<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼・陸上テスト大会、劉翔より大声援を受ける選手?

Record China    2008年5月27日(火) 16時46分

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今日の北京は日中の予想気温が31度。だが、外は確実に35度前後の真夏の暑さとなった。これまでは、袖の長さを迷いながらだった街角のファッションも一気に夏モード。日傘を片手に汗を拭き吹き、歩く人たちの姿が目立った。写真は23日の女子100m決勝。

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今日の北京は日中の予想気温が31度。だが、外は確実に35度前後の真夏の暑さとなった。これまでは、袖の長さを迷いながらだった街角のファッションも一気に夏モード。日傘を片手に汗を拭き吹き、歩く人たちの姿が目立った。

そんな中、熱い戦いが繰り広げられている陸上の北京五輪のテスト大会「中国オープン」。今日24日は大会3日目を迎えた。110m障害の劉翔が完全に主役を担っている今大会だが、日本人選手もがんばっている。男子200メートル予選は日本記録保持者の末続慎吾(ミズノ)が総合トップの20秒92をマーク、また高平慎士(富士通)も同タイムで、ともに25日の準決勝に進出した。劉翔だけが目立つ今大会だが、日本の実力派のアスリート達の健闘にも期待したい。

さて今大会、実は劉翔と同じくらい、いやある意味、それ以上の大きな歓声を受けながら競技をしている選手がいる。しかも一人や二人ではない。今大会に46人エントリーしている四川省の選手たちである。

今大会は、劉翔が出場し、また日本のトップレベルの選手が派遣されているものの、全体的には、中国の国内大会的な雰囲気が強い。エントリーしているほとんどの選手が中国国内の選手で、彼らは全て、「中国の」ではなく、所属する省・市でコールされる。例えば、劉翔は「上海」所属である。

そんな中、「来自四川 (四川省からきた)・・」と選手名がコールされると、毎回、場内に割れんばかりの拍手が起きる。

昨晩、女子100mで13秒22で優勝した劉静もその一人だ。また男子110m障害のイ靖(四川省)は、大会期間中に誕生日を迎えた。劉静はそもそも人気選手で、陸上ファンにはお馴染みの選手なのだが、今大会、彼女に送られる声援はまたいつもと異なる。いわずもがな、未曾有の大災害を乗り越えてレースを戦う彼らへの「がんばれ!四川」という声援である。

四川省の陸上代表 (中国では、各省・市ごとに代表チームを持つ)の合宿地は、今回の震災の震源地であるブン川に程近いところにある。地震が発生した5月12日14時28分は、選手たちは、午前のトレーニングと食事を終えて、昼寝の時間だった。その瞬間、大きな音が遠くから聞こえ、ある選手は「結婚式の礼砲」かと思ったそうだ。すぐに選手全員が外に逃げ出し、高跳びの選手が腿に軽いケガを負った以外は幸い、大事には至らなかった。その後、選手たちは室内トレーニング場の中で、高跳び用のマットをベッドにして、2晩を明かした。だが、その後はすぐに、「中国オープン」に向け、練習を開始したという。合宿所は倒壊等はなく、少しヒビが入った程度だったそうだ。

こんな大きな大災害を乗り越えて、国家体育場に姿を現した四川省の選手たち。恐らく、大会の出場そのものをどうするか考えただろうが、ここで彼らが大歓声を受けながら走る姿を見ていると、出場は決して間違いでなかったと思えてくる。

今大会はCCTV(中国中央テレビ)の五輪チャンネルを通じて、全国に中継されている。昨日の劉静の100mももちろん、四川省に届いている。400mハードルで優勝した黄瀟瀟も四川省の選手だ。「今大会に出場したのは、四川省の人たちに希望を与え、諦めない気持ちを感じてもらうため」と語る。自分たちの走りが、少しでも被災者の皆さんの心の慰めとなり、明日への希望を持つことが出来れば、ということだろう。

四川大地震の被害の全貌はいまだ完全には明らかになっておらず、まだ本格的な復興への道を口にするのは早いかもしれない。だが、震災にもめげず、最高のパフォーマンスを大舞台で披露する四川の選手たちの姿は、四川市民たちに大きな力を与えるに違いない。

<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>

■筆者プロフィール:朝倉浩之

奈良県出身。同志社大学卒業後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中国国際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。

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