<直言!日本と世界の未来>日本の学生は海外にもっと雄飛を、外国人留学生受け入れ増も必要=高まる中国の存在感―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2017年11月26日(日) 5時20分

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かつての高度経済成長時代、日本の多くの若者が海外留学し、米国はじめ多くの世界の大学キャンパスが日本人学生で溢れた。昨今は日本から海外に雄飛する学生が激減しており、往時を想起すると寂しい限りである。

かつての高度経済成長時代、日本の多くの若者が海外留学し、米国はじめ多くの世界の大学キャンパスが日本人学生で溢れた。私も海外出張や財界ミッション訪問などの合間に、多くの日本人留学生と度々懇談したのは、楽しく有意義なひと時であった。

昨今は日本から海外に雄飛する学生が激減しており、往時を想起すると寂しい限りである。文科省、米国教育省、日本学生支援機構、留学あっせん団体などの統計によると、1990年代に米国における外国人留学生中で最多であった日本人学生は、21世紀に入り、毎年減少を続け、今やピーク時の4割程度に激減。全留学生中の比率もわずか2%へと縮小した。一時日本人に替わってインド人がトップを占めていたが、2010年に中国人が抜き、今や全体の30%以上を占めるほどに増えた。

米国の外国人留学生のうち中国本土出身者は約33万人で出身国では断トツに多い。以下インド、サウジアラビア、韓国の順。日本は1万9060人で9位。日本はベトナム、台湾の後塵をも拝している。

中国で特に優秀な学生が学ぶ清華大学北京大学では学部卒業者3000余人中、毎年25〜30%が海外へ留学、その70%が米国の大学である。日本へは2〜3%なので、中国のエリートとされる両大学出身の留学生には、米国と日本とでは実に25倍もの開きがある。

米国以外を見ても、英国での留学生中、中国人学生は7万7000人、18%でトップを占め、日本人3100人の25倍に達している。フランスでも16倍、ドイツ11倍、カナダ20倍、イタリア24倍、オーストラリア47倍、韓国40倍、タイ24倍となっている。留学生は、将来その国とのパイプ役になるので、日本にとって由々しき事態であると考える。

一方、世界各国から中国への留学生が激増、最近15年間で8倍に増えた。かつて30%を占めていた日本人学生は頭打ちで、今や全留学生の4%を占めるにすぎない。アジアに関心を持つ諸外国の学生たちが、強力に中国へ吸引されているようだ。

この15年間に日本で学ぶ米国人留学生は増えているが、中国への米国人留学生は、それをはるかに上回る勢いで増加。今や日本への留学生の11.2倍にもなっているという。日本へ留学した学生が知日派になるのと同様、中国へ留学した学生たちは知中派となるであろう。米国において将来、知日派と知中派の数が10倍以上の開きになる可能性が、ここには示されている。米国だけでなく、フランス、ドイツの欧州諸国においても同様の動きが顕著である。日本と中国へのフランス人留学生は12.2倍、ドイツ人留学生は11.8倍の開きになっており、欧州諸国においても将来、知日派と知中派の差が10倍以上になることが懸念される。

こうした状況を打開するためには、日本の学生に米国、中国をはじめ世界各国に留学することへのインセンティブを与えられるかどうか。企業や官庁への就職に際し、外国の大学・大学院卒を優遇することも一案であろう。また日本の教育文化の魅力を世界にもっとアピールし、各国の青年たちに日本留学の意義を訴えられるかどうか。大きな課題であろう。国力は異文化交流を積極的に押し進めて、初めて生まれるものである。

以前から気になっていたことだが、多くの日本企業において、大学卒と大学院卒や博士号所得者との間の初任給があまり変わらないことは再考を要すると思う。企業の人材は入社してから育てるというのが日本の伝統的な企業風土であるが、大学院や博士号所得への勉学意欲を削いでしまうのではと危惧する。企業に貢献してくれる人材を優遇するのは当たり前のことだが、もう少し広く世界を見据えた人材活用策を検討すべきであろう。

(直言篇30)

立石信雄(たていし・しのぶお)

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC=企業市民協議会)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人・藤原歌劇団・日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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