<直言!日本と世界の未来>女性の社会進出が遅れている日本=「人的資本指数」ランキング急落に衝撃―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2017年10月1日(日) 5時0分

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9月半ばに発表された2017年「人的資本指数」を読んでショックを受けた。世界の各国がどれだけ健康で教養のある人材を育成して維持できるかを示すランキングで、日本は調査対象130カ国のうち17位に急落してしまった。

9月半ばに発表された国際比較統計を読んで、大きなショックを受けた。スイスに本部がある著名シンクタンク「世界経済フォーラム」が発表した2017年「人的資本指数」である。世界の各国がどれだけ健康で教養のある人材を育成して維持できるかを示すランキング。日本は調査対象130カ国のうち17位で、前年の4位から急落してしまった。今年から指数の算出方法が変わり、雇用における男女格差の比重が上昇。女性の社会進出が遅れている日本に不利となったというが、何とも残念なことである。

今回のランキングによると、「雇用の男女格差」を年齢別に見ると、日本は15〜24歳に限れば世界で最も平等だが、25〜54歳では69位。これはよく言われている、結婚で離職し、子育てを終えて再び仕事に就く、いわゆる「U字型カーブ」が影響していると思われる。それ以上の年齢枠でも50位以下に低迷しており、高齢化が進む日本は順位が大幅に低下したという。

世界ランキングのトップはノルウェーで、フィンランド、スイスが続いている。上位10カ国は4位の米国と7位のニュージーランドを除き、8カ国を欧州勢が占めた。アジア太平洋ではシンガポールが11位、オーストラリアが20位となった。

日本では「働き方改革」が官民主導で叫ばれ、関連のニュースをメディアで見ない日はないほどである。安倍政権は最重要テーマと位置づけ、2017年3月には「働き方改革実行計画」を決定した。多くの企業も、今、「働き方改革」に注力。定時退社やノー残業デ−、テレワーク実施など働き方改革に関する取り組みが実施されている。

一方で課題も山積しているといわれる。新たに導入される残業上限規制の結果、事業に支障が出ると回答した企業が約4割に上っているという。残業時間削減といっても業務が減らないため実際は持ち帰り残業が発生していたり、会社からは「残業するな、売り上げも落とすな」と命じられたりするケースも多いと聞く。しかし日本企業の事務職、間接部門の効率(生産性)は海外企業と比較して低いだけに、思い切った業務の見直しや改革を進めることが必要であろう。

いわゆる共働きの夫婦の場合、実際には妻の側に負担が偏っているのが実態だ。家庭での男女の家事や育児負担の状況を見ると、女性の活躍をさらに推進するためには、社員の家庭での責任に配慮した制度の導入などが必要であろう。

女性の活躍促進の背景には、とかく将来懸念される労働力不足が真っ先に挙げられがちだが、むしろ、グローバリゼーションやIT(情報技術)革命など、企業を取り巻く環境が大きく変化している中で、従来の男性に偏った価値観を是正し、男性も女性もバランスよく交じり合った多様な労働形態の創出が望まれる。わが国では人口の減少が続く中、「1億総活躍社会」に向け、子育てと社会進出が両立するよう官民のさらなる取り組みを望みたい。

<直言篇22>

立石信雄(たていし・しのぶお)

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC=企業市民協議会)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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