<コラム>中国の「雄安新区」最新事情、三度の訪問で見えてきたものとは

秋澤 文芳    2018年4月21日(土) 19時50分

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2017年4月、党・政府から発表された「雄安新区」を再び訪れることとなった。今回、この地区へは3度目の訪問であったが、周りの誰もが期待しているような、そして私自身も事前に想像していた「姿」とは大きく異なる光景が眼前に繰り広げられていた。写真は筆者提供。

2017年4月、党・政府から突然発表された「雄安新区」を再び訪れることとなった。街には「雄安新区決定」の看板が誇らしげに立ち並んでいた。河北省政府の喜ぶ姿がくっきりと現れているようにも見える巨大なものである。今回、この地区へは3度目の訪問であった。今回は、北京から快速列車と該当する地区すべてを廻るミニバス利用だ。

しかし、周りの誰もが期待しているような、そして私自身も事前に想像していた「姿」とは大きく異なる光景が眼前に繰り広げられていた。いや、繰り広げられているというよりも、実際は「従前と比較し、何の変化もなし」という状況であった。多くのメディアや経済関係の方々が期待していたような「雄安新区〜激変の開発状況」という変化の様子も、その映像すらも見ることはなかった。

【その後の大きな変化は全くなしの雄安新区】

2017年初夏に訪れた時とほぼ状況は同じである。少しばかり変わったと思われることは党・地方政府の「看板」が増えたことと、地方政府の位置する目の前の通りが少しばかり整備され、道路に面した商店の看板が新しく塗り替えられたことくらいである。新たな新地区が開発されたわけでもないし、道路が整備され新たな工場や企業等が進出したわけでもない。

これまで、私自身も中国全土をぐるっと2周してきたが、とりわけ今回のような開発区や経済特区、新区等のある都市・地域は何度も足を運んだ。しかし、従前からメディア等で報道されているとおり、天津杭州・昆明・蘭州・西寧・西安鄭州或いはオルドス市等々における新たな開発区・新区は正直言ってとても「成功」したとは思えない。

それらの新しい街は、町を創ったものの人口の流入は予測に反し増えず、商業ビルはテナントも埋まらずゴーストタウン化している、という都市が多数見受けられる。やはり交通の便・人口流入・住環境保持等の面で特に満たされていなければ街は永続的には発展しないし、やがては廃れていく運命が待っている。

【急ピッチで建設を進めてきた北京市政府の移転も遅れている】

今回の新区も巨大な北京・天津そして石家庄に囲まれた中央に位置する古い地区である。そして今後の新区の青写真も先の3都市が今も詳細を盛んに検討しているところである。北京市政府が通州地区へ約4.5兆円の移転に伴う予算をもとに移転してくるが、予定としていた3月「引っ越し」にはとても間に合わないようだ。移転先に引っ越し予定の組織団体に尋ねてみても「年内いっぱいはかかるのでは…」という話も耳に入る。あれだけの超スピードで建設を続けてきた北京市政府でも大幅に遅れている。

【今後の地元住民の生活と住環境等へも大きな配慮が必要】

当初の計画と、その後の開発に向けてはその地に住む地元住民の今後の生活と、新たに進出してくる企業・工業等の収支計画がどうなるかによって開発の速度や規模も、今後も大きな議論となることであろう。

この新区周辺には、地元民にとっても重要なものがある。それは、琵琶湖の5倍程の面積を有する巨大な湖「博洋淀」だ。安新県と雄県に囲まれた湖で、その周辺には三台鎮等の古い町並みも存在する。北京から列車で徐水駅を経て三台鎮にたどり着くが、この古い町は流通や建設機械などが小さな道路の沿線に延々と並べられている。さらに、意外だなと思ったことは「漁業の町」でもあり、釣具店が軒をならべてもいる。

この地に住む住民と漁師の人々がどうなるのか、そして今や湖の美しさを求めてやってくる多くの観光客と周辺の受け入れ組織がどうなるのかも心配になってくる。最終的には、この雄安新区の開発は「東京都の面積」にも匹敵するような巨大な開発地区を目指していると言われている。最終的には新区の完成は3年、4年先の2021年以降だとも言われている。まだまだ先の話のように思えるが、開発と、そしてさまざまな住環境がうまく調和できるような開発新区を目指してほしいものだ。

■筆者プロフィール:秋澤文芳

東京(豊洲)在住。1973年千葉大学卒。日本旅行業協会を経て2010年より北京第二外国語学院大学旅游管理学部研究生として現在も在籍。工学院大孔子学院旅講師、東京都日中友好協会常務理事として交流促進。観光文化ツーリズム(株)代表として旅游企画・訪日インバウンドに取組む。

■筆者プロフィール:秋澤 文芳

東京(豊洲)在住。日本旅行業協会を経て2010年より北京第二外国語学院大学旅游科学学院研究生として現在も在籍。東京都日中友好協会副理事長・経済ビジネス委員会委員長。日中観光文化研究所、観光文化ツーリズム等の代表として旅游・訪日インバウンドやコンサル業務に取組む。

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