<中国ビジネス「時流自在」>5■パクリ問題(5)いざパクリ問題が発生したら…

Record China    2012年6月1日(金) 7時20分

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中国市場で商品がヒットし売れ始めてから6カ月も過ぎると、必ずどこかでパクリが発生していると言っても過言ではない。特に最近のパクリ商品は、一見して日本人でも日本製と見間違えるような、見事なできばえの包装、容器、デザインのものが多い。

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中国市場で商品がヒットし売れ始めてから6カ月も過ぎると、必ずどこかでパクリが発生していると言っても過言ではない。特に最近のパクリ商品は、一見して日本人でも日本製と見間違えるような、見事なできばえの包装、容器、デザインのものが多い。中味のコピーというよりも(中味は粗悪品でも)、むしろ「包装、容器の精巧コピーメーカー」と言ったほうが適切かもしれない。

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それが店頭やネットショップで、堂々とホンモノと同じ棚に並べられ、ホンモノの半額以下の値段で売られている光景も見かける。中には、正規代理店が店頭にはホンモノを掲げて客を集め、店員が客から声を掛けられれば、すかさずカウンター下の引き出しを開けて廉価なニセモノの陳列品を勧める、というパターンもある。あるいは店員が注文に応じて個別に(個人的に)裏の倉庫からコピー品を持ってきて売る店もある。もっと凄いのはレジの後ろの壁に回転扉があり、その奥に「コピー品陳列室」が隠されている店もある。

こういった現象を黙認、放置すれば、当社のニセモノが数年の間に雨後のタケノコのように全国に蔓延し、手のつけられない状態にもなりかねない。初期段階の少数にとどまっている間に、できるだけこまめに、中国法にしたがって厳しく対処することで、再発と拡散を防止することが大切である。

では実際に、いざパクリ被害が起きてしまったら、どうすればよいのだろうか?

1.商業秘密漏洩に対する中国法上の責任

中国の法令でも、知的財産権の侵害、あるいは技術ノウハウや顧客リストなど商業秘密情報の漏洩に関しては、むしろ非常に厳しい内容となっている。

・董事(取締役)、高級管理職については、中国「公司法」上に忠実義務が定められており、経営者・役員による利益相反行為は禁止(違法行為)とされている。

・従業員については中国「労働法」、「労働契約法」上に守秘義務が定められ、企業が従業員と守秘契約を結ぶことも認められている。

・類似粗悪品については、中国「反不正当競争法」により、損害賠償請求権が認められている。

・監督官庁である国家工商行政管理局「商業秘密侵害行為の禁止に関する若干の規定」では、商業秘密漏洩に対する罰則として、侵害行為差止と1〜20万元の科料が定められている。

・商業秘密漏洩の被害金額が50万元を超える場合は、中国「刑法」219条に定められる「商業秘密漏洩罪」にもとづき、禁固刑に処せられる。

こういった種々の中国法律知識を身につけ、パクリ犯と是々非々で、見逃さずに正々堂々と対決する姿勢が大切。

2.侵害行為の法律認定要件

コピー被害が実際に発生した場合、中国法上で権利侵害と認定されるための法律上の要件が「権利侵害法」(2010年7月施行)第6条に以下のとおり定められている。

「侵害行為者が過失によって他人の民事権益を侵害した場合、権利侵害責任を負わなければならない。法律規定を根拠に侵害行為者に過失があったと推定され、侵害行為者が自らに過失がないことを証明できない場合、権利侵害責任を負わなければならない」(「権利侵害法」第6条)

「侵害行為者が他人の民事権益に損害を与えた際、行為者の過失の有無を問わず、法律において権利侵害責任を負わなければならないと規定されている場合、その規定に従う」(同法第7条)

すなわち、権利者側が、(1)パクられた技術・情報が秘密情報であること、そして(2)当該技術と自己の秘密情報との一致性、類似性、同等性を立証できること、また、(3)侵害者による当該秘密情報の入手ルートを立証できること、そして(4)侵害者側も、当該技術・情報を合法的に入手・使用したことを立証できないこと、がパクリ立証の法律要件と言えるだろう。

実は、この「権利者側の一致性、類似性立証要件」が曲者なのである。なぜなら、侵害者が使用した技術情報と当社技術の一致性、同等性を証明するためには、当社の技術内容を具体的に法廷の場で一般公開しなければならなくなるからである。中国の法廷で秘密の技術情報を一般公開してしまうことのリスクを考えれば、法廷訴訟は諦めたほうが得策、と考える日本企業が決して少なくないことも無理はないのである。

3.現実の対応、摘発と処理

パクリ被害が起きてしまった場合は、以下の様な手順をお勧めしたい。

(1)新聞広告や業界雑誌に注意広告を出し、小売店や一般消費者の注意を喚起する。ニセモノを摘発してくれた販売店、消費者に褒賞を出すなどのキャンペーンも張ってみる

(2)販売店の営業回りをする際にニセモノ、類似品に注意し、店頭でコピー品を発見した場合は、流通経路などの事情をヒアリングする

(3)民間、工商局や公安局系列の専門調査会社に依頼して、偽物の卸元、製造元を追跡調査する

(4)コピー発生源をつきとめることに成功したら、証拠を確保したうえで下記の所管当局に通報して摘発、商品押収、製造販売停止処分、罰金など行政処罰を下してもらう

中味のコピーというよりも(中味は粗悪品でも)、むしろ「包装、容器の精巧コピーメーカー」と言ったほうが適切かもしれない。

■所轄機関

▽工商行政管理局:「商標法」、「反不正当競争法」

→商標権の侵害、模倣、技術漏洩

▽質量技術監督局:「製品品質法」

→虚偽表示、詐欺商法

▽知識産権局:「専利法」

→特許権、意匠、実用新案登録

▽税関:「貿易法」、「税関法」

→ニセモノ輸入、持込

◆ケガの巧妙

東日本大震災の福島第一原発事故で始まった放射能汚染問題をきっかけとして、多くの日本産食品、日本製加工食品が中国では輸入禁止となった。この間、皮肉なことに中国本土内で「輸入されているはずのない日本食品」が売られていれば、それがすなわちニセモノ、という如実な「アブリ出し」効果があったという。このように一定期間、中国内で純正品の販売を停止する、あるいは純正品に目立たない特殊刻印などの区別表示を入れるなど工夫して、ニセモノ商品を市場からアブリ出す作戦も考えられるだろう。

(<時流自在>は筧武雄・チャイナ・インフォメーション21代表によるコラム記事)

<筧武雄氏プロフィール>一橋大学経済学部卒北京大学留学、横浜銀行北京事務所初代駐在員、同行アジアデスク長、海外経済協力基金(OECF)派遣出向などを経てチャイナ・インフォメーション21を設立。横浜国立大学経済学部非常勤講師、神奈川県産業貿易振興協会国際ビジネスアドバイザーなど多くの役職を経て、現在も横浜市企業経営支援財団グローバルビジネスエキスパートなど、日本企業を支援する中国ビジネスコンサルタントとして活躍中。

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