎えて、本気でメダル獲得のために強化を始めたのが今大会。これまでのやり方を根本的に変える世界に通用する指導を彼女達は受けることができた。
また彼女達は「心地よいプレッシャー」を受けられる立場にいるといえよう。初めてのホームで開かれる北京五輪で、いわゆる“メダル有望競技”の選手たちにかかるプレッシャーは非常に大きい。最近、トップ選手の中で、様々なバッシングや不祥事が起きるのは、その重すぎるプレッシャーのせいだとも言われている。
一方、彼女達は違う。金メダル確実、といわれる競技では決してない。だが、その一方で、前回のメルボルン世界選手権、そして今回の五輪と、彼女達がメダルに向けて、一歩一歩、近づいていることは世界のシンクロ関係者、メディア、観客の誰もが感じているといえる。その「進化の真最中」の雰囲気をヒシヒシと感じさせるのである。
メダルを絶対…ではないが、メダルに近づいている。そして、もはや下はなく、『上を向いて行くだけ』。その進化の過程を長い行列を作ってチケットを買い求めた観客の皆さんが温かく見守る、そんな環境の中で、演技が出来る彼女達は非常にラッキーといえよう。
蒋文文・蒋テイテイの二人は、師・井村雅代について「かつて出会ったことのないほど厳しいコーチ」と形容する。一方、井村コーチは彼女達について「どれだけ厳しくしても、ついて来る子たち」と表現する。そこにはすでに国籍を超えた強い信頼関係が見えてくる。
すでに五輪出場を決めており、あくまでオープン参加の二人だが、とてもじゃないが、『オープン』な気持ちではいられなかったはず。本大会でのメダルという目標のためには、今から審査員に「新しい中国シンクロ」を見せておかなくてはならないのである。
―今日の演技を振り返ってどう?
「いつもの力が出せたと思う。」
―テクニカルルーチンではタイムオーバーの減点があったが、それは意識したか?
「その辺は日ごろから注意していたが、今日は特に気をつけた。」
―試合後、井村コーチは何か言った?
「コーチは“とてもよかった”といってくれた。」
―今後の五輪に向けてしなければいけないことは?
「世界との差をしっかりと感じること。帰ってからまた練習を重ねたい。」
―多くの観客がきてくれたが…
「すごく興奮した。こんなに多くの人たち、みんなが私達の家族同然だから」
―自分達のテクニック面については?
「以前に比べて、大分良くなったと思うが、まだまだ改善すべきところはたくさんある。オリンピック前に、もっと良くしていきたい」
―それはどうやって向上させた?
「専門のダンスの先生から、みっちりとレッスンを受けたことの効果だと思う。」
―体重を増やすことが課題と聞いたが、今はどうか?
「多少増えたと思う。私たちには力強さが必要だと思う。」
―井村ヘッドコーチについては?
「彼女はすごく厳しいが、親身になってくれる。」
―井村コーチは中国語を話せる?
「たくさん話す」
―他に何か言われたことは?
「オリンピックが終わった後、一緒に日本に行こうって言われた(笑)」
―井村さんは、あなたたちの故郷(四川省)に行ったことがある?
「一度、来たことがある。コーチは辛いものがあまり好きではなかったようだけど」
―ライバルは?
「大切なのは自分。自分の出せる力をしっかり表現することが大事だと思う」
―今日は会場に家族は見にきてる?
「来てない。チケットが手に入らなかったから。でもオリンピックのときは是非、会場で見て欲しいと思う」
■2008年04月19日■
日本シンクロが五輪出場決定!メダルへは道のり険し
北京で行われているシンクロナイズド・スイミングの五輪最終予選は19日、チームのフリールーチンが行われ、日本は技術点が伸びず、トータル96.501点で2位に終わった。トップはスペインで計97.834点。その差は1.333で、ライバル・スペインに対し、思わぬ大差がつく結果となった。3位はカナダで95.334点。ただ3位以内に与えられる五輪出場権は獲得。日本は4大会連続の五輪出場を果たした。
試合後の金子シンクロ委員長に笑顔はなかった。4度目の五輪出場ながら、「世界に日本の強さを見せたい」という今大会の目標は「失敗に終わりました(同委員長)」と認めざるを得ない“敗戦”だった。
その原因について、同氏は「経験と準備不足」を挙げた。
「これまでと同じことをやっていては世界に勝てない」…打倒ロシア、スペインを掲げる日本にとって、“安全な”技を繰り出してみても、最強ロシアには勝てない。そう考えた日本は、敢えて難しい技に挑戦した。だが、優勝したスペインがかなり長い間準備期間を重ねてきた演技を披露したのに対し、日本はまだ「発展途上」。しかも、国際大会が1年ぶりという久々の大舞台となったため、各選手の経験不足もあった。
日本シンクロチームの猛烈な練習量は有名だ。だが、その練習量が必ずしも試合に結びつくわけではないことが分かった…皮肉なことだが、それが今大会の収穫と言えるかもしれない。
「この失敗がいい薬になってくれれば」と金子委員長は言う。まだまだ進化の最中の日本シンクロ。だが、その後ろからは、井村ヘッドコーチ率いる中国代表が虎視眈々とメダルを狙って、強化を続けている。メダルは当然、問題はその“色”だった日本代表だが、そのメダルさえも安全パイではなくなってきている。
<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>
■筆者プロフィール:朝倉浩之
奈良県出身。同志社大学卒業後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中国国際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。
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