<コラム>日本人もいた明代の海賊・倭寇、「抗倭ドラマ」もトンデモ要素てんこ盛り

岩田宇伯    2018年9月12日(水) 22時10分

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日中戦争時代を扱った日本が敵の「抗日ドラマ」というジャンルがあるということは、皆さんすでにご存知のとおりであるが、前述した歴史ドラマのサブジャンルに「抗倭ドラマ」というものがあることは、意外と知られていない。写真は筆者提供。

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中国の歴史ドラマの多くは女性向けの「宮廷」ものか、三国志に代表されるような「戦争」もの、はたまた江湖の世界を描いた「武侠」ものが多いように見える。

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日中戦争時代を扱った日本が敵の「抗日ドラマ」というジャンルがあるということは、皆さんすでにご存知のとおりであるが、前述した歴史ドラマのサブジャンルに「抗倭ドラマ」というものがあることは、意外と知られていない。

明の時代も後期に入ると政情不安定となり、朝廷では腐敗が横行、沿岸部では海賊の倭寇(わこう)が荒らしまわり、民衆の生活は苦しくなり、明王朝は危機に陥る。ちなみに前期の倭寇は日本人で構成されていたが、後期倭寇は頭領に日本人がいたものの、そのほとんどは沿岸部の中国人が海賊化した組織である。

「抗倭ドラマ」ではそのような倭寇と戦い、国土を守りぬいたという抗日ドラマと同じようなカタルシスを与えるストーリーとなっている。とはいえ、結局のところ何十年後に明は滅びるのだが。また、腐敗した朝廷を描くことにより、近年中国政府が推し進めている「腐敗防止」キャンペーンのスローガンみたいなセリフが出てきたりするのも興味深いところである。

【抗倭ドラマ、作品を少し紹介】

抗日ドラマではアクションを重視した娯楽作品や、人間模様を描いたり戦史を扱った真面目な作品、さらには全く別のベクトルのトンデモ作品があるように、抗倭ドラマも色々な作品がある。

たとえば、倭寇と戦った将軍戚継光の一生を追った作品『抗倭英雄戚継光』。この作品は割と真面目な作品である、倭寇の頭領・長谷勘助役に日本人俳優の三浦研一がキャストされている点も注目だ(写真1)。

また、カンフーでおなじみ、少林寺の僧兵が倭寇と戦ったという言い伝えから、大掛かりな娯楽アクション作品『武林猛虎』。娯楽作品なので義兄弟の裏切りなど武侠エッセンス盛りだくさんで気楽に楽しめる作品だ(写真2)。

さらにはトンデモ抗日ドラマの名作『抗日奇侠』のスタッフが集結した作品『抗倭侠侶』。こちらの作品はTV放映当初鳴かず飛ばずであったが、数年おいて動画サイト愛奇芸で限定公開、武侠ジャンル上位となっている。主人公は金庸の武侠作品『神雕侠侶』の子孫という設定で、物理法則無視の空中戦、メタルヒーローシリーズのようにヨロイを蒸着など、武侠ドラマをいいことに『抗日奇侠』よりトンデモ作品となっている(写真3)。

【ついに日本の衛星放送局でも放映】

CS放送の「衛星劇場」にて9月中旬より『少林問道』という歴史ドラマが放映されるようであるが、このドラマ、明代後期、腐敗政治の陰謀に巻き込まれた主人公たちの苦悩と戦いを描いたわりと真面目な作品である(写真4)。

しかしながら、当然、腐敗した朝廷高官と結託するのは倭寇という「黄金パターン」。倭寇の手下に「忍者」軍団も登場する。また主人公が少林寺に入門するため、少林カンフーのアクションも要チェックの作品だ。配給元や衛星劇場のサイトでは倭寇登場に関して触れられていないのだが、この作品、最終的には主人公たちが過去のわだかまりを捨て、手を取り合い倭寇と戦うれっきとした「抗倭」ドラマである。このような「抗倭」作品を放送公開にこぎつけたのであるから、真面目な抗日ドラマで構わないので、ぜひ日本での抗日ドラマ放映を切に望むところだ。トンデモ作品であれば筆者はさらに大喜びである。

■筆者プロフィール:岩田宇伯

1963年生まれ。景徳鎮と姉妹都市の愛知県瀬戸市在住。前職は社内SE、IT企画、IT基盤の整備を長年にわたり担当。中国出張中に出会った抗日ドラマの魅力にハマり、我流の中国語学習の教材として抗日作品をはじめとする中国ドラマを鑑賞。趣味としてブログを数年書き溜めた結果、出版社の目に留まり『中国抗日ドラマ読本』を上梓。なぜか日本よりも中国で話題となり本人も困惑。ブログ、ツイッターで中国ドラマやその周辺に関する情報を発信中。

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