八牧浩行 2017年12月2日(土) 5時20分
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水島治郎千葉大教授が講演。20世紀型組織・権威の凋落と言える現象が見られ、21世紀には中間の「無組織層」が大幅に拡大。経済、政治、社会、メディア、教育などで中抜き現象が広がっていると分析。「ポピュリズムとは民主主義に内在する矛盾を示すもの」と結論付けた。
2017年11月29日、世界のポピュリズムに詳しい水島治郎千葉大教授が「『中抜き』時代のデモクラシー、ポピュリズムの映し出す21世紀型社会」と題して、新聞通信調査会主催のセミナーで講演した。20世紀型組織・権威の凋落とも言える現象が見られ、21世紀には中間の「無組織層」が大幅に増加。経済、政治、社会、メディア、教育現場など多方面で中抜き現象が広がっていると分析。「ポピュリズムとは民主主義に内在する矛盾を端的に示すもの」と結論付けた。
水島教授の近著「ポピュリズムとは何か―民主主義の敵か、改革の希望化か」(中公新書)は2017年(第38回)「石橋湛山賞」を受賞した。
講演の要旨は次の通り。
ポピュリズムは「人民(民衆)」に依拠してエリートを批判し、人民の意思を直接政治に反映させることを主張する急進的な改革運動で、「アメリカ人民党」が起源である。北欧、オランダ、オーストリア、デンマーク、ドイツに伝搬した。「右派系扇動」だけでなく、英国のEU離脱、トランプ大統領の登場もその一例であり、日本でも例外ではない。一時の「橋本徹・小池百合子“フィーバー”」などが該当しよう。先の総選挙でSMSを駆使した立憲民主党の人気などもその一例かもしれない。
ポピュリズムは「大衆迎合主義」と訳されるが、本来否定的なイメージはない。有力な英英辞典には「特権的なエリートに対抗する人々の権利と権力を支持する政治哲学」とあり、「人民主義」の方が適切だろう。
ポピュリズム伸長の背景として、(1)冷静の終結と左右対立の変容(2)既成政党や既成団体の弱体化(3)産業構造の転換とグローバル化、移民の増加、欧州統合の進展―など「20世紀型政治の終焉」が挙げられる。
21世紀は「中抜き」政治の時代とも言える。経済、政治、社会、メディア、教育現場など多方面で中抜き現象が広がっている。日本でも有権者の団体(自治会、農業団体、労働組合、経済団体、宗教団体など)加入率が激減。「無党派層」ならぬ「無組織層」が大幅に増加している。ピラミッド型構造の大企業や従来型メディア(新聞・テレビ・ラジオ)や文壇、論壇、知識人など20世紀型組織・権威の凋落と言える現象が見られる。
ポピュリズムとは民主主義に内在する矛盾を端的に示すもので、現代の民主主義は自ら作り上げた袋小路に迷い込んでいるのではないか。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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