<直言!日本と世界の未来>アベノミクス、さらなる成長戦略を=グローバル化と日本の課題、総選挙に寄せて―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2017年10月15日(日) 9時40分

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「グローバル化と我が国の課題」について触れてみたい。広くグローバルに展開している企業の活動が、より効率的になるのは言うまでもない。すなわち、グローバルに展開する企業活動の応援団として支えてくれるのが政治の強さである。

先に本欄で「グローバル化と日本企業の課題」について所見を述べさせていただいた。今回は、「グローバル化と我が国の課題」について触れてみたい。

 

経済と政治はまさに車の両輪である。強いリーダーシップのある政治があってこそ、グローバルに展開している企業の活動が、より効率的になるのは言うまでもない。すなわち、グローバルに展開する企業活動の応援団として支えてくれるのが政治の強さである。

 

日本の経済と企業は、今なお大きな困難にさらされている。国際通貨基金(IMF)が発表した2017年世界経済見通しによると、日本の実質国内総生産(GDP)の成長率見通しは1.5%。世界全体の成長率見通しは3.6%で、米国が2.2%、ユーロ圏が2.1%。日本は先進国で最も低い水準にとどまっている。しかも日本のGDPは18年には0.7%に減速するというから深刻だ。

もちろんこれも、少子高齢化、人口減少といった構造問題が背景にあるので、致し方ない、という言い方もできる。しかし、日本がバブルに浮かれていた時代に、世界で起きていた大きな変革を見過ごしてしまった結果が、今の日本の状況を作り出したといっても過言でなかろう。

 

すなわち、冷戦の終焉で、新しく社会主義国がどっと世界市場に参加してきたことや、競争上の優位を求めて各国が思いきった規制緩和、行財政改革に努力し、透明性のある開かれた、しかも小さな政府作りに成功したこと、市場原理で進む競争市場や経済構造で国の活力を作り出し、流動性の高い労働市場を生み出し、ベンチャー企業をどんどん生み出す風土を作り、しかも、羨ましいのは、変化には痛みを伴うことを説き、国民に意識改革を納得させる政治のリーダーシップが多くの国に生まれたことである。

 

政府の経済政策の選択のまずさやタイミングを逸した施策の結果、財政改革を凍結してまでも余分な金を使わざるを得ない状況を生み出してしまったが、日本再生のための残された改革を、ただ単に掛け声だけでなく早急にやり遂げるために、過去の栄華や甘えから脱しきれない国民の意識改革を一大キャンペーンでやり遂げる政治の強いリーダーシップが今ほど求められる時はない。安倍政権が主導する「アベノミクス」はその表れと期待し、世界も注視している。

しかし、異次元緩和に象徴される金融政策に偏重し、経済の効率を上げGDPをかさ上げする成長戦略に乏しいのは、残念なことである。

 

それができてこそ、再び、政治と企業が行う経済活動が両輪として機能し、囗本の強さを世界に打ち出し得る。

目下衆院選まっただ中である。各種世論調査では、自民・公明の与党勢力が過半数を制すだろうとの予想が大勢だ。米欧中国の景気回復など外需要因で日本の株価が上昇し、デフレ脱却の可能性が出てきたことや、北朝鮮の核ミサイル開発なども、安定を求める有権者の気持ちの背景になっているのではなかろうか。注目された希望の党が「劇場型の政治」を展開し過ぎて失速気味なのも影響しているのだろう。またメディアの側にも一言。テレビの党首討論会で、中立であるべき司会者にやや冷静さを欠くケースが散見されるのは残念である。

 

すべての政治家が、「党利党略」を離れて、世界に目を向け、その動きを自らの目で認識し、それとの対比で日本の抱える問題を感じとり、唯一、国益のみを考えて行動することが必要だ。有権者も熟慮し、中長期的な視点で投票すべきであろう。

<直言篇24>

立石信雄(たていし・のぶお)

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC=企業市民協議会)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人・藤原歌劇団・日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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