<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼・名物”オリンピック兄貴”が鳥の巣に参上!!

Record China    2008年7月11日(金) 6時47分

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一日中、小雨模様となった7月5日。北京市北部のオリンピック公園南側、メインスタジアムの国家体育場(愛称・鳥の巣)を臨む場所に謎の三輪車が現れた。写真は8日、北京市内。

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ド派手にオリンピックマークをカラフルに刈り込んだ髪型。体にはオリンピック競技をかたどった刺青が35箇所彫ってある…。

一日中、小雨模様となった7月5日。北京市北部のオリンピック公園南側、メインスタジアムの国家体育場(愛称・鳥の巣)を臨む場所に謎の三輪車が現れた。

この人こそ、故郷である北京南方の杭州を去年7月に発って、三輪車で北上。オリンピックを各地で「宣伝」してまわりながら、三輪車をこぎ続け、ついに北京に到着した孫浩南さん(28歳)である。

故郷では、この三輪車を使って、果物を売ったり、土木作業員をして生計を支えているという孫さん。「出発の時には家族全員に反対されたよ」と笑顔で語ってくれた。

出発直後から、メディアが取り上げ、すでに中国国内では“有名人”。その甲斐あって、道中は、あちこちで「支援者」が募金をくれたり、ミネラルウォーターを差し入れてくれたりしたそうだ。

荷台部分の外側には、これまで取材を受けたメディアの名前が並んでいる。国内外のそうそうたるメディアが並ぶが、その中に「富士山電視台」の名前も。どうやら、「フジテレビ」のことのようである。「まだまだあるよ」といって、荷台から名刺入れを取り出し、取材を受けた新聞やテレビ局を教えてくれた。

で、肝心の目的は?と聞くと、「北京五輪の応援を全国の人たちに呼びかけること」。全国で署名を集めながら、やってきたそうだ。

各地で公安当局から職務質問を受けたそうだが、地元の体育委員会から“通行証”をもらっており、これで切り抜けてきたようだ。この日も、警官から取調べを受けるハプニングがあったが、最後は「我々は五輪の成功を祈る同志。支持をよろしく!」と強引に握手を迫り、警官も苦笑いで応じていた。この“フレンドリー”さと底抜けの明るさが長い旅を支えてきたのだろう。

そしてこの日は、たまたま訪れたオリンピック公園で、もう一人、同じく雲南省から北京まで三輪車でやってきた石長林さんにばったり。石さんも6月4日に北京に到着し、今は北京で独自に「宣伝活動」を行っている。

「似たもの同士」が、北京五輪の象徴である国家体育場(鳥の巣)の南側で、長い旅を経て出会ったというわけ。何かひきつけ合うものがあるのだろう。石さんのほうは、すっかりご年配で、かなりの年の差の二人だが、意気投合という感じだった。

オリンピックのような大イベントが行われるときには、日本でも、必ずといっていいほど、ちょっとした「お調子者」が現れるもの。このお二人も、ちょいとこれで有名になってやろうという動機はあるのだろうが、こういう奇想天外な人がいるからこそ、大イベントも盛り上がるというものだろう。

そんな孫さんの愛称は「オリンピック兄貴」。いよいよ開幕が迫る本番に向け、孫さんは「最後まで精一杯、応援したい」と抱負を語る。ある意味、役者がそろった…ということだろうか。

<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>

■筆者プロフィール:朝倉浩之

奈良県出身。同志社大学卒業後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中国国際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。

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