木口 政樹 2017年9月29日(金) 20時20分
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韓国は、2017年9月30日から10月9日までの10日間、秋夕の連休となる。秋夕とは日本のお盆とは違うが、お盆のような行事である。写真は韓国の若者。
韓国は、2017年9月30日から10月9日までの10日間、秋夕(チュソク)の連休となる。秋夕とは日本のお盆とは違うが、お盆のような行事である。国を挙げての行事となり、こういう行事をこちらでは「名節」と言っている。お正月と今回の秋夕が韓国を代表する名節だ。
こちらに来た頃、お正月も大きい行事だし秋夕もかなり大きい行事なので、どっちが一番大きい行事なのかなと考えたこともある。韓国人に聞いてもはっきりとどっちが大きいよとは答えてくれない。しかしある時ふと急に分かってしまった。お正月は初日の出を拝むことなどにみられるようにお日様と関係があり、秋夕はお月様と関係がある。太陽と月。ゆえに、お正月の方が第一番の名節なのだ、と。
お正月は日本のお正月とだいたいにおいて同じと言ってもいいだろう。旧暦の1月1日にやるということを除いては。親戚の人が集まって、トックク(お雑煮に相当)を食べ、お年玉をあげたりもらったりして親戚、一族の結束を誓う。
秋夕は、お盆のようなものと先に書いたが、旧暦の8月15日が秋夕その日だ。普通の年はその前後1日ずつが休みとなるのだが、今年は代替休日やハングルラル(ハングル記念日)などが連続することになり10連休となったわけだ。
日本ではこの日は中秋の名月の日だ。お月様が一年中で一番大きくきれいになる日だ。秋の収穫時でもあり、本来は収穫を天に感謝し供え物をした民俗的な伝統の日である。西洋ならサンクスギビングデー(感謝祭)に当たる日といえよう。
だいぶ昔のことになるが、秋夕が終わって初めての会話の授業で、「さて、では今日は先週の秋夕について話し合おうか」ということにした。親戚が集まっていとこたちとも久しぶりのおしゃべりを楽しみ、ゲームをしたりしてるはずだから、さぞ会話も弾むだろうと考えたわけである。
ところが意に反し、学生たちの表情は実にさえないのである。表情から察するところでは、こんな主題で会話させないでくれよと言っているのである。
「どうしたんだい、君たち。秋夕はさぞ楽しかったんじゃないのかい?おじさん、おばさんに会って、いとこたちにも会って、花札したりゲームしたりしたんだろ?」と聞いてみた。
学生らの言うには、「ずっと部屋でごそごそやってました」「バイトしてました」「親戚のおじさんから成績のことでがみがみ言われました」「就職はもう決まったのか?と聞かれてつらかった」などなど。
答えはいろいろだが、秋夕の家族・親族一同のだんらん風景とは裏腹に、影の部分が実は相当色濃く占めていたのである。昨年の「名節症候群」のコラム(2016年9月20日配信)でお届けしたように、主婦の方々はさらにひどい。秋夕やお正月が終わった時の離婚率が30%近くも普段よりアップするというデータもあるようだ。こういうお母さん方の影響などもあって、子どもたちもいつの間にか「名節はちょっとなあ」という意識が生じてしまうのかもしれない。幼稚園、小学生の頃までは楽しかったけれど、中学、高校あたりからだんだんおっくうになってきたという学生が大部分だ。男子も女子もだいたい同じ。
人々のマイナスエナジーがこれだけ大きくても、今年も変わりなく秋夕はやってくる。年年歳歳継続される行事であるが、時代が変わっているなか、こういう行事もなんらかの変化が必要な時期にきているのかもしれない。
変化の一つに、この時期、親戚の家に行かず海外旅行に出向く家族が多くなった。今年もソウルの仁川(インチョン)空港や金浦(キンポ)空港は、猛烈なラッシュが予想されている。こうした変化は誰が決めるというものではなく自然に起こってくるものだ。ある意味歓迎されるべき現象だと思う。
今年の秋夕は10連休を利用して私も日本のわが故郷へ一時帰国する予定だが、人並みでごった返す仁川空港で、その人の波をかき分けて出国手続きをすることになるだろう。時代の変化を肌で体験する貴重な断面であるのだから、あまり不平は言わず早めに空港に着くようにしようと考えている。
■筆者プロフィール:木口政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年〜現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。
■筆者プロフィール:木口 政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。 著書はこちら(amazon)Twitterはこちら※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。
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