【週末美術館】スキンヘッドの男―方力鈞

Record China    2008年10月18日(土) 14時56分

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中国現代アート最大の潮流「シニカル・リアリズム」を率いる画家・方力鈞。激変する中国社会で生きのびながら、身を寄せる場所を求めて流浪する自身の魂を作品に投影し続けている。

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中国にとっての1989年。理想を抱く若者らは、「天安門事件」によって大きく昂ぶり、そして深い挫折を経験した。これを契機に90年代の北京から沸き起こった「シニカル・リアリズム」は、中国現代アート史における最大の潮流として、現在に脈々と引き継がれている。そのムーブメントの旗手として広く国内外に知られたのが画家・方力鈞(ファン・リジュン)だ。幼少期に文革を経験し、青春期を改革開放政策による急激な経済発展の怒涛の中で過ごし、天安門で民主化への夢を打ち砕かれたこの作家は、身を寄せる場所を見つけられずに流浪する魂を、作者自身と思われるスキンヘッドの男に投影して表現し続ける。

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「シニカル・リアリズム」の作家らは共産主義化以降、工業化や現代化と、流転を繰り返す国情を主題にしながら、それらに皮肉やユーモアを交えつつ、冷徹な視線を失わない作風が特徴である。そこに、天安門事件を経て90年代半ばまで国内に蔓延した「しらけ」ムードや、現代に生きる知識階級の都市生活者が共通して抱える虚無感をあぶりだす。

方力鈞の作品に登場する人物は、一様に個としての存在感を欠いたアノニムな存在として描かれているようにも思えるが、作者自身をモデルとしているようにも見受けられる。この「スキンヘッドの人物」は一貫して彼の作品に登場するが、簡潔さを重んじる方力鈞にとって、髪の毛を持たない頭部は「装飾による隠し事」を許さない、本質への追究を象徴している。シニカルな笑いを描き出しながらも、その作品から理知や冷静さが感じられる所以はその点にあるといえよう。激動する世界の中に、不変の真実は果たして存在するのか?求め、彷徨う魂の軌跡が、方力鈞の作品には存在する。(文/山上仁奈)

●方力鈞(ファン・リジュン)

現代美術画家。1963年、河北省邯鄲市生まれ。1989年、中央美術学院版画学部卒業。90年代以降の中国現代アートの主流「シニカル・リアリズム」の旗手。文革時代に生まれ、改革開放後の急激な経済成長や天安門事件など激動の中国現代史を経験し、作品にそれが反映した「ポスト89」世代の芸術家でもある。自身をモデルにしたと思われるスキンヘッドの男を描いた作品が特に有名で、不気味ともいえる雰囲気とそれに相反したポップさやユーモアが融合し、一度見たら忘れられない独特な世界観を確立している。作品はMOMA(ニューヨーク)やポンピドゥーセンター(パリ)など名だたる美術館に展示され、ベネチアビエンナーレにも2回出品している。世界各地で活躍する数少ない中国人アーティストのひとりである。

※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。

写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津

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