「ごみの分別」と「葉っぱビジネス」で高齢者も活気づく日本の小さな町―中国メディア

人民網日本語版    2018年9月5日(水) 22時50分

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徳島県には人口わずか1600人ほどの上勝町があり、「ごみゼロの町」として知られ、日本一エコな町とも称されている。この町の奇跡はこれだけにとどまらず、一般家庭ごみの再資源化率が全国の平均ごみ回收率の4倍にあたる約8割に達している。資料写真。

徳島県には人口わずか1600人ほどの上勝町があり、「ごみゼロの町」として知られ、日本一エコな町とも称されている。この町の奇跡はこれだけにとどまらず、一般家庭ごみの再資源化率が全国の平均ごみ回收率の4倍にあたる約8割に達している。そして、高齢者も山で葉っぱを採取し、料亭で使われる「つまもの」として出荷することで収入を増やすだけでなく、町営の老人ホームが廃止されるほど、健康的な暮らしを送れるようになっている。雑誌「環球」が伝えた。

■ごみの分類はなんと45種類

上勝町での一般廃棄物の回収は、町内の「日比カ谷ごみステーション」1カ所のみで行われており、町民はそこにごみを持参して分別して捨てる仕組み。小学校の運動場ほどのごみステーションには、45種類に分別してごみを捨てるための大きさの異なるごみ箱が置かれている。すべてのごみは基準に基づいてきっちり分別して捨てなければならない。

整然と設置されているごみ箱を見て回ると、金属や古紙類、木材といった一般的な種類のごみがさらに細かく分類されている。例えば、古紙類はダンボール、新聞、雑誌など9種類に分けられており、トイレットペーパーの芯は単独で回収するだけでなく、さらには食べた後、きれいに洗浄したインスタントラーメンのふたという種類まであり、専用のごみ箱に捨てなければならない。このように細かく分別することで、ほぼすべての古紙を「宝」に変えることができ、高い再資源化率を実現している。

同町では、ごみの分別がこれほど細かく分けられているものの、長年ここに暮らしている人々はそれを煩わしいこととは考えていない。町民は何を見てもその原材料は何かをすぐに判断して、種類ごとに分けることできるという。この町に3年前に引っ越してきたという山口さんは、「初めは確かにこんなに細かく分けるのには時間がかかったけど、何カ月かすると慣れた。今は、分別も歯磨きと同じように生活の一部になっている。わが家はまず家でごみをだいたい5種類にわけ、ごみステーションでごみを袋から一つずつ出して分別している。そして、ごみステーションの職員がさらに2回ピッキングしてすべてのごみが正しく捨てられているか確認する」と話す。

ごみステーションから約3キロ離れた場所には、廃屋の建材や廃材をリユースして作られたオシャレなクラフトビールの醸造施設も建てられた。それだけでなく、このような革新的なごみの回收スタイルが話題となり、毎年、国内外から多くの団体や個人旅行者がわざわざ視察や見学のために数多く上勝町を訪れるようになっており、ごみステーションは「観光資源」としても活躍している。ごみステーションの責任者・藤井園苗さんによると、2年後、村には大型総合施設が完成し、ごみステーションがそこに移転するほか、見学に来る人々がそこに宿泊できるようにする計画だという。

■再生市場の良好な循環システム

ごみの焼却を減らし、ごみ処理のコスト削減を実現するため、上勝町では2003年に、全国に先立ち2020年を目標にごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)宣言をした。そして、ごみの分類も当時の22種類から、現在の45種類まで段階的に増やしてきた。現在、ごみのうち埋め立てが必要なのはわずか20%となっており1600万円もの処理費用を削減している。では、残りの80%のごみはどのように一歩一歩再利用され、どれほどの経済効果をもたらしているのだろうか?

ごみを細分化することで、回收コストを削減できるだけでなく、ペットボトルやそのふたを分けて回収すると価値が高まるなど、一層高い経済効果を得ることができる。村で回収されるすべてのごみのうち、ペットボトルの回收率は約95%と、世界の平均水準の約7倍に達している。ごみステーションに集められたペットボトルは、近くの工場に運ばれて再生加工される。

また、上勝町がある徳島県には、ペットボトルをフレーク化、ペレット化する工場がある。その工場の責任者によると、現在、そこの原材料はすべて徳島県の各ごみ処理センターで回收されたペットボトルで、住民とごみ処理センターでピッキングされると、95%以上のペットボトルは、ふたが取られ、ラベルも剥がされた状態になっており、加工工場の加工コストが大幅に削減され、作業効率も向上したという。

同工場では、粉砕、ピッキング、洗浄などの工程を経て、ペットボトルを高純度のフレーク・ペレットにすることができる。ピッキング加工を経ると、重さ約20グラムのペットボトルから、16グラムの再生フレーク・ペレットができ、ロス率は2割以下となる。再生フレーク・ペレットは衣類や食品トレイ・パック、日用品などの製造に使われる。同責任者は、「ペットボトルを回収することで、再生市場の良い循環システムができるほか、ペットボトルの原料は石油であるため、再利用することで石油資源の浪費を減らすこともできる」と話す。

下流の加工工場にとって、質の高い資源ごみを引き取るというのが、コスト削減のカギであるため、住民のごみ分別が資源再生市場の良好な循環を生み出す基礎となっている。

■葉っぱで所得増やす高齢者ら

環境保護分野の革新的な理念が日本国内外で注目の的となっているほか、上勝町の町民は、豊富な山林資源を活用し、葉っぱを集めてそれを「つまもの」として出荷し、同町特有の「葉っぱビジネス」を展開している点も注目に値する。

高齢化が深刻化している同町では、65歳以上の高齢者が人口の半分以上を占めている。今年80歳の西蔭さんもは早朝に、自宅の裏庭にあるカエデの木の下で、1時間もしないうちに、カエデの葉やショウブの葉を一ケース分採取していた。「今の季節は、このような淡い緑色で、形が完全なカエデの葉の需要が高い」と西蔭さん。これらの葉っぱは、全国各地の料亭で、刺身の盛り合わせなどの日本料理の飾りつけに使われる。帰宅後、西蔭さんはラッピング作業を始め、基準にマッチしている葉っぱを選んで、箱の中にきれいに並べ、ラベルを貼っていた。今の季節なら、カエデの葉一箱が1000円で売れるという。

上勝町では、西蔭さんのように葉っぱを出荷する町民が約300人おり、その平均年齢は70歳以上。同町の高齢者の約半数が「葉っぱビジネス」に参加している計算になる。ある地元の企業は、各高齢者の家に受注システムを設置することで、各種葉っぱの需要状況や取引価格を随時確認できるようにしている。高齢者はそれらの情報をもとに受注を受けることができるという仕組みだ。なかには年収が最高で1000万円に達するという業績が優れた高齢者もいるという。

同社の大畑悠喜社長は、「この仕事は、高齢者が頭を使い、体も動かすことができ、健康促進にもつながる。当社の計算では、地元の高齢者1人当たりの年間医療費は、徳島県の平均水準より16万円少ない」と話す。

葉っぱを採取する仕事は、体力的にもきつい力仕事ではなく、体さえ動けば何歳になってもできるため、生涯の仕事とすることができる。現地の大半の高齢者は、葉っぱビジネスに参加することで、その老後の暮らしが豊かになっている。同町の町営の老人ホームはここ数年ですべて閉鎖し、高齢者の医療費に使われていた財政支出削減にもつながった。現在、日本全国の「つまもの」の実に80%が上勝町産で、その種類は320種類にも上り、さらに、米国やフランス、イタリアなどにも輸出され、年間売上高は2億8000万円に達している。環境保護産業に続いて、葉っぱ採取が同村で最も重要な経済産業の一つとなっている。

「ごみの分別」と「葉っぱビジネス」により、上勝町は一躍世界的にも有名になり、12年には、そのサクセスストーリーを描いた映画「人生、いろどり」が日本で上映されている。(提供/人民網日本語版・編集/KN)

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