<コラム>私の韓国の友は「おまえは日本人のようだなあ」とよく言われていた

木口 政樹    2017年7月22日(土) 12時30分

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先日、久しぶりに釜山に住む友、キムさんに会った。あだ名は釜山サムライ。彼が自分でつけたあだ名である。彼はわたしと同い年で根っからの日本ファンである。写真は釜山。

先日、久しぶりに釜山(プサン)に住む友、キムさんに会った。あだ名は釜山サムライ。彼が自分でつけたあだ名である。彼は私と同い年で根っからの日本ファンである。

彼の父親は北朝鮮からの避難民。ユギオ(朝鮮戦争)の時に命からがら北から逃れて釜山に住みゼロからの出発をした人である。父親は体も大きく子どもの頃に柔道を習い始め、韓国でも柔道界では結構名の知れた人物だったという。

当時は日本の植民地時代であったため柔道の先生は日本人であった。柔道の技術だけではなく、礼儀作法や生活の隅々まで、日本人から教わったことは計り知れないという。

そうした父親の意識が無言のうちに釜山サムライさんに伝染していたのかもしれない。父親の同僚や柔道界のお偉方がちょくちょく彼の家に来ていたのだが、彼の家を訪ねてくる大人たちが彼を見て、「おまえは日本人のようだなあ」という言葉をよく発していたそうだ。

わが友釜山サムライ氏は、その言葉の意味について小学生の頃から疑問に思っていた。父親は厳しい人だったため、簡単に「父ちゃん、おれのこと日本人みたいだって言う大人たちがたくさんいるんだけど、それって、どういう意味なの?」と聞くことはできなかった。

大学生になって酒を飲み交わすようになって初めて、父親に聞いてみたという。父の答えるには、「それはな、息子よ。大人の人と会ったらすぐにあいさつをする。靴はそろえて脱ぐ。そういった生活の一つ一つが礼儀正しいのを見て言った言葉なんだよ。父ちゃんもおまえのことは同じように見ていたんだ。上の兄2人とは確実に違っていたもんな」とのこと。

そのとき初めて「日本人みたいだね」という言葉が、いい意味であったことを知ったそうだ。韓国では、一般的には「日本人みたいだ」という言葉はいい意味では使われない。けちだとかセコイとか血も涙もないといったイメージが一般的な日本人に対するイメージだ(清潔できれい、こぢんまりとしていて無駄遣いしない、親切といったプラスイメージもあるにはあるけれど)。

そういう点でも、わが友釜山サムライ氏はちょっと変わっていると言っていいかもしれない。子どもの頃からの彼のお気に入りは、サムライ映画や忠臣蔵、そして神風映画などであった。「天皇陛下ばんざーい」と言いながら死んでゆく特攻隊の映画などを、心から感動して見ていたという。

日本人である筆者でもそんな映画は見たことがないが、小学生の頃からそうした映画に親しんできているのだ。主君のために命を懸けて戦ったり、責任を取る時には腹切りをして果てたりというあたりが、彼の最も気に入っている日本文化なのだ。

そうした精神は、「忠」という言葉で言い表せる概念であろう。日本文化は基本的にこの忠の文化であると言えるだろう(最近はそうでもないみたいだが)。こういう忠の話になると、彼はがぜん声に力が入る。酒を酌み交わしながら近くの公園のベンチで、夜中の1時、2時までしゃべりまくった。

お巡りさんが2人近づいてくると、「すいません。近くの住民の方からうるさくて寝られませんという連絡が入りまして」ということだった。公園を取り囲むようにアパートが並んでいるのに、その時初めて気が付いた。「ああ、そうですか。すぐ静かにしますから」と言うと、2人のお巡りさんは去っていった。

時計を見ると2時15分を指していた。何年ぶりかで「青春」をやってしまったねえ。2人で高らかに笑い声を張り上げて、ベンチを後にした。韓国にはこのような日本ファンもいるということを、読者の方々にはぜひお知りおき願いたいと思う。

■筆者プロフィール:木口政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年〜現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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