<直言!日本と世界の未来>企業・行政の暑さ対策、待ったなし=世界的な異常気象続く、「パリ協定」順守働きかけを―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2018年7月29日(日) 5時0分

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連日の猛暑が日本列島を襲い、熱中症による犠牲者が多数に上った。西日本の豪雨による甚大な被害に続くもので、「日本列島は災害列島」と改めて思い知らされた。異常気象は今後も続くとみられ、これに対応する経済社会づくりが求められる。

連日の猛暑が日本列島を襲い、熱中症による犠牲者が多数に上っている。西日本の豪雨による甚大な被害に続くもので、「日本列島は災害列島」と改めて思い知らされた。テレビのニュース映像には救急搬送される熱中症患者が繰り返し映し出され、いたたまれない気持ちになる。加えてこの週末には、台風12号が関東から西日本へ“逆コース”の針路をたどり、列島を脅かした。異常気象は今後も続くとみられ、これに対応する経済社会づくりが求められる。

気象庁の発表によると、7月23日には埼玉県熊谷市で41.1度となり、国内の観測史上最高気温を更新。東京都青梅市では40.8度となり、都内で初めて40度以上を記録した。京都も38度以上の熱さが1週間以上も続いた。消防庁によると、16~22日の1週間に搬送された熱中症患者が全国で2万2647人に達したというから尋常ではない。

この傾向は日本だけでなく世界共通の現象のようだ。北アフリカのモロッコでは43.4度、アルジェリアでは51.3度とそれぞれ最高気温を塗り替えた。世界でも猛暑や洪水などの異常気象による被害が拡大。ギリシャでは熱波が原因とみられる山火事で76人が死亡。ラオスでは暴風雨に伴う増水で建設中のダムが決壊し、数百人が行方不明になっているという。

世界気象機関(WMO)は24日に「世界各地で記録的な猛暑が広がっており、極端な異常気象はしばらく続く」と警告。各国・地域に警戒を呼びかけた。異常気象の原因についてWMOは「温暖化ガスの増加による長期的な地球温暖化の傾向と関係している」と指摘しているという。

世界全体の課題である地球温暖化対策には多国間連携が不可欠だが、トランプ米大統領が地球温暖化を抑止するための国際的な枠組みである「パリ協定」からの離脱を決めるなど、主要国の足並みは乱れている。温暖化ガスの削減でも、これまで多く排出してきた先進国と同様に削減を求められる途上国からは反発の声もある。今後も猛暑や豪雨などの異常気象は増えるとの見方が多く、各国がどれだけ危機感を共有できるかが大きな課題となっている。

思い起こすのは1997年12月に京都市の国立京都国際会館で開かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)で採択された、気候変動枠組条約に関する「京都議定書」である。温室効果ガス排出量の削減目標を国ごとに定めて2012年までに達成していくという、人類史上初めての法的拘束力を持った文書で、画期的なものだった。京都議定書で世界をリードした日本は、「パリ協定」順守を米国をはじめとする各国に働きかけるべきであろう。

同時に必要なのは異常気象に対応した社会経済づくりを行政や企業ベースで推進することである。厚生労働省の集計によると、2017年に職場で発生した熱中症による死傷者数は544人で、うち死者は14人だった。業種別では屋外での作業が多い建設業(141人)が最も多く、製造業(114人)や運送業(85人)などが続いた。全体の9割が7月と8月に集中しており、異常な暑さが続く18年にはさらに増加しているようだ。

17年に熱中症で死亡した14人のうち13人の作業場所が暑さ指数を測定しておらず、4人は事業者が水分や塩分を準備していなかった。休憩場所の設置や涼しい作業服の準備、労働者の健康状態の確認などが事業者に求められる。そして異常があった場合はためらわずに救急車を呼ぶことが必要だ。

さらに特に野外作業では早朝や夕方に勤務をシフトしたり、休憩時間を多くとることなどの工夫が必要だ。また真夏の大イベントはできるだけ避けるようにしたい。高校野球や2020年の東京オリンピック・パラリンピックも要注意。可能なら時期や競技時間帯をずらすことを提案したい。

気象庁によると東・西日本では太平洋高気圧と上空のチベット高気圧の影響で記録的高温となっており、猛暑は8月まで続くという。台風の襲来もこれから本格化する。暑さ対策は待ったなしと言えよう。

<直言篇57>

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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