<コラム>中国の元教え子からお祝いのメッセージ、驚き、そして苦笑した

浦上 早苗    2017年9月18日(月) 14時10分

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先週の日曜日、何人かの元教え子たちから「教師の日、おめでとうございます」とメッセージを受け取った。もう教師でなくなって1年以上経つので、彼ら、彼女たちの律義さに驚きながら返信をした。写真は筆者が教師時代に学生から渡された誕生日カード。

先週の日曜日、何人かの元教え子たちから「教師の日、おめでとうございます」とメッセージを受け取った。もう教師でなくなって1年以上経つので、彼ら、彼女たちの律義さに驚きながら返信をした。

中国で9月10日は「教師の日」だ。2010年9月初旬、留学生という身分で中国に渡った私は、その年の9月10日に何も知らずに教授の部屋を訪ね、研究室が蘭の花と香りでいっぱいになっている光景に圧倒された。何のお祝い事かと聞くと、「教師の日だから学生にもらった」と返され、手ぶらで訪ねた私は、バツ悪く「日本にはそのような習慣がなかったので…来年は必ず」と言うのが精いっぱいだった。

教授の部屋を退室し、今度は地元の幼稚園に通う息子のことを思い出した。急いで子どもを持つ中国人の友人に連絡すると、「うちはデパートのギフトカードをプレゼントした」と教えられ、まだ中身をちゃんと片付けていないトランクケースから未開封の化粧品を全て取り出した。息子もその頃は中国語を全く分からず、「普段接触している先生は3人いる」と言うので、とりあえず自分用にと持ってきた化粧品を3つの袋に入れ、1日遅れのプレゼントとして息子に持たせたのだった。

それから徐々に、私は中国の「教師と生徒」の関係を学んでいった。息子の幼稚園の保護者会に行くと、職員が「私たちの学校は、親に贈り物を求めません」と言う。ってことは、普通の学校はそういう習慣があるということか?

中国は小学校から大学に至るまで、クラス替えという習慣がなく、担任もずっと持ち上がる。つまり、教師との関係が悪化すると、成績や学校生活のあらゆることに影響が生じ、それが理由で引っ越す家庭もある。元々贈答文化、悪く言えばわいろ文化が根付いている中国で、生徒側から教師への付け届けは、良好な関係を維持するために避けられない習慣になっているのだろう。

中国人ママたちによると、この教師の日のプレゼント問題も、子供の年齢が上がるにつれ軽くなっていき、中学校、高校ではクラス単位でのプレゼントが主流となる。また、最近では高級なプレゼントのやり取りも減り、子どもが自分で買ったバラの花を1本渡すこともある。

立場替わって教師側からすれば、これは一種の人気投票に近い。私も途中で留学生から教師に立場が変わり、この日は一人では持って帰れないほどのプレゼントをもらうようになった。私の職場では1つももらわない教師はいなかったが、数や内容には当然差が出る。担当しているクラス一同から小物を受け取った女性教師はネットで値段を調べ、私に「こんな安物しか受け取れない私は、やはり人望がないのでしょうか」と愚痴を言いながら泣き出してしまった。中国人のメンツはなかなか厄介なのだ。

実は教師の日の数日後は私の誕生日で、この日も元教え子たちからお祝いメッセージが届いた。驚きながら「よく覚えてるね」と打ち返したら、ある学生がこう返事した。「学生の義務ですから」。苦笑するしかなかった。

■筆者プロフィール:浦上早苗

大卒後、地方新聞社に12年半勤務。国費留学生として中国・大連に留学し、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のメディア・ニュース翻訳に従事。日本人役としての映画出演やマナー講師の経験も持つ。

■筆者プロフィール:浦上 早苗

1974年生まれ、福岡市出身。早稲田大学政治経済学部卒業、九州大学大学院経済学府修了。大卒後、地方新聞社に12年半勤務。その後息子を連れ、国費留学生として大連に博士課程留学…するも、修了の見通しが立たず、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のニュース翻訳に従事。頼まれて映画に日本人役として出たり、マナー講師をしてみたり、中国人社会の中で、「日本人ならできるだろ」という無茶な依頼に、怒ったりあきれたりしながら付き合っています。マスコミ業界の片隅に身を置いている経験から、日米中のマスから見た中国社会と、私の小さな目から見たそれの違いを少しでもお伝えできれば幸いです。

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