Record China 2012年5月8日(火) 8時38分
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中国市場に溢れるパクリ問題。それは深夜にこっそり裏門からやってくるものではなく、白昼堂々と正門から、あるいはどさくさに紛れて足元からやってくる。写真は福建省にあるiphoenのパクリ修理センター。
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中国市場に溢れるパクリ問題。それは深夜にこっそり裏門からやってくるものではなく、白昼堂々と正門から、あるいはどさくさに紛れて足元からやってくる。
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たとえば、こんな感じである。
(1)工場見学客の対応を副総経理に任せたら、正門から入ってきた見学団体に生産現場の写真を大量に撮影され、設備機械メーカー名と型番、原料の種類や調合割合まで尋ねられ、懇切丁寧に説明したところ、部品や製品サンプルまで持ち帰られてしまった。
(2)完璧すぎるほど緻密な製造工程フローを工場設立時のフィジビリティ・スタディ報告書に詳細に記載したところ、当社とよく似た国産工場が複数、地方で操業開始した。
(3)指導技術の外部委託、中国・外国での特許申請を禁止し忘れた技術指導契約を結んだところ、知らない間に指導した技術を第三者に転売され、中国、海外で彼らが自分の技術として特許申請までされた。
(4)アクセスが多いという中国のインターネット・ショッピングモールに出店したところ、知らない間に同じモール内で、幾つもの見知らぬ第三者webショップに当社のニセモノ、類似品が多数、半額以下の価格で堂々と売り出されていた。
(5)日本人の技術リーダー、開発者が帰任時、定年退職時に高額報酬で現地コンペティター企業にスカウトされ、美人通訳に連れられて内陸部の工場へ行ってしまった。
こんな話は80年代の昔から日常茶飯事。起きてしまってからでは、もう遅い。
このような脇の甘い対応振りでは、出るところに出ても、それは「もともと貴社が技術持ち出し制限していなかったことが原因でしょう」と言われ、公開技術と見なされ、訴訟は却下されてしまう。対策としては、秘密保持規定を社内に制定し、技術ノウハウ、営業・顧客情報管理のコンプライアンス体制を厳正に構築し、まず「吾が身は自分で守る」姿勢を固めることが前提である。
本来、最大の課題は、そもそも本社自身の自己管理、自己責任から存在する。
最大のポイントは「何の技術を海外に出し、何の技術を日本に残すか」という本社の技術戦略課題である。請われるがまま、ボタンを掛け違えた「戦略無き技術移転」をスタートさせてしまうと、後々の矛盾は更に拡大し、海外コンペティターを育ててしまい、取り返しのつかない結果も招きかねない。
日本は生産技術立国である。自らの魂(レゾン・デートル)を無分別に、安易に外部に売り渡す愚も避けたい。外国企業の中には、意図的に不完全な技術を安い価格で中国に移転して、まず落札・採用させ、あとからメンテナンス、部品供給で大きな利益を得ようとする例も存在する。しかし、その一方で、正直に最初から貴重な技術を全部出して、買い叩かれた挙句、他企業・他国に転売、コピーされ、特許申請されるような羽目に陥ることも愚策である。
日本が世界に誇る技術である新幹線鉄道車両を、正当な価格で、国際法に沿った厳格な譲渡契約で、日本の製造メーカーが中国に売却あるいは製造技術提携したとしても、結果として中国鉄道当局は「わが国固有の開発技術である」と主張して譲らず、米国はじめ諸外国で中国の独自開発技術として特許申請され、またバングラデシュなど周辺の諸外国に外交戦略的に技術売却されてしまうという結末になっている。
「そういう国なのだから、仕方が無い」、「長いものには巻かれろ」という無責任な姿勢でいればいるほど、ますます「軒先を貸して母屋を取られる」事態がこれからも更にエスカレートしていくと覚悟したほうが良い。
少なくとも技術を提供した者として、自から開発し、海外に供与した知的財産権を脅かす行為に対しては、現地法、国際条約に沿って厳正に対処するのが開発技術者の責任であり誇りであると考えるべきだろう。
■日本本社で、「持ち出す技術」と「持ち出さない技術」のメリハリをつける。
・ 労働集約的な量産技術など、日本では高コスト化、非効率化した技術を、資源配分と経済合理性において比較優位な海外工場へと、契約にもとづいて合法的にアウトソーシングして適正な開発利益を得る
・ 日本が得意とする公害防止、環境保護、資源リサイクル、省エネルギー技術の海外発展途上国への技術協力を進め、もって地球環境の保護、資源確保効率化にも寄与する。
・ 日本本社では、次世代の技術集約的、高付加価値、ハイエンド型の新技術の研究開発に力を注ぎ、将来の当社コア技術として育成し、実用化することにより力を集中する。
(<時流自在>は筧武雄・チャイナ・インフォメーション21代表によるコラム記事)
<筧武雄氏プロフィール>一橋大学経済学部卒北京大学留学、横浜銀行北京事務所初代駐在員、同行アジアデスク長、海外経済協力基金(OECF)派遣出向などを経てチャイナ・インフォメーション21を設立。横浜国立大学経済学部非常勤講師、神奈川県産業貿易振興協会国際ビジネスアドバイザーなど多くの役職を経て、現在も横浜市企業経営支援財団グローバルビジネスエキスパートなど、日本企業を支援する中国ビジネスコンサルタントとして活躍中。
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