中国ビジネス「時流自在」11■中国富裕層の落とし方(4)人気ポイントは「見栄・縁起・斬新・オマケ」

Record China    2012年8月6日(月) 8時56分

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中国の顧客、消費者には、どのような嗜好満足の特徴があるのだろうか? ヒントを得るには、日本に買い物にやってくる中国人観光客たちの消費志向を現場で探ったり、実際に中国に出かけて、繁華街を回って観察するといいだろう。写真は中国人客に人気の東京・銀座。

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社会文化、商習慣、信用制度などの面で、中国市場は日本とは様々な相違点があるものの、「消費者に歓迎される商品、サービスを提供する」すなわち「顧客満足」という考え方は日中双方とも基本的には同じである。

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では中国の顧客、消費者には、どのような嗜好満足の特徴があるのだろうか?

それを知るためのもっとも身近なヒントは、わざわざ日本まで買い物にやってくる中国人観光客たちの消費志向を現場で具体的に探ることが早い。また、みずから実際に中国都市部に出かけて、多くのショッピングモールを回って観察し、関係者にヒアリングもして、売れ筋商品、流行の特徴を掴む市場実態調査も欠かせない。そこには携帯電話アンケートなどではなかなか見えてこない中国消費者の素顔が見えてくるはずである。

. <ヒット商品のキーワード>

(1)品質よりも価格

中国消費者の価格に対する感覚は非常に鋭い。ブランド崇拝、品質重視とは言っても、結局のところ価格最優先になってしまうのが現実。かつては中国市場を席捲した日本の家電製品も、最近の液晶テレビやパソコン商戦ではコスト競争力の強い韓国勢、中国勢に価格面から追い落とされているのが現状である(「RecordChina」2012年3月28日付)。

(2)機能性よりもデザイン、色彩

日本の大手靴下メーカーによると、日本では若い女性に定番のホワイトソックス、白色ストッキングは中国市場ではほとんど売れず、派手な原色系が売れ筋。中高年女性でもシマウマ柄やヒョウ柄が好まれるという。

香港や台湾、シンガポールの一流ホテルロビーや大手ショッピングモールの飾りを見てもわかるように、中華世界では紅色、金色といった派手な色彩が好まれ、多用されている。まず「派手、目立つ」がキーワードである。ちなみに庶民のあいだでも真っ赤な下着は普通で、若者たちも髪を赤系に染めて街を闊歩している。

(3)面子(見栄)を誇示できる「格好良さ」

 中国人と商談した経験のある人なら、中国人ビジネスマンの多くが大きな金の腕時計をして、背広の袖のブランドネームも外さずに着ている姿を見た記憶があるだろう。高価なタバコをこれ見よがしに先だけ吸って、すぐにもみ消したりもする。彼らは高級なブランド品を周囲に誇示したい、目立ちたいという願望が強いようだ。まさに「自分はこうありたい」という中国人の強い面子(見栄)意識の具現である。

(4)斬新、最新、最先端

「新しい物好き」感覚も強い。最新の製品だけでなく、かつては伝統習慣から受け入れられなかったものなどが、今では斬新に取り入れられている。商品だけでなく、海外から新しいライフスタイルが輸入されているのである。

高度成長期日本の「隣の芝生は青い」現象が中国ではまだ現在進行中で、たとえば誰かが何か新しい商品で良い思いをすると、「我も我も」とブームが巻き起こる。「三種の神器」はもとより、新しい食品としてピザ、牛肉、マグロなどの刺身、タラバガニなどが良い例で、チルド、冷凍輸送の普及が物流革命をもたらし、新しい食文化市場を大陸本土内に創り出しているようである。

(5)「癒し系」商品に惹かれる

 中国の商店街では、日本のような、いわゆる「ファンシーショップ」があまり目に付かない。若い女性向けの可愛いキャラクターが台湾から大陸本土へと急速に歓迎され、広まりつつあるのも、もともと彼らの文化に「癒し系」が存在しなかったことにも原因があるのかもしれない。日本的感覚の、若い女性向け「癒し系」の可愛いファンシーグッズ、アクセサリー類もまだ中国の店頭には数少ない。

(6)重宝される縁起の良さ

「縁起を担ぐ」という点で、中国人のこだわりは日本人の比ではない。もともと彼らの贈答費への出費割合が日本人とは比較にならないほど大きいことにも原因があるだろう。詳細な解説は別にするとして、中国市場でヒット商品を出すためには、まず中国人の伝統文化習慣をよく知ることである。

伝統的な縁起の良し悪しだけでなく、旧暦サイクルで生活する中国人社会の「節句の伝統習慣」にも慣れ親しみ、それぞれの季節、時節柄、その他国家行事、歴史記念日にも適合した商品宣伝、キャンペーンを企画しなければならない。

(7)「安心」、「安全」を売る

「日本の水は素晴らしい」と感嘆する中国人も少なくない。「中国の消費者は眼をつぶって食事している」と言われるほど、彼らの「食の安全性」に対する不安と不信感は根強い。そんな中で、粉ミルクなどメイド・イン・ジャパン食品類に対する信頼感は厚く、原発放射能問題のさなかでも、日系食品メーカーに対する信頼感は揺るがなかった。日本人が無意識に享受している水や空気の安全性、「安心して食べられる」という眼に見えない安全、安心が日本製品のキーポイントとなるのだ。

(8)長寿・健康への憧れ

中国の消費者は、日本人以上に「健康・長寿」というキーワードに弱い。韓国を訪問する中国人観光客の人気トップ商品が朝鮮人参を主とした漢方薬であるように、日本の薬品、サプリメント、美容健康食品に対するニーズも強い。

日本のドラッグストアを訪問して多くの買い物をして帰る彼らの隠れたヒット商品は、日本の「白髪染め」ヘアカラーだという。中国人中高年層は男女とも白髪を黒く染める方が多く、若い女性にも赤系ヘアカラーが人気である。もともと染髪剤は有害なイメージがある中で、ここにも日本製の安全神話が存在するようである。

(9)くじ、オマケ、割引クーポンなどの投機商品

中国の飲食関係の政府正式領収書にスピードくじがついていることは有名である。商品のオマケとして、くじ、懸賞や割引クーポンを付ける商法はもはや常套手段と言っていいだろう。似た商法として、皆が欲しがるヒット商品と人気の無い商品をセットにして売る「抱き合わせ商法」も以前から存在している。

賭博性という点で共通するのが、財産価値を上げる目的の投機的商法である。たとえば骨董品や記念切手・コインなど何でも良く、蘭の花やレアな茶葉、高級タバコ、酒、漢方薬なども投機の対象となる。たとえば、有名なマオタイ酒は、ここ10年ほどで10倍の2300元(約3万円)まで価格が高騰したが、最近では2000元を割り込んで価格暴落し始めているという(「RecordChina」2012年3月11日付)。

中国商人の中には、こういった特定の商品(レア物から自動車、金属原料まで)を投機的に買い占め、売り惜しみして価格を吊り上げ、一気に販売利益を出す商法(炒価)が古くからあり、いたるところでこのような現象がよく見られる。その代表的なものが投資マンションなど商品不動産である。

(10)人を羨ましがらせるオンリーワン

 上海の街などを歩いていると、ランボルギーニ、カウンタックなどと言ったスーパーカーに突然出くわすことがある。その確率は赤坂や六本木よりもはるかに高い。

中国で売れている日本製デジカメも、圧倒的に一眼レフの高級機種ばかりで、さらに彼らが日本まで来て買い求めに来るのは日本工場だけでしか製造していない最高機種である。中国富裕層の見栄の真骨頂は、このようなオンリーワン志向にあると言えるだろう。

(<時流自在>は筧武雄・チャイナ・インフォメーション21代表によるコラム記事)

<筧武雄氏プロフィール>

一橋大学経済学部卒北京大学留学、横浜銀行北京事務所初代駐在員、同行アジアデスク長、海外経済協力基金(OECF)派遣出向などを経てチャイナ・インフォメーション21を設立。横浜国立大学経済学部非常勤講師、神奈川県産業貿易振興協会国際ビジネスアドバイザーなど多くの役職を経て、現在も横浜市企業経営支援財団グローバルビジネスエキスパートなど、日本企業を支援する中国ビジネスコンサルタントとして活躍中。

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