米朝間の接触、昨年後半以降継続中=「予備的対話」実現へ、3月にも南北軍事会談―韓国出身の早大教授

Record China    2018年2月21日(水) 5時0分

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李鍾元・早稲田大教授が日本記者クラブで会見。昨年後半以降、米朝間の接触が継続しており、北朝鮮の南北融和路線の狙いは「米朝会談への布石」をうつことだと指摘。米国との「予備的対話」が実現する可能性があるとの見通しを明らかにした。写真は会見する李教授。

2018年2月16日、朝鮮半島情勢に詳しい李鍾元・早稲田大教授(韓国出身)が日本記者クラブで会見した。昨年後半以降、米朝間の接触が継続しており、北朝鮮の南北融和路線の狙いは「米朝会談への布石」をうつことだと指摘。米国との「予備的対話」が実現する可能性があるとの見通しを明らかにした。一方で、韓国国民の過半数が南北首脳会談や南北統一を支持しており、文武寅大統領も南北融和に意欲的であると指摘した。

李教授の発言要旨は次の通り。

韓国国民の77%が南北首脳会談を支持、南北統一についても、過半数が「必要」と答えている。北朝鮮はどういう存在かとの問いにも44%が「協力支援の対象」と見ている。若い世代は厳しいが、50歳以上の中高年世代はほぼ過半数に達している。文在寅大統領の支持率は6割〜7割と高い。

韓国社会の反応は「熱狂」ではなく「冷静」であり、「民族」より「安定」を志向。「感情」を抑え、「実利」を追求している。「最前線のリアリズム」に左右され、「民主化後の世代」は国家主義、軍事主義に批判的だ。

北朝鮮の南北融和路線の狙いは「米韓の離間」を図るというより「米朝会談への布石」をうつことだ。短期戦術としては米トランプ政権をけん制し、戦略的に局面(構図)の転換を目指す側面もある。その根拠は「最高レベルのカード」(金正恩の妹)を特使として平昌五輪に派遣したことだ。米韓の離間で得るものは限定的であり、全体を動かすことを狙ったといえる。

昨年後半以降、米朝間の接触が継続している。金正恩氏は(訪韓団から)「韓国の意向と米国の動向」についての報告を受け、対応している。「軍拡と経済の並進路線」を標榜しているが、「核武装の完成」によって経済・外交に力を入れることになろう。南北融和は時間稼ぎの面もある。

文大統領は(1)朝鮮半島問題で韓国は「運転席」に座る「当事者」である(2)北朝鮮の「通米封南(米国に通じ韓国を外す)」政策を回避する必要がある―などの理由から北朝鮮へのアプローチが不可欠と判断している。その上で軍事衝突を回避するため朝鮮半島情勢の安定化を優先、米国政府内の国務省を中心とした対話派と連携している。米ブッシュ政権の際は、「ネオコン(新保守主義)対国務省・韓国」の図式だった。

トランプ政権の北朝鮮政策は、(1)「最大限の圧力と関与」であり、軍事行動に出るリスクがあり、何をするか予測不可能なマッドマン戦略とも呼ばれている。同時に「予備的対話」も行う方針で、核ミサイル実験のモラトリアム(猶予)が成立すれば、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の完成を遅らせられ、「力の外交(圧力)の成功」と誇示でき、トランプ政権の実績となる。「鼻血作戦」など勇ましい言葉が飛び交うが、単なる心理的な脅しであり、実現性はない。

今後の焦点は、米韓軍事演習の規模と内容だが、韓国政府は特使を3月にも北に派遣、南北軍事会談が実現する可能性もある。北朝鮮は「非核化」について何らかのコミットメント(合意)ができるかが注目点となる。核開発の凍結・ミサイル削減にとどまると日本や韓国への脅威は減らない。

北朝鮮は「朝鮮半島で核使用権を持つ米軍の撤退宣言」を求め、「南北統一」で攻勢をかけることになろう。文大統領は父親が朝鮮戦争で南に避難してきており、統一への思いが強く離散家族の再会などに意欲的だ。(八牧浩行

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