小坂 剛 2017年12月17日(日) 14時30分
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中国でも、ペットとともに街を歩く人たちをよく見る。10年前の中国ではとても考えられなかったことだ。しかし、その一方で、まだまだ小動物の生活は難しいようだ。写真は中国のイヌの散歩を禁止する貼り紙。
中国でも、ペットとともに街を歩く人たちをよく見る。10年前の中国ではとても考えられなかったことだ。街のいたるところにペットショップがあり、動物病院も専門医からチェーン店化したものまで、たくさん見かける。しかしその一方で、まだまだ小動物の生活は難しいようだ。中国に来る予定の、または滞在されている方で、イヌを飼ってみようと思う方の参考にでもなればと思う。
先日、筆者は日曜日の朝に上海・バンド(外灘)の対岸にある浜海公園にでかけた。日ごろは朝ともなれば多くの愛犬家がイヌを散歩させている姿を見かけるのだが、この日は、イヌよりもガードマンが多かった。ガードマンはイヌを連れて歩く人に声をかける。「この公園はイヌを連れて歩いてはいけません」とのこと。ガードマンにそんなルールがいつからできたのか尋ねると「11月27日から。イヌが嫌いだという人から苦情が来たために、この規則が作られた」のだという。
実際、イヌが散歩を楽しめない公園は多い。筆者が生活する南京西路付近にも多くの公園があるが、ほとんどの公園にはイヌを連れて入ることはできない。入り口に立つガードマンに止められてしまうのだ。その理由は、イヌを繋げて歩かない人が多いこと、排せつ物を片付けないことなど、多くあろうが、この意味でも小動物への配慮はまだ発達しているとはいえない。
そういった意味で、意外と困るのが、イヌを移動させる時だ。たとえば、イヌを病院に連れて行くとする。公共交通手段を使おうとするのだが、たとえペット用のバッグを用いても地下鉄は絶対にダメ。バスもダメ。自家用車を所有していない以上、必然的にタクシーに乗るしかないが、タクシーの運転手も人によってはダメ。最悪、自転車での移動になる。
そもそも、イヌを飼うことには厳密には大きな制約がある。原則的には、政府認定の動物病院(上海であれば申普籠物病院)に連れて行き、狂犬病のワクチンとマイクロチップを注射し、地域の警察署にその証明を提出し、200元を払って「狗証」というものを発行してもらう。そして、発行されるまでに途方のない時間待たされる(筆者は半年前に申請してまだ連絡が来ない)。そして、この証明書がないと、年間に何度か行われる「犬狩り」にあった場合、捕獲され殺処分されてしまう。
動物を虐待する事件も少なくない。以前のニュースで、ペットとして飼われているネコを盗み、食肉店に販売していた男の話を見たことがあるし、野良犬などを含めたイヌを犬肉として売る広西省の玉林狗肉祭もなお行われている。
さらに、友人はネット上で、イヌを販売する業者を見つけ、私もその業者の店に行ったのだが、そこは多くのイヌがケージに入れられて販売されているという場所。ネット上の明るいかわいい販売所とはかけ離れたものだった。そして、友人が買ったイヌは、獣医師のミスも含め、1週間もしないうちにジステンパーを患った。後遺症を残したものの、幸い完治したが、販売者も、繁殖犬の酷使が激しいという話もあるし、獣医についても、信頼できる獣医とそうでない獣医の判断が難しい。
筆者の愛犬は、もともと野良犬だった。以前は飼われていた形跡があるが、左目に白内障を患い、その手術をすることなく捨てられたようだ。そして、今では右目も失ってしまった。中国でも、このように野良犬が多く、欧米人や香港、台湾出身者を中心に捨て犬・野良犬を保護し、里親を探す団体は多くあり、筆者もそこから預かった次第。
右目が緑内障になってしまったため、動物病院でお世話になり、手術を受けたところ、日本の1.5倍の額を請求された。その経緯を知る愛護団体の方が、クラウドファンディングで医療費を集めてくださったが、非常にありがたいことに3日もしないうちに、想定額が集まった。良心的かつ、小動物を大切にするという観点を持っていない人が少ないわけではない。しかし、イヌやネコを飼うにはまだまだ不自由な環境であるといえるだろう。
■筆者プロフィール:小坂剛
1978年生まれ。東京大学大学院博士課程満期修了。専門は中国民間信仰と社会変動。子どものころから中国の歴史に興味を持ち、大学院まで専攻は中国地域文化研究。大学院修了後は高校社会科教師として勤務。上海に新設校が開校された際、上海に移り、現在はインターナショナルスクールにて様々な国の子どもたちに接し海外の教育を学びながら、文化交流活動などをプロデュースしている。趣味は陳氏太極拳。
■筆者プロフィール:小坂 剛
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