木口 政樹 2018年2月3日(土) 19時0分
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2月9日に開幕する平昌冬季五輪は、歴代最も多くの選手が出場する最大規模の冬季スポーツ祭典になる見込みだ。写真は韓国のスキー場。
2月9日に開幕する平昌(ピョンチャン)冬季五輪は、歴代最も多くの選手が出場する最大規模の冬季スポーツ祭典になる見込みだ。
開催国の韓国は、146人の選手が出場する。スピードスケートなど一部の種目で調整される可能性があるが、歴代最大規模となるのは確実だ。ソチ大会には71人が出場した。北朝鮮からは南北合同チームを結成したアイスホッケー12人を含めて22人が参加する見込みだ。
最大規模は米国。米国オリンピック委員会(USOC)は平昌冬季五輪に242人(男子135人、女子107人)の選手を派遣する予定。2014年ソチ五輪(222人)に比べて20人多い。歴代の冬季五輪に参加したどこの国の選手団よりも多いということだ。日本もソチ五輪選手団(113人)より10人多い123人の選手を派遣する。
1998年の長野大会(166人)に比べると少ないが、過去2番目に多い。日本は今大会で9個以上のメダル獲得を目標にしている。国家的なドーピング波紋のため個人の資格で出場するロシア選手は169人。ロシアの国旗と国歌はもちろん、ロシアという国名も使用できない。「ロシア出身選手」(OAR)という名称を使う。また、今大会にはナイジェリアやエリトリアなどが初めて冬季五輪に出場する。ソチ五輪の88カ国より2カ国多い約90カ国が出場する。
こうした華々しい報道の陰に隠れているいろいろの話題もかいつまんで拾ってみよう。女子アイスホッケーで北と南の合同チームが誕生した。いきなりの発表のときには、若い世代を中心に韓国の多くの人が反対していた(80%以上が反対)が、いっしょに練習する姿や北朝鮮選手の誕生パーティの画像などが流れた今は、反対するムードはかなり静まったようだ。やることになったからには、一生懸命練習してがんばれよということであろう。
合同チームとも関連して、開会式のときに韓半島旗(統一旗)という水色の旗を北と南の選手がいっしょに掲げて入場することになった。北と南の融和の雰囲気を醸し出そうというわけだが、韓国の野党からは「ピョンチャン(平昌)五輪じゃなくて、ピョンヤン(平壤)五輪」をやろうとしているのかといった野次がとんだりもした。
これは、合同チームを作ったり、韓半島旗で入場したりということのほかに、あまりにも北の言いなりになる現韓国政府与党のやり方を批判する意味合いもあった。腫れ物にさわるような態度で接していることに嫌気が差したのであろうけれど、韓国の与党としてはそれもせんかたなしといったところだ。
「おらあ、やらねえよ」とでも言われようものなら、元も子もないからである。北って、いつでもそういうことを言えるようなお国柄である。しかも自然に。ここらへんが、北朝鮮の外交のうまさ、したたかさ、えげつなさであるけれども。
去年の暮れごろまでは、平昌五輪の人気はイマイチという感じであったが、今年1月はじめの段階では、会場チケットはほとんど売り切れ状態のようだ。ある日本人の友人(会長の秘書)の話によると、男子フィギュアを見ようとチケットを買おうとしたら、プレミアムがついて1枚25万円という途方も無い価格。それも韓国内では1枚もなくて日本でならこの価格ということ。大企業の会長とあって、30枚ほどを即決で買ったそうだが、たぶんその会長の関係者が選手としてでているみたいということであった。
韓国内でも行く気になっていた人も、費用が高いために家でテレビ観戦に決めたという人も多い。たとえば、ある人はショートトラックが好きで家族そろって見に行こうと考えていた。まず4人家族がA席の入場券を4枚購入するには16万8000円(青少年割引50%含む)がかかる。これに会場近くのモーテルの宿泊費は4万円を超える。しかも、団体でない個人予約は至難のわざ。交通費2万円と食費2万円まで加えれば1泊2日で約25万円かかるという計算だ。大韓民国で開かれる五輪なので是非行って見たかったけど、経費がかかりすぎてテレビで見るしかないというわけだ。
この人のように、観覧費が高くて行けないということのほかに、寒さのせいで平昌行きを躊躇(ちゅうちょ)する人も増加している。開会式は2月9日(金)の午後8時だ。今年はいつになく寒い韓国。先日は筆者の住んでいる天安でも最低気温がマイナス20.9℃だった。
平昌はここよりはずっと寒いのでそのときはマイナス22℃か23℃くらいだったかと思う。開会式の9日がどれくらい寒くなるかは誰にもわからないけど、夜の8時だ。時期的に気温は少し上向くといってもマイナス10℃くらいは覚悟せねばならないだろう。データ上、2月9日ごろの最低気温としての平均値は11.7℃という。山合いなので風もあるだろう。いくらあったかいと見積もっても体感温度は、マイナス15℃くらいか。
開閉会式場は開放型構造なので、観覧客は寒さにそのまま露出するほかはない。ホッカイロみたいな暖を取る何らかの品は組織委員会のほうで準備しているそうだが、かなりの寒さを覚悟して行かないと大変なことになるだろう。いつにない寒さのために、平昌行きをためらう人も出てきているというわけだ。
北朝鮮の軍事パレードが2月8日、開会式の前日に平壤で開かれる模様だ。本来は4月にあったものを、今年は2月8日と決めたらしい。大向こうを威嚇する軍事パレードを「観覧」したあとの五輪開会式。気分のいい韓国人は1人もいないが、これも北のしたたかさと諦めるしかないのだろう。
とまれ2月1日現在、南北の合同チームの練習も軌道に乗ってきているようだ。北の選手団も今日明日にはこちら韓国にやってくる。外国の選手団もすぐに韓国入国となろう。五輪以後が憂慮されるが、そうした心配はそのときになってからやろうじゃないかと開き直った気持ちで開会式を待つ韓国のおおかたの雰囲気である。2月9日午後8時開幕、25日午後8時閉幕の2018年平昌五輪。成功を祈る。
■筆者プロフィール:木口政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年〜現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。
■筆者プロフィール:木口 政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。 著書はこちら(amazon)Twitterはこちら※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。
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