<直言!日本と世界の未来>新産業の出現と戦略的アライアンス―M&Aの成否がカギ

立石信雄    2017年6月24日(土) 10時10分

拡大

昨今の企業に求められる経営改革課題の一つとして、いかにして戦略的にアライアンス(提携)を行うかということがある。

ご承知の通り、今資本市場のみならず、労働市場、技術市場、情報市場がクローバルに進展しつつあり、これまでのように何もかも自社内で調達するフルバッケージ型の経営から、ヒト・モノ・カネ・技術・情報といった経営資源を世界市場の中から最も有利なものを調達し、効率の良い経営を目指していく時代に入っている。

 

企業そのものの拠点さえも世界規模で最適地を選択し、世界的な業務提携、合弁契約、M&A(合併・買収)などの戦略的アライアンスによって、短期間で一足飛びに新分野への展開を切り開く経営戦略も顕著になりつつある。

 

言い換えれば、今や事業あるいは企業自体も一つの「商品」として戦略的に離合集散を進めることも視野に入れて、新時代に向けて新たな構造改革を進めるべき時にきていると言える。

 

また、戦略的アライアンスが重要になってきているもう一つの背景には、今大変大きな産業構造の変化が起こっているという事実がある。その産業構造の変化に合わせて、どう対応していくかということを考えていかないと企業の存続は難しい時代である。

 

これまでの産業は、鉄鋼、非鉄金属、窯業、機械、精密機械、電子・電機など、物理的に作り出すモノの種類によって、様々な業種に分かれていた。しかし、今変わりつつある新しい産業というものは、物理的な意味での分類から、対象とする市場、つまりマーケットにいかに貢献できるかといった切り口での産業の分類が進みつつある。

 

例えば、AI(人工知能)産業、ロボット産業、シルバー産業、ヘルスケア産業、環境産業(エコビジネス)、快適空間創造産業、リサイクル(資源循環型)産業、癒し産業―といった従来とは全く異なった産業の型が生まれてきている。

ちなみに環境省によると、環境産業(エコビジネス)の市場規模は、2014年に約105兆円4133億円(前年比約1.3%増)となり、過去最大となった。2000年との比較では市場規模は1.8倍となった。全産業に占める環境産業の市場規模の割合は、2000年の6.2%から2014年の11.1%まで増加し、環境産業が我が国の経済に与える影響は大きくなるばかりだ。

環境産業の雇用規模は、2014年に約256万人(前年比1.6%増)となり、過去最大となりった。2000年との比較では約1.4倍となった。

 

このような新しい産業の型あるいはタイプが形成されていく中で、従来の産業の業種間の融合、ソフトとハードの融合、そして共同で付加価値を生みだすための仕組み、アライアンスやアウトソーシングが重要な要素として出てくると考えている。

 

企業がそれぞれの最も強いコア・コンビタンスに経営資源を集中することで、他社に任せるべき機能は他社に任せ、アライアンスやによって最も効率の高い企業同士が、お互いに補完し合うことで、競争力を高めていくことが必要である。そして、これは企業規模の大小を問わず挑戦できる分野である。

立石信雄(たていし・のぶお) 1936年大阪府生まれ。1959年同志社大学卒業後、立石電機販売に入社。1962年米国コロンビア大学大学院に留学。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員会委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長、財務省・財政制度等審議会委員等歴任。

北京大学日本研究センター顧問、南開大学(天津)顧問教授、中山大学広州)華南大学日本研究所顧問、上海交通大学顧問教授、復旦大学顧問教授。中国の20以上の国家重点大学で講演している。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携