人民網日本語版 2018年8月17日(金) 6時20分
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ムンバイとグジャラート州の州都アーメダバードを結ぶムンバイ・アーメダバード高速鉄道はインド初の高速鉄道で、日本にとっては新幹線を輸出する貴重な機会だ。だがこのプロジェクトはインドの人々の抵抗などさまざまな困難に直面している。写真は新幹線。
古い列車がプラットフォームにゆっくり入ってくると、放送に流れる注意を無視して列車の前の線路を横切るインド人がいる。隣の大ホールには、切符を買うための長い行列ができている。北京日報が伝えた。
これはインド最大の都市ムンバイから列車で3時間ほど北に行ったところにあるボイザー駅の様子だ。ムンバイとグジャラート州の州都アーメダバードを結ぶムンバイ・アーメダバード高速鉄道はボイザーを経由する計画で、ボイザー駅の近くに高速鉄道駅が建設される予定だ。だが現在、工事が始まった様子はまったく見られない。
同高速鉄道はインド初の高速鉄道で、日本にとっては新幹線を輸出する貴重な機会だ。だがこのプロジェクトはインドの人々の抵抗などさまざまな困難に直面している。
■進展が遅い
ボイザー駅近くのレストランのオーナーは、「この村で高速鉄道のことを聞き回るのはやめた方がいい」と警告した。「最近では村人たち全員が抗議に回り、このプロジェクトに反対している。」からだという。
村民のパテルさんは、「村民が抗議するのは政府からの補助金が不足だからではなく、この高速鉄道プロジェクトに確信が持てないからだ。ボイザーからムンバイまで、普通車で往復すれば50ルピー(約80円)しかかからないのに、高速鉄道ができると何倍も値上がりすることになる」と話す。
ムンバイに近い都市ターネでは、市民団体と地方政党が街頭で抗議行動を繰り返している。
公表された資料によると、ムンバイ高速鉄道は全長508キロメートル、線路の92%は高架線路で、沿線には12駅が設置される計画だ。昨年9月に着工し、今年12月までに土地の接収が終わり、2023年の完成を目指す。インドの国家高速鉄道公社(NHSRCL)のカレ社長は、「新路線が計画を前倒しして、22年8月15日のインド独立75周年の記念日までに運行を開始したい」と話す。
そして着工から1年になろうという今、プロジェクトの進行ペースは非常にゆっくりだ。
■日本の動き
インド鉄道の全長は世界トップクラスで、一日の運行本数は約9000本に達し、乗客のべ2200万人を運ぶ。だが英国の植民地時代に建設された鉄道システムは長い年月の中でメンテナンスが行き届かなくなり、運行の効率が低いだけでなく、危険な事故も多発している。
インドのモディ首相は14年に就任して以来、インドの「高速鉄道の夢」を語ってきた。日本はここにインド市場進出のチャンスを見いだした。
ムンバイ・アーメダバード高速鉄道は日本の技術輸出の旗艦プロジェクトで、投資額は170億ドル(約1兆8904億円)に上り、うち80%が日本からの優遇条件での円借款で、年利はわずか0.1%だ。通常は30年の償還期間も50年に延長していて、これまでにない破格の優遇条件だといえる。
アナリストは、インド初の高速鉄道に対し、日本側は「もうけゼロで評判を取る」ような超低金利の借款を提供し、まずは市場に参入し、長期的視点で配置を進め、日本の技術や基準に対するインドユーザーのロイヤリティーを高め、ひいてはインド市場の未来から日本が得る利益を拡大したいと考えている、と指摘する。
同高速鉄道はインドの国家級工業プロジェクトであるデリー-ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)の3分の1をカバーするに過ぎない。また、DMICはモディ政権が打ち出したデリー、ムンバイ、チェンナイ、コルカタを高速鉄道で結ぶ「ダイヤモンドの四角形」計画の一部に過ぎない。規模から考えると、同高速鉄道はインド・日本の協力が行われていることを示す「前菜」程度の役割しか果たさないといえる。
■インドに不適切
業界関係者によると、「日本企業がインド高速鉄道市場に進出しようとした決意と野心はよくわかるが、インド市場には独自の規律がある。日本が輸出するインフラプロジェクトは費用が高額すぎて、インド市場の一層の開拓は難しい」という。
ムンバイのベテランメディア関係者のバシカさんは、「抗議の頻発で、ムンバイ・アーメダバード高速鉄道が予定通り完成するかどうかが確実でなくなってきた。そのため、建造費も増える」と話し、NHSRCLの関係者も、「最終期限までに土地接収が終わらなければ、日本の国際協力機構(JICA)は優遇条件の長期低利貸付(ソフトローン)の実行を遅らせることになる」と懸念する。
盤古智庫インド研究センターの毛克疾研究員は、「この高速鉄道が結ぶグジャラート州とマハーラーシュトラ州は、経済が発達し、インド政府を強く支持する州である。つまりインドで高速鉄道を発展させる条件が最も整った地域だといえる。この路線で期待されたような効果がなければ、インドの他の地域では高速鉄道プロジェクトのプラス面が縮小してしまう」との見方を示す。
またインド人の多くが、インドの現時点での国力と財力には限界があり、高速鉄道の巨額の建造費や限られた人しか利用できないことを考えると、むしろ限られた資金は老朽化した従来の鉄道システムのメンテナンスに充てる方が得策だと考える。またインドの人々は、スケールメリットがなく、沿線のビジネス開発も十分でない高速鉄道プロジェクトでは、投資を回収し、運営を続けるのは難しいのではないかと懸念する。(提供/人民網日本語版・編集/KS)
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