<日本人が見た中国>平気で前“車”の轍を踏み続ける中国人たち!中国で活躍中の日本人俳優にも理解不能

Record China    2011年11月30日(水) 12時9分

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日本語には“急がば廻れ”ということわざがある。そんな慎重な日本人とは真逆に位置する中国人の楽観主義、ケセラセラ精神を、目の当たりにする機会があった。写真は内モンゴル自治区の草原。

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※中国に渡って10年。現在、「中国で最も有名な日本人俳優」と称される矢野浩二氏によるコラム。

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中国の連続ドラマは、日本のように週に1回の放送ではない。1日2話ずつの、そして毎晩連続して放送される。つまり、30話の連続ドラマだと2週間ほどで放映は終了する。その後話題となり、視聴率が取れると何年もえんえんと再放送が続く。中国の人は週1回の放送では待ち切れないのだ。街中では車のクラクションを頻繁に聞く。信号も守らない人も多い。バス停では並んで待ちはするものの、いざ乗車の際はみんなが一斉にドアに向かって走り出す。

日本語には“急がば廻れ”ということわざがある。遠廻りでも安全、そして確実な道を選ぶ方が、結局は近道になるという意味。日本人の精神にも染み付いている言葉だ。

そんな慎重な日本人とは真逆に位置する中国人の楽観主義、ケセラセラ精神を、目の当たりにする機会があった。それはあるドラマの撮影で、スタッフ・俳優のロケバスや機材車など大型車両10数台が連なって、北京から内モンゴルへキャラバン隊の如く大移動した時である。

朝6時に北京郊外のホテルを出発。目的地に着いたのは夜7時。なんと13時間!もともとスタッフからは、「6時間ほどで目的地に着く」と聞いていた。だが、6時間経っても着かない。長時間にわたってデコボコの道を走行し、揺れが激しく気分も悪い、長時間座っているため尻が疲れ、僕は不貞腐れていた。

そんな道中、先頭車が砂場にはまって動けなくなった。「おいおい…何やってんだよ〜。こんなんで撮影場所に着くのか〜?こんな僻地で留まって、日が暮れたら大変だよ〜!」と心の中で愚痴る。すると、車の中から男性スタッフが数人降りて、後ろからその車を押し上げた。車は無事に砂場を脱出。その数人のスタッフたちは、「やった〜!」と喚起の声を上げている。その様子を見て「何、喜んでんだ〜?呑気だよな〜」と思う自分。すると、2番目の車両も同様に砂場にはまって動けなくなった。すでに抜け出した先頭車両のスタッフ達がそれを見て、指を差して大笑いしている。そして、彼らを助けるどころか、あがいてもあがいても砂場から抜け出せない車の様子を見て笑っている。

数分後、2番目の車両も無事に脱出。そして僕の乗っている車も案の定、砂場にさしかかった途端に同じことが起こった。前方を見ると、すでに脱出した車両のスタッフが外で大笑いしている。

「おいおい、何を笑ってんだよ〜!助けろよ!」心の中で怒りが湧いた。他人がピンチの時に、呑気でいられる神経が理解できなかった。でも、みんなは笑っているだけで助けに来ない。仕方なく、乗っていた男達だけで車を後ろから推す。下りて後方を見ると、まだ数台の車が並んでいる。みんな外に出て煙草を吸いながら、その砂場にはまった光景を見て笑っている。まるで、トラブルを楽しんでいるようだ。

この時彼らの心の内にあるのは、「こんなにたくさんの撮影スタッフが揃っているこの状況では、どんなトラブルもトラブルにならない。絶対クリアできる」という安心感なのだ。だからみんな、悠長に構えている。トラブルを楽しむ気質すらある。もしも日本の撮影隊で、主演級を含む俳優らを乗せたロケバスがこうなったら笑うどころじゃない。ロケバスを提供した会社は、テレビ局に出入り禁止にされるだろう。

そんな一部始終を見て、これがいわゆる“大陸的な気質”なのだなと思った。

「笑ってる場合じゃないだろう?」と、一人イラついていた自分が馬鹿らしく思えた。それまで規律や予定を重んじる日本スタイルにどっぷり浸かっていた自分にとって、この中国的アバウトさと言うのか、ケセラセラ精神は大きな衝撃だった。せっかちな中国人の、別な一面を見た気がした。もちろん、どちらにも一長一短はあるが。

中国の人達がよく言う言葉「人生には困難がたくさんある。でも、人生は短いから、困難も楽しまなければ!思い切り楽しんで生きるべきだ。楽しまなきゃ損!」また、「初めは難儀でも一度通り抜ければ、後の道は開ける」という意味の“万事開頭難”という教えがある。さらに、“出る杭は打たれる”といわれる日本とは異なり、ここ中国では「出る杭は竹の子のごとく、出れば出るだけ賛美される」のだ。13億人を越える人たち、都市部だけでも約5億人が切磋琢磨して生きる中国で頭ひとつリードするには、この考えが必須ということなのかもしれない。

中国の人達の日本人に対する印象、それは「日本人は勤勉、生真面目、何事にも身を粉にして取り組む精神がある。生産現場ではコンマ数秒の作業時間を短縮するためのマニュアルまである」と。これは世界に誇れる素晴らし精神だ。そして、だからこそ、時には張り付いた糸を緩める事も必要だ。中国の生活に触れると、そのことにふと気づく。日本人があまり注視することのない大陸的センスが、ここ中国にはある。

●矢野浩二(やの・こうじ)

バーテンダー、俳優の運転手兼付き人を経てTVドラマのエキストラに。2000年、中国ドラマ「永遠の恋人(原題:永恒恋人)」に出演し、翌年に渡中。中国現地のドラマや映画に多数出演するほか、トップ人気のバラエティー番組「天天向上」レギュラーを務める。現在、中国で最も有名な日本人俳優。2011年、中国共産党機関紙・人民日報傘下の「環球時報」主催「2010 Awards of the year」で最優秀外国人俳優賞を日本人として初受賞。中国での活動10年となる同年10月、自叙伝「大陸俳優 中国に愛された男」(ヨシモトブックス)を出版。

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