大串 富史 2018年6月8日(金) 20時30分
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最近は各界において若年世代の活躍が目覚ましい。一方で僕らが日本人と中国人のハーフである4歳になる娘にかけるささやかな期待は、娘が大きくなってからバイリンガルになるということだけだ。ただしこれは、簡単なようで難しい。写真は中国の日本語スクールの広告。
最近は各界において若年世代の活躍が目覚ましい。一方で僕らが日本人と中国人のハーフである4歳になる娘にかけるささやかな期待は、娘が大きくなってからバイリンガルになるということだけだ。ただしこれは、簡単なようで難しい。
まず、なぜ簡単なのかといえば、もし国際結婚をしているなら二国間をそれなりに自由に行き来できる故、2つの言語環境に容易に身を置けるからだ。
ご存知の方も多いかと思うが、言語上の影響力というのは一番が社会(子どもの場合は学校)、二番目に両親(特に母親)、三番目に教育(特に早期教育)と続く。簡単な話をすれば、お金を出して子どもに英語なりの早期教育を受けさせれば効果をそれなりに見込めるが、それは両親が毎日のように母語で話しかける効果には及ばず、それとて子どもが学校などで数年にわたり受ける言語上の影響力を上回ることはない。
結果として例えば移民の子どもたちは、両親の母語と移民先の言語とをほぼ同程度、もしくは母語に勝って移民先の言語を操れる。
興味深いのは、彼らの大多数はお金があるので移民したのではない。むしろお金がないので移民という最終手段に訴えた結果、高額な早期教育に勝る万人向けの英才教育の機会を手に入れた。しかも、それだけではない。
多くの人が誤解しがちなことだが、語学は才能による差異というものが他の分野に比べて小さい。例えばあなたの日本語能力は、隣に住む人の日本語能力とほとんど大差ないのではないだろうか。そんな平均的な日本語能力イコール日本語ネイティブレベルにほかならない。
だからほとんどの移民は、子どもの才能いかんにかかわりなく、バイリンガル教育で失敗するということがほとんどない。僕たちのような国際結婚によるハーフの子どもたちもである。僕たちの場合、娘が小学校を卒業するまで中国にいて、それから日本に戻ってくることにより、ハーフの娘が中国語と日本語をほぼ同等に話せるようにと期待している。
ではなぜこれが、簡単なようで難しいのか。一つには親が忙しいため(両親が共にフルタイムの仕事をするために移民しているという場合が多い)母語教育がおろそかになりがちであり、二つには子どもが両親の文化や母語を軽くみなしてしまう(これはバイリンガル教育における親の側の消極的な態度が関係することもある)からなのだが、三つ目として子どもが小学校中高学年から中学校にかけてうまいタイミングで言語環境を切り替えられないことにある。そしてこの三番目のハードルは、時として容易に越えがたい。
一例を挙げると、僕の妹は台湾人と国際結婚をしているのだが、拠所ない事情が生じたため娘二人を連れ台湾から日本に引き揚げてきた。その時に小学校低学年だった上の姪っ子は中国語をほとんど忘れてしまったため、大きくなってから中国語を学び直した。その時小学校に上がっていなかった下の姪っ子に至っては、中国語を完全に忘れてしまい、今は日本語しか話さない。
ちなみにバイリンガル教育の価値について言えば、たとえば僕自身は新HSK6級の資格を有しているものの、1年弱前に受けたTECC(中国語コミュニケーション能力検定)の結果は550点を少し上回る程度だった。これは当時多忙だったため中国人の妻の特訓を受けられなかったからなのだが、そうではあっても中国という言語環境に8年間どっぷりつかった結果、凡人(どちらかというと語学オンチ)な僕でさえビジネスレベルにまで達することができた。ところがこれが幼児や子どもであれば、十年前後の言語環境によりネイティブレベルにまで容易に達してしまう。
卓球で金メダルを取れなくても将棋でタイトルを取れなくても別にいい、万人向けの英才教育でバイリンガルになってくれさえすれば――とはいえ、娘の日本語家庭教師として日々奮闘し、バイリンガル教育に家族一丸となり取り組んだとしても、「拠所ない事情」が生じてしまえば、それまでである。
実際、中国留学を計画していた僕の妻の中国語の生徒さんは、「拠所ない事情」が生じたため留学先を台湾に切り替えてしまった。僕らのように国際結婚していた友人夫婦も、「拠所ない事情」が生じたため最近になって日本に帰国してしまった。僕らとて、娘の小学校卒業まで中国にいられるのかどうかは、正直なところ分からない。こちらの国でバイリンガル教育というのは、簡単なようでなかなか難しい。
■筆者プロフィール:大串富史
本業はITなんでも屋なフリーライター。各種メディアでゴーストライターをするかたわら、中国・北京に8年間滞在。中国人の妻の助けと支えのもと新HSK6級を取得後は、共にネット留学を旨とする「長城中国語」にて中国語また日本語を教えつつ日中中日翻訳にもたずさわる。中国・中国人・中国語学習・中国ビジネスの真相を日本に紹介するコラムを執筆中。
■筆者プロフィール:大串 富史
本業はITなんでも屋なフリーライター。各種メディアでゴーストライターをするかたわら、中国・北京に8年間、中国・青島に3年間滞在。中国人の妻の助けと支えのもと新HSK6級を取得後は、共にネット留学を旨とする「長城中国語」にて中国語また日本語を教えつつ日中中日翻訳にもたずさわる。中国・中国人・中国語学習・中国ビジネスの真相を日本に紹介するコラムを執筆中。関連サイト「長城中国語」はこちら
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